2019年度

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身体リハビリテーション部での出来事や様子を
ブログ形式で報告いたします

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2019年度

2019年7月25日(木)

BESTest、SARA評価方法の勉強会
画像ALT

 本日は身体リハ科スタッフや実習生を対象に、SCDチームのPTからBESTestとSARAの評価方法の復習と注意点の共有についての勉強会を行いました。片足立ちのテスト一つとっても腰に手を当てるか手放しで行うかで結果が違うことや、push&releaseテストの抵抗具合を共有できました。

 当院では脊髄小脳変性症(SCD)の患者さんを対象に入院による集中リハビリテーションプログラムを行っております。プログラムの効果を測るための主要運動機能評価としてBalance Evaluation Systems test(BESTest)とScale for the Assessment and Rating of Ataxia(SARA)を実施していますが、いずれの評価方法も手法を統一しないと結果がばらばらになってしまうという側面があります。集中リハビリテーションプログラムにおける研究結果の詳細は、研究業績をご参照下さい。


2019年8月2日(土)

第61回平滑筋学会 参加・発表報告

三橋里子作業療法主任が、「1-Fluoro-2,4-dinitrobenzeneはスキンド盲腸紐のミオシン軽鎖リン酸化非依存性収縮を惹起する」という演題で発表してきました。

【背景と目的】

1-Fluoro-2,4-dinitrobenzene(FDNB)は、creatine kinase(ローマン反応を触媒する酵素)選択的阻害薬で、ローマン反応(クレアチンリン酸にリン酸基を蓄えて、必要時にADPをリン酸化してATPを産生する方法)の阻害によるATP供給抑制で、消化管平滑筋のCa2+活性化収縮が抑制されることがわかっています。一方、FDNBは、消化管平滑筋静止時張力を増加させ、また、スキンド平滑筋の弛緩反応も抑制させます。

本研究では、FDNBのアクチン・ミオシンへの作用を明らかにするために、弛緩時の細胞膜を壊したスキンド盲腸紐を用いて張力に対するFDNBの作用を検討しました。

Ca2+収縮(control)後、Ca2+除去により弛緩させたのち、①ATP+creatine hosphosphate(CrP:リン酸化基質にはならない) ②ATP-CrP ③CTP+CrP ④CTP-CrP ⑤Rigor(ATP枯渇状態)の条件下に FDNBを添加し、張力反応を比較検討しました。いずれも、弛緩時の張力を惹起させ、CrPやヌクレオチドが存在しない条件においても、つまりミオシン軽鎖リン酸化非依存性に張力を増強させました。今後、FDNBの張力増強効果が、標本の内在性CrPやヌクレオチドに関係するものなのか、解糖系など別の効果によるかを検証する必要があります。


2019年9月21日(土)

小脳リハビリテーション研究会参加報告
参加者集合写真

 2019年9月21日、第1回小脳リハビリテーション研究会が畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターにて開催されました。当院理学療法士の板東、近藤も幹事を務めさせていただきました。
 本研究会のプログラムは、①パネルディスカッション(臨床と基礎のクロストーク)、②総合討論、③ポスターセッションと幅広い内容で構成されていました。「臨床」「基礎」の両面から第1線で活躍されている小脳のスペシャリストの先生方の講演は、小脳リハビリテーションの歴史、現状、課題、未来を網羅した内容であり、非常に学びが多い貴重な研究会でした。

 当院身体リハビリテーション部からも理学療法士6名が参加し、2名のパネルディスカッション発表、5つのポスターセッション発表をさせていただきました。小脳リハビリテーションに従事する臨床家、研究者の先生方と多くのディスカッション・意見交換を行い、当院の果たすべき役割・課題・これからが明確になった1日となりました。

