私たち薬物依存研究部は、わが国における薬物乱用防止と薬物依存症回復支援に資する研究をミッションとする研究部です。
当研究部には、精神医学、精神保健学、薬学、公衆衛生学などを専門とする研究者が3つの研究室で研究活動を展開しています。心理社会研究室では、薬物乱用の広がりを明らかにし、どのような人たちがどのような目的で薬物を必要としているのかを探るため、様々な角度から疫学的研究を行っています。依存性薬物研究室では、次々に登場する、新たな「脱法的な」薬物の成分や毒性・依存性を明らかにするために、動物実験を駆使した行動薬理学的研究を行っています。そして診断治療開発研究室では、実際に薬物依存症の治療や薬物依存症者家族の支援を提供しながら、治療プログラムの開発などの臨床研究を行っています。
薬物依存症は多面的かつ複雑な病気です。薬物依存症という病気が成立するには、まず依存性薬物という「物質」が前提として存在し、それに加えて、薬物が入手しやすい社会という「環境」と、薬物を欲しいと感じる脳と心を持つ「個体」とが相互に影響を与え合う必要があります。同時にまた、薬物依存症は変化して止まない病気でもあります。流通する薬物は、時代によって、地域によって、さらには、経済的状況や文化・流行によって様々に姿を変えますし、それを使う人々の求めるものも様々に異なります。
私たちは、「物質」「環境」「個体」という3つの観点のいずれもおろそかにすることなく、薬物依存症をめぐる様々な問題と向き合い、これからも日夜研究を続けていきます。