研究内容について

神経変性疾患は、病因タンパク質が構造変化して不溶化することがトリガーとなって引き起こされる疾患です。我々のグループは認知症を主症状とするアルツハイマー病の病因タンパク質amyloid b peptide (Ab)について、その脳内動態を「Abエコノミー」と捉え、様々な遺伝・環境要因によってAbエコノミーが破綻する機序をin vitro、培養細胞、モデルマウスなど様々な実験系を駆使して解明してきました。また、運動ニューロンの変性・脱落に伴い重篤な筋萎縮を呈する筋萎縮性側索硬化症 (ALS)の病因解明に挑み、新たなショウジョウバエモデルを用いてTDP-43、FUSが不溶化して神経変性を発揮する分子機序を解明しています。現在中心的に取り組んでいる研究テーマは以下の通りです。
(1) Abエコノミーの分子基盤と破綻機序に関する研究
(2) Ab蓄積がタウ依存的な神経変性を招来する分子機序の研究
(3) apoEなど老人斑結合因子がアルツハイマー病発症に及ぼす影響の研究
(4) Abエコノミーを標的とする新規アルツハイマー病予防法の開発
(5) TDP-43、FUSの細胞内封入体形成と神経細胞障害性に関する研究
(6) AbやFUSなど病因タンパク質の神経細胞間伝播に関する研究