精神科退院時のケースマネジメント実施状況に関する研究


これから退院する人には、どのくらいケースマネジメントが行われている?


精神科病棟を退院した患者について、ケースマネジメントの実施状況を尋ねました。

入院中にはほとんどの患者に病院のケースマネジメント担当者がついていることがわかりました。しかし、退院したあとのケースマネジメント担当者が決まっていたのは61%と減少しました。

退院後に向けて、福祉サービス(計画相談など)や介護保険といったケースマネジメントの制度を利用していたのは41%で、療養生活継続支援加算の算定予定があったのは9%とさらに少ない結果でした。

退院してからもケースマネジメントを続けることが課題です。

退院後のケースマネジメントの診療報酬を算定しない理由は?


退院後に向けたケースマネジメントの診療報酬である、療養生活継続支援加算を算定しない理由を尋ねました。

「希望・必要がないから」といった回答が多くを占めましたが、書類仕事の煩雑さも理由の一部でした。

ケースマネジメントを必要とする人から導入を図ることが鍵かもしれません。

退院した患者の特徴は?


調査対象となった、精神科を退院した患者の特徴を調べました。

性別はやや女性が多く、平均年齢は48歳でした。診断は統合失調症が最も多く、うつ病・双極性障害を含めて「重度精神疾患」と呼ばれる診断を持つ人が7割でした。

物質使用障害・知的障害・発達障害のどれかを重複障害に持つ人は3割でした。

退院先の住居ではご家族と同居の方が最も多くなりました。

入院形態は医療保護入院の方が7割を超えました。

社会的機能や生活課題を表すICMSS得点は平均で3.7点で、「精神科ケースマネジメントの実施内容に関する研究」における、ケースマネジメントを実施した患者の平均点数(3.9点)とほぼ同じでした。

調査対象者の特徴は、ケースマネジメントを算定した患者の特徴と似ていました。

どんな研究?

この研究は、精神科病院を退院する患者について、入院中から退院後にかけて継続したケースマネジメントが行われているかどうかや、診療報酬算定に関する課題を調べることを主な目的として行われました。

調査方法

国内7つの精神科病院が調査に参加し、これらの病院の救急病棟に入院した患者の中から3ヵ月以内に退院した210名の患者を調査対象者としました。電子カルテや支援記録をもとに、ケースマネジメントの実施状況や診療報酬の算定状況を調べました。調査期間は2023年6月1日から10月31日まででした。

調査についてより詳しく知りたい方はこちら(厚労科研データベースに移動します)