脊髄小脳変性症(SCD)への対応

脊髄小脳変性症(SCD)への対応

脊髄小脳変性症(SCD)の方にとって、運動は大切です。主症状である「運動失調」に対し、自宅でできる運動プログラムを紹介します。また、SCD患者さんに関わるリハビリテーションスタッフに向けに、SCD/MSA標準リハビリテーションプログラム(運動失調班)を作成いたしました。ぜひ、臨床場面でご活用ください。

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患者・家族向け

生活環境設定のポイント

脊髄小脳変性症(Spinocerebellar Degeneration: SCD)者では、転倒頻度および転倒によって生じるケガや骨折の危険性が高いです。転倒に対する恐怖心によって活動制限や生活の質の低下を及ぼす可能性があることから、SCD者では(1)転倒をしない生活環境設定,(2)転倒した際の衝撃を最小限に抑えるための生活環境設定が重要です。

共通事項

設置する手すりの高さは、一般的に骨盤の高さを目安に決めますが、SCD者では(1)手すりの位置を高くすること(ヘソから心臓程度),(2)横歩きを考慮して壁から離れていることを推奨します。また手すりを設置できる補助金は限られているため、福祉用具として手すりをレンタルすることや、場合によっては市販の手すりおよび天井固定手すり(2~3万円程度)を購入することもあります。それに加えて、家具の角に緩衝材を巻いて外傷リスクを軽減することも重要です。

天井固定用手すり

緩衝材を家具の角に貼付することで転倒した際の衝撃を最小限に抑える

生活が自立している人

生活が自立しているSCD者における環境設定のポイントは、生活動線(人が自然に動く時に通る経路)に支持物を手が届く範囲に置いておくことです。一般的に広い空間(手が支持物に届かない距離)では、バランスを崩した際にそのまま転倒する可能性があるため、身体の一部が壁面や家具などの支持物に接触しやすい環境に整えることが良いです。一例として、リビングのように広い空間では、ソファなどの配置を変えることで、バランスを崩した際に掴まれる環境を整えることが挙げられます。家具に掴んだ際に家具と一緒に転倒しないように、家具に対して突っ張り棒やジェルマットの取り付け,壁に固定具で固定するなどの工夫が必要です。また、散らかっている状況では物をまたいだり、避けたりする必要が生じるため、動線を片付けておくことも重要な環境設定の一つとなります。

ソファの配置例

左図ではベッドまでに掴まる箇所がありません。 右図のように動線上に支持物を設置する

突っ張り棒を使用して家具に掴んだ際に倒れるのを防ぐ

生活に身体的介助が必要な人

狭い空間(手が壁に届く距離)は転倒も生じにくい一方で、身体的な介助が必要な場合は介助者が介助をするスペースがなくなるため、むしろ広い空間が必要です。以上のことから、生活を自立して行える段階では本人の動作の行い易さを、身体的な介助が必要な段階では介助の行い易さを加味した環境調整が必要となるため、担当の療法士など福祉用具の選定に詳しい専門職と相談してみてください。

専門職向け

当科のスタッフが関わっている、厚生労働省「運動失調症の医療基盤に関する調査研究班」 リハビリテーション分科会で作成されたSCD・MSA標準リハビリテーションプログラムです。ご参考いただけますと幸いです。

SCD・MSA 標準リハビリテーションプログラム (理学療法