Q&A

神経疾患について

研究関係

Q 神経難病に対する治療法としてどのような方法が研究されていますか?

神経疾患に対する治療アプローチに対する最大の障害は、神経細胞・神経突起の再生能力が極めて限られていることです。
これに対して幹細胞を用いた再生医療が最近非常に注目を集めており、我々自身もその一翼を担うべく努力を続けていますが、実現までには克服すべき非常に多くの難関があります。
私達は、再生医療よりもより早期に実現可能でより侵襲の少ない方法として、神経機能を温存することによる、いわば「神経保護的疾患治療法」の開発に向けて、いろんな疾患で神経変性が起こる際に共通する初期過程の解明と、神経細胞のエネルギー代謝と神経変性メカニズムの関係などに関する研究を行っています。

Q 神経疾患に罹っている人が研究に協力したいと考えた際に窓口はありますか?

今も多くの神経疾患には根治的治療法がありませんが、それでも症状の改善につながる治療や、今後の根治的治療法の開発につながる研究上の成果は多くの疾患に関して得られつつあり、その背景には様々なかたちでの患者の方々のご協力があることは言を待ちません。研究へのご協力を頂く場合には、医師・研究者の側から倫理委員会に定められた手続きを経た形でお願いをさせて頂くことになります。
患者様の側から研究内容や研究への協力にご関心を持っていただいた場合には、どのような形でそのご意思を反映することができるか、状況に応じて考慮させて頂きたく存じますので、まずは研究室までご連絡くださるようお願い申し上げます。

Q 「精神・神経医療研究センター 神経研究所」は大学の研究室と比べて何が違うの?

当センターは教育機関ではないため、センターでの研究で学位を取得することができませんでしたが、最近複数の大学と連携制度を開始しており、このような制度を利用して、センターでの研究によって、連携する大学院の学位を取得することができます。社会人大学院制度をもつ大学もあります。詳細は、当研究部までお問い合わせください。

当センターは神経、筋、精神、発達障害の4分野の臨床・研究を行うことをミッションとしており、神経研究所はこれらの分野の疾患治療につながる研究を行う機関ですが、疾患発症メカニズムの解明や画期的な治療法のシーズを得るためには基礎的な研究を幅広い視点から行うことが不可欠で、センターが対象とする分野での自由な研究をおこなうことができます。

Q 疾病研究第五部で研究するには?

学生としては、上記連携制度による大学生、大学院生となるほか、そのような制度のない大学からも、研究生・研究見習生として当センターで研究をすることが可能です。
非常勤研究員は、当センターの「流動研究員」のほか、いくつかの制度を利用して当センターでの研究を行うことが可能です。

Q これまでの研究分野を変更して新たに神経疾患の研究に参入するのは難しいですか?

私達の研究室のメンバーの多くは、以前は神経以外を研究対象としていたか、分子・細胞生物学的な手法を用いていなかった人たちです。研究分野を大きく変更するのには、確かに多くの努力が必要ですが、研究に必要な「科学的・論理的能力」研究分野を超えて共通するものがあります。また、そもそも研究においては必要に応じていつも新しい研究手法を取り入れる必要があり、特定の手技に精通していることが非常に有利であったり不可欠であったりするわけではありません。

Q 臨床医になるためのトレーニングとして、研究をすることには何か意味があるでしょうか?

臨床医としての能力を高めるトレーニングには研究能力は直接には必要なく、特に近年の臨床研修制度の下、研修医の研究志向は必ずしも高くないかもしれません。
自分の経験も踏まえ、私の考える「臨床医にとっての研究の意義」は、まず「論理的思考の訓練」ではないかとおもいます。特に研修期間の比較的初期には「指導医に教えられたこと」をベースにした徒弟制度的トレーニングが中心になりがちですが、研究を行うことによって論理的に物事を捉え検討するという重要な能力を育てることになると思います。また、数は多くないものの、自分の教わった臨床・病理を基にしては理解できない疾患に出くわすことが時にあるのですが、このような際に研究のノウハウを知り、論理的思考のトレーニングを行っていなければ、ただただよくわからないまま途方に暮れるだけで終わってしまいます。
当センター病院における臨床研修では、一つの施設内に研究所と共に存在する病院として、特に研究のチャンスを設け、研究所との交流を図ることに力を入れています。当センターで研修を行う先生、あるいは私どもの研究内容に興味を持って頂いたセンター外の先生との交流を深め、臨床研修の充実と臨床から研究への橋渡しの一助となることができるよう願っております。

Q 医学部以外の出身者が疾患に関する研究をやっていくのは難しいですか?

私達の研究室を含め、神経研究所の多くの研究者は医者ではありませんが、疾患を扱う以上、医学に関する知識は不可欠です。医学部では基礎医学に関するトレーニングに相当な時間を割いているので、医学部以外で学んだ人がこれに伍するためには相応の努力を要するのは当然ですが、医学部以外で学んできた方がとりわけ不利になることはありません