
薬物依存症外来
薬物依存症外来の特色
わが国の薬物関連障害の医学的治療は、もっぱら幻覚や妄想といった中毒性精神病の治療に終始し、より根本的な問題である薬物依存症に対する治療はほとんど顧みられないできました。そのような現状を変えるために、現在私たちは、薬物依存症に対する専門的治療プログラムの開発に取り組んでおります。当外来では、その治療プログラムを提供させていただきます。
薬物依存症外来における治療の中心は、原則として集団認知行動療法です。したがって、集団認知行動療法を希望されない方、あるいは、同治療法が向かない方は、当外来の治療対象とはならない可能性があることを、あらかじめご了承ください。
薬物依存症外来の診療内容
薬物依存症に対する集団精神療法: 患者さん数名~十数名程度のグループを対象として、週に1回、2時間程度の集団認知行動療法による治療を行います。この治療は、1クール26回(ワークブックを用いた治療が24回、薬物依存の回復者によるグループセッションが2回)から構成されており、週1回通った場合、半年でひとまずの治療が終了します。
上記の集団認知行動療法の補足として、個人精神療法、ならびに、薬物関連精神障害に対する薬物療法を行います。
対象の方
- 覚せい剤や大麻などの規制薬物を「やめたい」と考えている方、あるいは、自分自身ではまだ迷いがあるが、周囲からは「やめた方がよい」といわれている方。
- 処方薬や市販薬を治療以外の目的から不適切に用いていて、自分では「やめなければいけない」と思っている方、あるいは、自分自身ではまだ迷いがあるが、周囲からは「やめた方がよい」といわれている方。
- 薬物の後遺症による幻覚(幻聴・幻視)や妄想、気分の変動や興奮性といった症状が、日常生活に支障があるほど重篤ではなく、予約外の緊急対応や入院治療を必要としない方(私たちが提供できるのはあくまでも週1回の外来治療です。したがって、週1回の外来治療では薬物をやめていくことが困難と考えられる病状の患者さま、あるいは、中毒性精神病が重い患者さまの場合には、ご要望に応えることができません)。
- なお、当院一般精神科外来、もしくは、他の精神科医療機関に通院中で、すでに精神症状に対する薬物療法などの治療を受けている患者さんが、「薬物依存症」だけの治療を目的として、当専門外来を利用することも可能です(ただし、その場合には当院における通院治療は、自立支援医療による通院費補助の対象とはならない場合があることをご了承下さい)。
受診申し込み方法と治療の流れ
1.受診申し込み方法
当専門外来への受診を希望される方は、下記のメールアドレスにEメールでご連絡を下さい。
yakubutsuizon@ncnp.go.jp
電話:042-346-1954(平日10:00~16:00)
その際、メールのなかで以下の1~14の項目について必ずお教えください。
なお、メールで回答していただいた情報に関しては、診療以外の目的で使用することはいっさいありません。
診療上の守秘義務は守られますので、安心して正直にお教えください。
(メールの本文に以下の質問文を「コピー&貼り付け」していただくと便利です)
1. 氏名(読みがな): ( )性別:
2. 生年月日:19 年 月 日生まれ 年齢: 歳
3. 連絡先の電話番号:
4. 現住所:
5. 現在、体の病気で治療を受けている方は、その病名をすべて書いてください:
6. 過去に1回でも乱用したことがある薬物の名前をすべて書いてください:
7. 現在、薬物の乱用が止まっていない方、あるいは止まっているけれど、「また使ってしまうかも」と不安を感じている方の場合、治療を受けたいと思っている乱用薬物の名前をすべて書いてください:
8. 現在、薬物の乱用が止まらないこと以外に、困っている症状(たとえば幻聴や不眠)がありましたら、くわしく書いてください:
9. 現在、薬物の乱用が止まっている方の場合、後遺症として困っている症状(たとえば幻聴や不眠)がありましたら、くわしく書いてください:
10. 現在、お酒は飲まれますか?毎日アルコールを飲んでいる方は「毎日」、毎日ではないがときどき飲む方は「ときどき」、全く飲まない方は「飲まない」とお答えください:
11. これまで精神科で治療を受けたことがある方は、何年(または何歳)頃に、何という名前の病院(またはメンタルクリニック)に通院(または入院)したことがあるか、すべて書き出してください:
12. これまで薬物を乱用した結果(たとえば覚せい剤取締法違反)、逮捕・補導あるいは服役したことはありますか?「ある」または「ない」で答えてください:
13. これまで薬物とは直接関係のないこと(たとえば放火、窃盗)で逮捕・補導あるいは服役したことはありますか?「ある」または「ない」で答えてください:
14. 以上のほかに、何かご質問やご要望などございましたら自由にお書きください:
2.受診日決定のご連絡
上記のメールを受け取ってから、当専門外来での治療が役に立つ病状であるかどうかを判断させていただいたうえで、2~3日以内(休日・祝日が続く場合にはもう少しお時間をいただく場合があります)に、Eメールにて返信させていただきます。
