ご挨拶

             微細構造研究部 部長   一戸 紀孝

近影

自閉症スペクトラム障害のある方は、コミュニケーションや対人関係の困難さや、狭い興味や同じような行動へのこだわりなどの問題を抱えています。この障害は出生児の1%いるとされてきましたが、現在その発症の割合は増大傾向にあり、その治療法の開発はとても大事だと考えられます。

私たちは、自閉症スペクトラム障害の原因を調べ、それに基づいた診断法と治療法の開発ができるように、
日々研究を行なっています。

自閉症スペクトラム障害は、多数の遺伝子の変異と母胎内環境での問題が複雑に絡みあって起こる脳の発達障害と考えられています。このような背景があるために、自閉症スペクトラム障害の原因は、多くは謎のまま残されています。また原因が不明であると同時に、その後の症状の発達がどのような脳の病態から起こっているかに関してもまだまだ説明がつかないままです。
このような多数の問題から、自閉症スペクトラム障害への決定的な治療は残念なことに未だ存在しません。

実際の患者さんで自閉症スペクトラム障害発症の過程を調べたり、治療法の開発を行うことには色々な制約があり、動物による研究が欠かせません。現在は、進化的に人類に近く、脳の構造・機能、また脳の発達の様式に関して人類に似た動物である霊長類による自閉症スペクトラム障害に関する研究に期待が集まっています。さらに霊長類は社会の構造やその中での振る舞いなども人類に似ており、自閉症スペクトラム障害で起こる社会行動の困難さに関する研究に向いています。
小型の新世界ザルであるマーモセットは、人類以外の霊長類の中でもひときわ多様な鳴き声を用いた豊かなコミュニケーションを行います。また、お父さんとお母さんで子どもを育てる核家族のような人類と似た社会を形成しています。
これらの事から、現在、私たちはマーモセットで自閉症スペクトラム障害のモデル動物を作り、その動物を
使って自閉症スペクトラム障害の色々な問題に対してアタックしています。

現代の脳の研究は多様な観点から行われています。なぜなら、脳は色々な側面を持っているからです。
脳は小さいレベルで見ると遺伝子などの小さな分子から構成されています。その分子が集まって脳の細胞を形成し、その細胞がまたお互い複雑な結合を作って大きなネットワークを作っています。そのネットワークと色々な情報が合間って複雑な脳の活動をきたし、それが行動、知覚、心として現れてきます。
脳は心を宿す器官で、どういう風に働いてその機能を果たしているかに関しては、まだまだミステリーに満ちています。
そこで、私たちは、自閉スペクトラム症の謎を解くために、脳の分子から心の問題のレベルにわたる多様な研究法を用いています。

みなさま、ご理解・ご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
また、私たちと一緒に自閉スペクトラム症の研究をしたいと思う方がいらっしゃればご連絡ください。