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第64回 若手育成カンファレンス報告書

医師 稲川 拓磨

 第64回の若手育成カンファレンスは2名の演者により開催されました。
 第一席目は病院第一精神診療部で医師として活躍されている稲川拓磨さんに『認知症及び軽度認知障害に対する経頭蓋直流電気刺激』という題で発表をしていただきました。認知症は現在のところ根治療法が存在せず、その治療法開発は公衆衛生上の課題になっています。微弱な電流を流すことで脳の神経活動を修飾する経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は侵襲性が低く、これまで健常高齢者における認知機能への効果が報告されており、認知症や軽度認知障害への応用も期待されています。そのため、(1) 同じテーマの先行研究について系統的レビューを行うことと、(2) 実際にtDCSを認知機能トレーニングに並行して行い、安全性・実現可能性・有効性を検証することを着想しました。(1)ではAppraisalの結果、8報の先行研究を対象とするメタ解析が実施され、対照群と比し、tDCS介入群における変化量の平均差はMMSE (mini-mental state examination)で-0.18点、ADAS-Cog (Alzheimer’s disease assessment scale-Cognitive)では-2.06点でした。(2)については、無作為割り付けを行った結果、介入7名、対照12名で調査が実施しました。主要評価項目である脱落は介入群で0名であり、安全性が示唆されたほか、副次評価項目であるADAS-Cogでは、介入前後の差が-2.07 (p=0.048)と有意な改善を認めました。こうした結果から、adaptiveにサンプルサイズを設計するにあたり、ADAS-Cogの効果量をもととし、各群42名で計84名と算出し、今後、共同研究機関を得ての研究チームの拡大を進めているとのことでした。

研究員 川島 義高

 第二席目は精神保健研究所で研究員として活躍されている川島義高さんによる『不安障害等に対するRiluzoleの効果を検討した臨床試験の系統的レビュー:パイロット試験に向けたエビデンスの集積』という題で発表をしていただきました。グルタミン酸神経伝達を抑制性に調節するRiluzoleは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬として用いられていますが、これまで川島さんらのグループは、動物実験により抗うつ様、抗不安様の用を有することを報告してきました。Riluzoleはベンゾジアゼピン系抗不安薬の副作用である、ふらつき、転倒や認知機能低下を示さないうえ、恐怖記憶の消去学習促進作用と再固定化阻害作用を併せ持つため、画期的な治療薬として期待されます。しかし、不安障害等へのRiluzole投与は国内外において適応外となっています。そこで本課題では、実際の介入研究を行う前段階として、不安障害等に対するRiluzoleの有効性と安全性に関して系統的レビューを行うこととしました。Appraisalの後。最終的に、OCDを対象にした試験が5報、GADを対象にした試験が4報、抽出されました。OCDについては、Open label試験の結果を発展させたRCTまで進められており、成人OCDに対しては症状軽減効果が得られていました。GADは、小規模のOpen label 試験だけであり、その多くは生物学的指標の探索でした。また、PTSDやPhobiaの患者を対象にした介入試験は皆無でした。発表の最後には、当センター病院と共同で計画中の臨床試験に向けたPICOが示されました。

 両演題とも系統的レビューを行ったうえで、本格的な介入試験のプロトコール作成を目指しており、発表の後にはプロトコールを洗練させるための活発な議論が行われました。いずれのテーマとも現在のところ明確な根治療法は定まっていない領域であり、今後の研究成果が期待されます。

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