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プレスリリース詳細

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2018年3月19日
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)
Tel:042-341-2711(総務部 広報係)
株式会社ジーンクエスト 

肥満や高脂血症、食生活・運動習慣がうつ病と関連
~11,876人を対象とした大規模ウエッブ調査で明らかに~

  

 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP、東京都小平市、理事長:水澤英洋)神経研究所(所長:武田伸一)疾病研究第三部 功刀浩 部長および秀瀬真輔 医師、株式会社ジーンクエストの齋藤憲司 研究員らのグループは、うつ病と体格、メタボリック症候群、生活習慣が関連することを、11,876人の日本人が参加した大規模ウェブ調査で明らかにしました。
 本研究では、わが国における大規模ウェブ調査により、体格指数(BMI, body mass index)による分類、メタボリック症候群関連疾患、食生活・運動といった生活習慣とうつ病との関連について検討しました。その結果、うつ病になったことがあると答えた人はそうでない人と比較して、肥満や脂質異常症が多く、間食や夜食の頻度が高いことが分かりました。一方、朝食を食べる頻度や中等度と強度の運動をしている頻度が少ないことが明らかになりました(図1)。
 今回の研究成果から、生活習慣やそれに基づく身体疾患が、うつ病と関連することが明らかになりました。体重の適正なコントロール、肥満やメタボリック症候群と関連する疾患の治療や予防、朝食をしっかり摂り、間食や夜食を控え、運動を心がけることが、うつ病において重要であることが示唆されます。これまでうつ病の治療や予防として、服薬やストレスの対処などが重要であることが指摘されてきましたが、当研究の知見から、それらに加えて栄養学的アプローチもうつ病の治療や予防において重要な役割を果たす可能性を示唆する結果です。今後、介入研究や縦断的研究を行って、その可能性を検討していく必要があります。
 本研究の成果は、オランダの科学誌Journal of Psychiatric Researchにオンラインで、日本時間2018年2月10日に掲載されました。


■研究の背景
 うつ病は、主要な精神疾患の一つで、気分の落ち込みや興味・関心の低下、不眠といった諸症状を呈し、休職や自殺などのリスクを高める重大な疾患です。世界の時点有病率は4.4%であるという数字もあり、およそ20人に1人がうつ病であると推定されます。うつ病は脳の病気と考えられていますが、近年、食事や運動といった生活習慣や肥満やメタボリック症候群などの生活習慣病がうつ病の発症リスクと関連することを示唆する結果が増えています。しかし、日本での検討はいまだに少なく、比較的小規模の参加者での検討や、個別の要因との関連を報告したものが殆どでした。本研究では、うつ病患者と対照者を含む1万人以上の日本人を対象とした大規模ウェブ調査で、うつ病と体格、メタボリック症候群、生活習慣の関連について総合的に検討しました。    


■研究の内容
<対象と方法>
 ウエッブ調査に参加した11,876名を対象としました。この中でうつ病に罹患したことがあると答えたのは丁度1,000名であり、残りの10,876名を比較対照群としました。心理的ストレスレベルの簡易的な指標として日本語版K6テスト値を用いました。BMI値は身長と体重から計算し、18.5未満を体重不足、18.5~25未満を正常体格、25~30未満を過体重、30以上を肥満とする欧米の定義を用いました。朝食や間食・夜食の頻度は4点評価(まれ、1~2日/週、3-4日/週、ほぼ毎日)によって行われ、軽度、中等度、強度運動および飲酒の頻度は、週当たりその活動に費やした日数で評価されました。
<結果>
 うつ病に罹患したと答えた人たち(以下うつ病群)と、そうでない人たち(対照群)のK6テストのスコアの平均はそれぞれ14.1点と9.8点であり、うつ病群は対照群と比較してストレス症状が強かったことが確認されました。うつ病群では対照群と比較して、BMI30以上の肥満の割合が対照者と比べて有意に高く(オッズ比1.61, 95% 信頼区間: 1.25 ~2.08)、正常体格(BMI 18.5~25未満)の人の割合は有意に低くなっていました(オッズ比0.76, 95% 信頼区間: 0.67 ~0.87)。BMI18.5未満の体重不足もうつ病群に多い結果でした。メタボリック症候群関連疾患のうち、脂質異常症の人の割合は、うつ病群は対照群と比べて有意に高い結果でした(オッズ比1.53、95% 信頼区間: 1.27 ~1.84)。また、糖尿病もうつ病群に有意に高い結果でした(オッズ比1.48、95% 信頼区間: 1.06 ~2.06)。しかし、高血圧とうつ病との間に有意な関連はみられませんでした。食生活習慣に関しては、うつ病患者では、間食・夜食の頻度が有意に高くなっていた一方、朝食の頻度が有意に低くなっていました。特に、朝食をほぼ毎日食べる人の割合はうつ病群で少なく、朝食を食べることがまれであると答えた人はうつ病群で多い結果でした(ほぼ毎日vs. まれ:オッズ比0.65, 95% 信頼区間: 0.54 ~0.77)。反対に、間食や夜食をまれにしか食べない人の割合はうつ病群で少なく、間食や夜食を食べることがほぼ毎日であると答えた人はうつ病群で多い結果でした(ほぼ毎日 vs. まれ: オッズ比1.43, 95% 信頼区間: 1.20 ~1.70)。また、中等度(オッズ比0.82, 95% 信頼区間: 0.72 ~0.94)から強度運動(オッズ比0.78, 95% 信頼区間: 0.68 ~0.90)の頻度が有意に低くなっていました(図1)。  
 