発表者・演題名
【パネルディスカッション】
●近藤夕騎 「脊髄小脳変性症における評価の現状と課題」
●板東杏太 「MRI画像の臨床・研究応用と限界について」
【ポスターセッション】
●有明陽佑 「脊髄小脳変性症患者に対する理学療法アウトカムの検討」
●小笠原悠 「動作解析装置による体幹失調評価を行ったSCA 31患者一症例」
●吉田純一朗 「リズム測定器を用いた脊髄小脳変性症患者の歩行リズムの検討とその有用性」
●加藤太郎 「マーカレスモーションキャプチャシステムを脊髄小脳変性症患者の動作分析に応用する」
●近藤夕騎 「歩行可能な脊髄小脳変性症患者に対する短期集中バランストレーニングが身体機能に及ぼす効果–Balance Evaluation Systems Test (BESTest) を用いて−」

ポスター発表の様子

 理学療法士の吉田純一朗です。初めての研究会での発表をさせて頂きました。発表、ディスカッションを通して、端的に内容を伝えることの難しさを感じながらも、自らの経験や知識、思考を発信していくことが自身のスキルアップに繋がることを実感しました。今後も日々の臨床に加え、学会や研究活動にも取り組みたいと強く感じた研究会となりました。


2019年10月7日

ネパールでの呼吸リハビリテーション

当科では2011年よりネパールから研修生を毎年受け入れており、これまで医師、看護師、理学療法士等、10名以上が呼吸リハビリテーションを学びに訪れている。

2015年よりJICA草の根技術協力事業「カトマンズ盆地における呼吸器疾患患者の早期社会復帰支援に向けての取り組み―呼吸リハビリテーションの普及―」が採択され、公益財団法人 国際医療技術財団(JIMTEF)からの依頼を受け、当科からは寄本恵輔第一理学療法主任加藤太郎理学療法士が専門職の一員としてネパールで1週間程度の活動を繰り返すシャトル型の支援として活動している。

ネパールは中国とインドに挟まれた小国で赤道付近に位置するが、8000m級のヒマラヤ山脈に囲まれた盆地であり、雨季と乾季があるが気候は日本と大きくは変わらない。ただし、環境汚染は深刻で死因の多くは呼吸器疾患となっており、国際的な社会問題として支援が必要な状態であった。このプロジェクトが始まる直前に起こった大地震、政権が大きく変わり社会情勢が不安定、停電や断水が日常茶飯事・・・と挙げればキリがないくらい課題が多かったが、ネパールの人々はエネルギッシュであり、現地のプロジェクトメンバーは自分たちの国をどうにかしたいという気持ちも強い。現地の大学病院と協力し、3年間、カトマンズ郊外のバクタプールで支援を続け、教育資材を作成し、啓発活動を行ってきた。その結果、我々が行ってきた事業がネパール政府の保健事業に組み込まれ、現在、COPD予防事業がネパール全土で行われている。2019年より外務省日本NGO連携無償資金協力事業に引き継がれ、呼吸リハビリテーションを担う中核病院を建設しており、その事業にも専門職として参加させてもらっている。

私はこれまでこの事業で9回ネパールに訪れた。最初はお腹を壊すことや環境に慣れず大変な思いもしたが、今では日常会話であればネパール語が話せるようになり、 第2の故郷と言っても過言でないくらい、大好きな国となった。この事業に参加させてもらい、貴重な経験をすることができるのも派遣中の職場の留守を担うスタッフの協力があって成り立つことは忘れてはならない。

この経験を日々の臨床に生かし還元できるよう当院の外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP認証)のプロジェクトメンバー(身体リハビリテーション科担当)となっている。国際社会に対応できる理学療法士になれるよう今後も研鑽を積んでいきたい


2019年11月15日

圧センサー、デプスカメラを用いたモーションキャプチャーの勉強会
圧センサーを用いた歩行リズム解析

当科ではSCDチームを中心に動作解析手法の構築に取り組んでいます。今回、圧センサーを用いた歩行リズムの計測方法、デプスカメラを用いたモーションキャプチャー手法について勉強会を開催しました。いずれも当科のスタッフがシステム構築およびプログラミング段階から関わっているシステムであり、安価で一般化しやすいものを目指して開発に取り組んでいます。現場の皆さまに活用していただけるように頑張ります!お楽しみにお待ち下さい。

