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第72回 若手育成カンファレンス報告書

研究員 川島 義高

 第72回の若手育成カンファレンスは2名の演者により開催されました。
 第一席目は精神保健研究所で研究員として活躍されている川島義高さんにより、『不安障害に対するRiluzoleの有効性と安全性についての検討 -基礎実験の結果を起点とした臨床研究のプロトコル作成-』という題で発表をしていただきました。現在は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬として用いられているRiluzoleは、グルタミン酸神経伝達を抑制性に調節する作用を持つため、不安障害の新たな選択肢として期待されています。これまで川島さんらのグループは、動物実験によりRiluzoleが抗うつ様、抗不安様の作用を有することを示し、さらに不安障害に対するRiluzoleの有効性と安全性に関するエビデンスを集積するための系統的レビューを行ってきました。
 今回の口演では、不安障害に対するRiluzoleの有効性を探索的に検討することを目的とした小規模なランダム化比較試験のプロトコルについて、その作成中に検討を重ねた点である、対象疾患、治療環境、Riluzole投与量、対照群の設定、アウトカム、評価時期、追跡期間について触れながら、最終的な計画の概要を示しました。そして、動物実験により得られた知見を臨床現場へつなげるトランスレーショナルリサーチ、およびドラッグリポジショニング研究として本臨床試験を進めるための今後の課題点を示しました。


医師 山田 悠至

 第二席目は病院第二精神診療部で医師として活躍されている山田悠至さんに『統合失調症の社会認知機能障害に対する経頭蓋直流電気刺激~パイロット研究・特定臨床研究法・システマティックレビュー論文~』という題で発表をしていただきました。統合失調症罹患者の社会復帰は治療上の大きな課題ですが、近年、社会認知機能との関わりが指摘されています。微弱な電流を流すことで脳の神経活動を修飾する経頭蓋直流電気刺激 (tDCS)は侵襲性が低く、慢性的な精神症状を緩和する方法として期待されますが、山田さんは統合失調症の社会認知機能障害に対するtDCSの効果検証を世界に先駆けて着想しました。
 口演では、tDCSの実際について話す一方で、早期精神病に対する社会認知機能への介入をテーマに行ったシ系統的レビューの結果についても報告を行い、本介入試験の位置づけを明らかにしました。また、研究の性質上、昨年4月から施行された臨床研究法への対応を要したことやコストにまで言及し、今後、特定臨床研究の実施を検討している研究者にとっては貴重な経験談になったものと思われます。


 両演題とも系統的レビューを行ったうえで、本格的な介入試験を行うという流れの研究であり、発表の後には実際の研究遂行についてや、出口戦略を含めた議論が行われました。いずれのテーマとも現在のところ明確な根治療法は定まっていない領域であり、今後の研究成果が期待されます。

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