■研究の意義・今後の展望
 体格分類の偏り(体重不足、肥満)、脂質異常症や糖尿病、および生活習慣(朝食の頻度が少ないことや間食・夜食の頻度が多いこと)は、うつ病と関連していました(図2)。食欲低下とうつ病との関連は、うつ病発症による食欲低下と関連している可能性もあります。すなわち、うつ病患者では、ストレスによる食欲低下によって「やせ」となる群とストレス肥りを示す群の両極があると考えられます。本研究結果は、うつ病患者のメンタルヘルスにおいて、朝食や適度な運動が重要であり、余分な食事やそれに伴う肥満は有害である可能性を支持しています。日本人の大規模データによる本研究結果は、日本の臨床において重要な参考資料になると考えられます。私たちのデータは、うつ病の少なくとも一部は、生活習慣やそれに関わる身体的状態と関与する生活習慣病の一つとして位置づけられることを示唆しています。また、体重のコントロール、メタボリック症候群への対処、生活習慣の改善がうつ病の病状改善に繋がる可能性を示唆しています。今後は、本研究によって得られたうつ病と関連する潜在的なリスク因子について、前向き研究で調査することが期待されます。 
 


■用語解説
*うつ病
多くの場合、慢性的なストレスが誘因となって発症し、憂うつ気分、興味と喜びの消失、易疲労感の増大、活動性の減少、集中力低下、信喪失、罪責感、悲観的思考、自殺念慮、睡眠障害、食欲低下などの症状が続く病気です。自殺や休業などの主要な要因となっており、わが国で専門的治療を受けている患者数はおよそ100万人、治療をうけていないがうつ病を発症している者はその4~5倍程度存在していると推定されます。

*K6テスト
6個の質問からなる心の健康状態を調べるための簡単なテストです。心理的ストレスを評価することや、精神疾患を見出すために使用されます。同テストの13点は、精神疾患をスクリーニングするためのカットオフ値として使用されます。

*メタボリック症候群
内臓性肥満(腹囲の増大)に加えて高血糖、高血圧、脂質異常症のうち2つ以上を呈する症候群をいいます。

*オッズ比
ある事象の起こりやすさを2つの群で比較して示す統計学的な尺度です。ある事象が起きる確率pの、その事象が起きない確率(1 − p)に対する比 p/(1−p)の値をいいます。ある疾患への罹患との関連を2つの群で比較して示す統計学的な尺度として用いられます。ある要因をもつ者の割合が疾患群と非疾患群で同じ場合はオッズ比=1であり、1より大きい場合、ある要因は疾患への発症リスクが高いことを意味します。逆に、オッズ比が1より小さい場合、その要因は罹患のリスクが低くなることが示唆されます。


■図と解説(論文に用いたデータを基に作成)
 

図1 メタボリック症候群、食事、運動のうつ病と対照間での違い

うつ病では、肥満、体重不足、高脂血症、糖尿病の割合が統計学的に有意に高く、朝食をとる割合が少なく、間食・夜食をとる割合が多い結果でした。また、中等~強度の運動をする人の割合が減っていました。よって、これらの改善が望ましいと考えられます。
 

図1

 

図2 うつ病に関連する体格、生活習慣病、生活習慣モデル

うつ病の症状は、体重不足、肥満、高脂血症、間食・夜食頻度と関係があり、朝食頻度が症状の軽さと関係があります。同様に、うつ病の発病は、メタボリック症候群、間食・夜食頻度と関係があり、朝食頻度が発病しにくさと関係します。そのため、体重の偏りをなくし、メタボリック症候群を防ぎ、朝食を摂り、間食・夜食を控えることが好ましいと考えられます。
 

図2

 


■論文情報

論文名:Association of depression with body mass index classification, metabolic disease, and lifestyle: a web-based survey involving 11,876 Japanese people
著者名:Shinsuke Hidese, Shinya Asano, Kenji Saito, Daimei Sasayama, and Hiroshi Kunugi
雑誌名:Journal of Psychiatric Research
DOI: https://doi.org/10.1016/j.jpsychires.2018.02.009
URL: https://www.journals.elsevier.com/journal-of-psychiatric-research


■助成金
本研究は、主として国立精神・ 神経医療研究センター精神・神経疾患研究開発費によって行われました。
 

■お問い合わせ先:
【研究に関するお問い合わせ】

功刀 浩 (くぬぎ ひろし)
国立精神・神経医療研究センター
神経研究所 疾病研究第三部長
住所:〒 187 -8502東京都小平市小川東町 4-1-1
Tel: 042-346-1714  Fax: 042-346-1714
E-mail:

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