覚醒剤、大麻、有機溶剤、危険ドラッグなど私たちのまわりで乱用されている薬物には依存性があります。依存性物質を繰り返し乱用することで、薬物依存の状態となります。薬物依存症とは、日常生活や対人関係に問題が生じているにも関わらず、自分の意思では薬物を使うことをコントロールできなくなってしまう状態のことです。
現在、わが国の薬物乱用防止対策の柱となっている「第五次薬物乱用防止五か年戦略」では、「青少年を中心とした広報・啓発を通じた国民全体の規範意識の向上による薬物乱用未然防止」を第一の目標としています。青少年の乱用防止が重視されるのは、脳の発達段階にある青少年期の薬物乱用は、身体やこころに深刻な影響を与えるからです。例えば、近年、乱用者が増加している大麻ですが、13~18歳の思春期に大麻を使い始めた人は、成人してから使い始めた人に比べて、薬物依存症になるリスクが5~7倍高いことが報告されています*。
私たち、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部では、薬物乱用を予防する上で重要な年齢である中学生(12歳~15歳)を対象に、飲酒・喫煙を含めた薬物乱用の実態および動向を調べています。これは、「飲酒・喫煙・薬物乱用についての全国中学生意識・実態調査」というプロジェクトで、厚生労働科学研究費補助金事業の一環として行われています。1996年に初めての全国調査を実施し、以降、隔年で実施され、これまでに計12回の調査を実施してきました。2020年は新型コロナウイルス感染拡大を受け、調査の実施を見送りました。
プロジェクトの立ち上げから2014年までは、和田 清(元薬物依存研究部 部長)が研究代表者として担当しました。2016年以降は嶋根 卓也(薬物依存研究部 心理社会研究室長)が研究代表を担当しています。2020年における研究班のメンバーは以下の通りです。
*Winters KC, et al: Likelihood of developing an alcohol and cannabis use disorder during youth: association with recent use and age. Drug Alcohol Depend 92(1-3): 239-247, 2008.