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プレスリリース詳細
2013年10月4日
独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)
総務課広報係 TEL:042-341-2711
抗精神病薬減量法ガイドラインを発表
-多剤大量処方から少しずつ最適な処方への工夫-
独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP 東京都小平市 総長:樋口輝彦)、精神保健研究所(所長:福田祐典)では、この度、統合失調症患者への抗精神病薬の適切な処方を推進する減量法ガイドラインを作成しました。
精神疾患は、平成25年度以降の医療計画に既存のがん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病の4疾患に加えて記載される疾患となり、同計画の指針においては抗精神病薬の実情を把握することも位置づけられています。
これを受けて、NCNP精神保健研究部の伊藤弘人部長、奥村泰之研究生らは、統合失調症の患者に対する抗精神病薬の処方についてレセプトのナショナルデータベースを用いて分析を行いました。
その結果、抗精神病薬の処方については、3剤以上併用の効果に関するエビデンスがないという状況にもかかわらず、入院患者では3剤以上を併用するケースが42.1%あり、4剤以上についても20%見られる等の実情が明らかとなりました(図1、臨床精神薬理 16 (8): 1201-1205, 2013)。また、抗精神病薬の単剤処方の割合も年々増加はしてはいるものの、依然として欧米はもとより、東アジアの平均よりも低いことが国際共同処方調査でも明らかになっています。
しかし、多剤大量処方されている患者さんに対して、処方薬の種類や総量を減らすことは容易ではなく、安定した状態のまま種類や総量を減らしていくための科学的根拠に基づく処方ガイドラインが求められていました。NCNP精神保健研究部 山之内芳雄室長は、国立病院機構鳥取医療センター、藤田保健衛生大学らと共同で、薬を減らしていく方法について163人を対象とした臨床試験を行いました。その結果、多くの患者さんにおいて、ゆっくりと慎重に薬を減らしていくことで、身体への負担無く、安全に減薬していくことができることが分かりました。NCNPでは、この研究成果に基づいた「SCAP法による抗精神病薬減量支援シート」の概要版を作成し、2013年10月4日より、同センターのホームページ(http://www.ncnp.go.jp/nimh/syakai)で公開いたします。
今後は、この減量法を広く周知し、国内の統合失調症患者の処方最適化をはじめていくこととしています。
図1 抗精神病薬3剤以上処方の割合(中央値)
【入院患者】
【用語の説明】
■抗精神病薬
精神に作用する薬物である向精神薬のうち、主に統合失調症や双極性気分障害に対して用いられる薬物群の総称。メジャートランキライザーともいわれる。1950年代の登場以降、統合失調症治療に広く用いられ幻覚・妄想等の精神病症状を軽減した一方で、パーキンソン症状や過鎮静など多くの副作用も問題となっている。1990年代からはこれら副作用が緩和された非定型抗精神病薬が登場し、最近では主流となっている。
■ナショナルデータベース
正式名称は、レセプト情報・特定健診等情報データベース。全国の医療機関が審査支払機関に提出しているレセプト・特定健診等の情報で、匿名化した上で厚生労働省が研究機関からの申し出を審査した上で提供を開始している(①2009.4月診療分からの大部分の電子レセプトの大部分で、2012年11月時点で約50億件)。厳格な審査と監査が求められており、2012年までに14件の申し出が認められている。なお「臨床精神薬理」誌での発表は、本データベースを用いた精神疾患領域でのはじめての発表に位置付けられる。
【研究に関すること】
独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター
精神保健研究所 社会精神保健研究部室長 山之内芳雄
【報道に関すること】
独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター
広報係
TEL:042-341-2711(代表)
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