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ADHD児童に対するニューロフィードバック訓練の臨床研究に成功

2014年4月25日
独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)

独立行政法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP,東京都小平市 総長:樋口輝彦)精神保健研究所(所長:福田祐典)は2014年2月27日に、病院(院長:水澤英洋)と共同で,ADHD児童を対象にしたニューロフィードバック(NF)訓練効果を客観的に検証し,日本における実用化に向けた一歩を踏み出しました。

NF訓練とは,自身の脳活動(脳波)をリアルタイムでモニタリングしながら,注意に関する脳活動のセルフコントロールを促進させる訓練法の一つです(図1)。欧米では,既にいくつかの研究チームで実用に関する成功事例が報告されています。しかしながら,我が国での学術的な成功事例は報告されておりませんでした。
今回,精神保健研究所知的障害研究部の研究チーム(部長:稲垣真澄,研究員:高橋純一,安村明)は病院小児神経科研究チーム(医長:中川栄二)と共同でADHD児童に対する介入研究を進めた結果,NF訓練に関する学術的な実用に成功いたしましたので,ご報告いたします。
NCNP病院小児神経科外来通院中のADHD児10名(訓練開始時平均年齢:12歳6月)が今回のNF訓練に参加しました。訓練期間は,2013年7月から約3か月間,週2セッション(1セッションは,10分程度)に設定されました。
NF訓練の効果を検証するため,訓練前・後で,対象児の注意課題(モグラーズ課題:のるぷろライトシステムズ)を実施している際の脳波を測定し,比較しました(図2)。本課題は注意の持続に関する脳波(CNV)の評価に適していることが,知的障害研究部の研究によって既に明らかにされています(Inoue , Inagaki et al., International Journal of Psychophysiology, 2010)。

分析の結果,注意の持続に関連するCNV振幅が訓練後に有意な上昇を示すことが明らかとなりました(図3の矢印)。これらの結果は,訓練に参加したADHD児の注意の持続力が訓練後に上昇している可能性を示唆するものです。


今回の研究成果は,NeuroReportに本年2月27日に受理され(Changes in negative and positive EEG shifts during slow cortical potential training in children with attention-deficit/hyperactivity disorder: a preliminary investigation. Takahashi J, Yasumura A, Nakagawa E and Inagaki M, NeuroReport in press),近々印刷されます。なお前記の図2は、掲載号の表紙を飾ることになっております。

今後期待される展開:より緻密な検証を行なうことで注意訓練としての医療的応用を目指す
NF訓練は,発達障害とくにADHDに対する新たな介入法として,あるいは薬物治療に付加した形で行う介入法の一つとして,世界中の発達障害研究者や発達障害診療医に注目されています。様々なエビデンスの収集が急がれるなか,NCNPの研究チーム(精神保健研究所知的障害研究部と病院小児神経科)は今後も,より緻密な研究デザインの設定と研究実施を行なうことにより,日本におけるNF訓練の客観的評価を進めていきます。我が国の発達障害児・者に対するNF訓練効果を実証した上で,将来的には医療的応用の可能性を検討していきたいと考えます。

【お問い合わせ先】

【研究に関すること】

独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター
精神保健研究所
知的障害研究部長 稲垣 真澄(いながき ますみ)
TEL:042-341-2712 内線6273
E-mail:

【報道に関すること】

独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター
総務課 広報係
TEL:042-341-2711(代表)

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