血液調節ホルモンと免疫

年齢を重ねると、血圧があがってきます。そろそろ友人にも血圧をさげる降圧剤のお世話になっている人がでてきました。血圧調節に重要なホルモンであるレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系は、免疫作用の調節にも関係します。

レニンは、アンギオテンシノーゲンをアンギオテンシンIに、アンギオテンシン変換酵素はアンギオテンシンIをアンギオテンシンIIに変換します。アンギオテンシンIIは副腎皮質に働いてアルドステロンを分泌させたり、脳下垂体に作用してバソプレッシンの分泌を促します。これらのホルモンは、血管を収縮させる効果があったり、塩分や水分の吸収も高めるため、血圧を上げる働きがあります。そこで最近は、アンギオテンシンII受容体やアンギオテンシン変換酵素の働きを抑える薬が、降圧剤としてよく使われています。

これらのホルモンと免疫作用とは密接に関係しています。アンギオテンシンIIは、免疫応答にかかわる単球も産生することができ、また単球自身がアンギオテンシンIIの受容体を発現しています。アンギオテンシンIIは、炎症性のサイトカインやケモカインの産生を促進することが知られています。アンギオテンシンII受容体やアンギオテンシン変換酵素の働きを抑える降圧剤は、炎症性のサイトカインの産生を抑えることになるため、動物モデルでは関節炎など炎症の強い病気を軽くすることが知られています。また、これらの降圧剤は、IFN-γやIL-17などのサイトカインを産生するT細胞(Th1細胞、Th17細胞)の作用を抑えたり、これらのT細胞の反応を抑えるような制御性T細胞の働きを強くすることなどから、Th1細胞やTh17細胞が病気を悪くさせていると考えられている多発性硬化症(自己免疫病の一つ)の動物モデルで、病気を抑えることが報告されています。これらの降圧剤は、血圧をさげるというだけでなく、炎症反応も関係する動脈硬化にもよさそうですね。

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