原則として、その返信のなかで受診予約日についてお知らせさせていただきますが、場合によっては、患者さまの病状についてもう少しくわしくお教えいただくために、追加の質問をさせていただくこともあることを、ご了承いただきたく存じます。また、一度決定した初診日がどうしても都合が悪くなった場合には、予約申し込みをしたメールアドレス(yakubutsuizon@ncnp.go.jp)にEメールにてご連絡ください。
なお、現在、他の精神科医療機関通院中の方の場合には、必ず主治医の先生からの紹介状(診療情報提供書)を持参して受診するようお願いいたします。
3.治療の流れ
まず初診において専門的な病状評価を行い、次回から本格的な治療が行われます。なお、薬物依存症外来では、初診担当医と再診担当医が異なります。したがって、受診された方の主治医となるのは再診担当医ということになります。再診日の詳細については、初診時にご説明致しますのでご了承下さい。
担当医師
月 |
火 | 水 | 木 | 金 | |
午前 | (初診) 松本俊彦 |
(初診) 船田大輔 |
(初診) 沖田恭治 |
||
(初診) 古市 亘 |
(初診) 沖田恭治 |
||||
松本俊彦 | |||||
午後 | 松本俊彦 | 松本俊彦 | |||
沖田恭治 | 船田大輔 | ||||
古市 亘 |
初診(毎週月曜日11:30~12:30、木曜日10:00~12:00、金曜日10:30~12:30): 最初の重症度評価を行い、当外来での治療が適切かどうかを判断させていただきます。
※月曜日午前 (初診)松本俊彦(第1、第3、第5月曜日)
再診(毎週月曜日木曜日13:00~15:00):主治医として治療を担当します。初診の結果を踏まえて、初診医が再診を担当する医師を決めます。
※月曜日午後 松本俊彦(第1、第3、第5月曜日)
ご家族の方へ
■薬物問題をもつ家族を対象とした心理教育プログラム
当センターでは、薬物問題を抱えたご家族のための心理教育プログラムを実施しています。月に一度、グループ形式で行うプログラムで、以下の3つを目標にしています。
- 依存症について正しい知識を得る
これから依存症という敵と賢く戦うためには、まず敵のことをよく知る必要があります。依存症という病気や回復の道のりについて、少しずつ学んでいきましょう。 - 薬物依存症者本人への適切な関わり方を学ぶ
家族が本人に与える影響は大きいので、本人の回復に役立つ関わりを増やしていくことがとても重要になります。例えば本人に治療の提案をする時、家族がどんなふうにそれを伝えるかによって、その結果が変わってしまうこともあるのです。普段から本人と良い関係をつくり、回復のためのアドバイスを上手にできるようなコミュニケーションを身につけていきましょう。 -
家族が落ち着きと元気を取り戻す
薬物依存症という病気は、本人だけではなく、周囲にいる家族の心身にも大きなダメージを与えます。本人の良き回復支援者としてこれから力を発揮できるようになるためには、まず家族が落ち着きと元気を取り戻すことが最優先です。
家族が上記3つの事柄に取り組んでいくことは、間違いなく本人の回復にとって大きな助けとなりますが、家族だけでこれを成し遂げるのはとても困難です。本人の回復のために家族としてできることをやってみようと思ったら、まずは、専門機関に助けを求めてください。
対象者
対象者は下記の方々に限定させていただいております。参加費は無料です。
- 現在、薬物使用者本人について具体的な困りごと(本人が薬物を使用している、本人が治療を拒否している、本人への接し方がわからない、など)があること。
- 現在、精神科病院、行政機関(精神保健福祉センター、保健所など)、民間相談機関など他の専門機関による継続的な家族支援を受けていないこと(家族会や自助グループ参加者は可)。
- 毎月第3土曜日午後に実施される家族心理教育プログラムに継続参加できること。
- 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部が実施する家族支援に関する研究への協力についてご検討いただけること。
参加申し込み方法
参加申し込みは、お電話かメールでお願いいたします。プログラムに参加する前に一度面接を行いますが、その日時は、お申し込みをいただいたあとで調整をさせていただきます。まずは下記にご連絡ください。
E-mail:family(α)ncnp.go.jp
※ Emailは上記アドレス(a)の部分を@に変えてご使用ください。
※ 現在、【薬物問題をもつ家族を対象とした心理教育プログラム】の新規参加者は受け付けておりません。再開時には、当HPにてご案内いたします。(2022年6月24日)
スタッフ紹介

松本 俊彦
役職
病院(精神診療部) 非常勤医師
経歴
依存症治療
自傷・自殺予防
精神医学
専門分野・資格
精神科専門医
精神科指導医
精神保健指定医
精神保健判定医
船田 大輔
役職
病院精神診療部 医師
精神保健研究所 薬物依存研究部 併任研究員
経歴
依存症治療
精神医学
専門分野・資格
精神科専門医
精神科指導医
精神保健指定医
沖田 恭治
役職
病院精神診療部 医師
経歴
依存症治療
精神医学
専門分野・資格
精神科医師
古市 亘
役職
精神保健研究所
薬物依存研究部 科研費研究員
病院精神診療部 非常勤医師
経歴
依存症治療
精神医学
専門分野・資格
精神科専門医
精神保健指定医