デプスカメラを用いたモーションキャプチャ

2019年11月15日

新人教育プログラム
講義場面

当科では、新人スタッフ向けに各疾患(筋疾患,多発性硬化症,パーキンソン病,脊髄小脳変性症,重症心身障害児者,小児てんかん)の基本的な知識,評価,介入方法について理解していただく時間を設けています。当センターでは上記に挙げた通り「難病疾患」を主に診療しており、それらの疾患についての知識を早く吸収していただきスペシャリストになる必要があります。先輩スタッフも試行錯誤しながら後輩の育成に一生懸命頑張っています。


2019年11月17日

第3回日本リハビリテーション医学会秋季学術集会 参加・発表報告

YIA最優秀賞受賞後、正門大会長を囲んで

2019年11月15(金)〜17日(日)、第3回日本リハビリテーション医学会秋季学術集会が静岡県コンベンションアーツセンターで開催されました。
当院身体リハビリテーション部から医師3名、理学療法士4名が参加および発表を行い、藤本彰子医師がYIA賞最優秀賞を受賞しました(YIA賞(Young Investigator Award賞)は、リハビリテーション医学における学術研究の育成と奨励のために応募した40歳未満で一般演題(口演)の中から最優秀賞1名、優秀賞2名を表彰される)。
今回の学会テーマである「One for all, All for one」という言葉の通り、引き続き、リハ医ならびに関連職種を含めたみんなで力を合わせて進んでいくことで、リハビリテーション医学の発展に貢献していきたいと思います。
発表者・演題名
【教育講演A】
● 水野 勝広 「半側空間無視のリハビリテーション」
【YIA賞候補演題セッション】
●藤本 彰子「デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者に対する長下肢装具立位訓練の側弯予防効果の検討」(最優秀賞受賞)
【一般演題】
●西田 大輔「神経筋疾患患者におけるジェスチャインタフェースシステムの使用感・満足感に関する調査)
【関連職種演題】
● 有明 陽佑「強制的な深吸気による肺の形態的効果が得られた脊髄性筋萎縮症の一例について」
● 加藤 太郎「体幹筋協調障害を疑う腰痛患者に対する理学療法 -パーキンソン病脊椎障害及び変形性脊椎症への影響-」
●近藤 夕騎「日本語版 Characterizing Freezing of Gait(C-FOG)questionnaireの開発-質問紙の翻訳過程-」
● 矢島 寛之「加速度センサを用いたCharcot-Marie-Tooth病に対する下肢装具療法の有効性の検討」

2019年11月19日

第73回国立病院総合医学会の参加と発表

2019年11月8(金)〜9日(日)、第73回国立病院総合医学会が愛知県の名古屋国際会議場で開催されました。

当院身体リハビリテーション部から理学療法士4名が参加および発表を行い、寄本恵輔 理学療法士がベスト優秀口述賞を受賞しました。寄本理学療法士は、3年連続、8回目(当院では6回目の受賞)の受賞となりました。来年は新潟県朱鷺メッセで行われる予定です。

【ワークショップ「神経・筋疾患に携わる各職種の取り組み】

寄本恵輔 「努力性吸気・強制吸気の抵抗性が強い球麻痺ALS患者に対する呼吸理学療法-LIC TRAINERを用いた持続的強制吸気練習の取り組み-」

第7回日本難病医療ネットワーク学会学術集会への参加と発表

2019年11月15(金)〜16日(土)、第7回日本難病医療ネットワーク学会学術集会が福岡県の九州大学百年講堂で開催されました。本学会は研究会から出発し、難病医療に関わる医師、看護師、ソーシャルワーカー、リハビリ専門職種など多職種が集う学会で、最先端なiPS細胞治療、核酸医薬の研究から難病の高額医療費の課題、そして日々臨床の疑問について夜遅くまで討論することができる大変貴重な学会です。

当院身体リハビリテーション部から寄本恵輔理学療法士が参加、教育講演、ハンズオンを行いました。

寄本恵輔理学療法士は、本学会の理事長及び学会長である九州大学大学院医学研究院神経内科学 吉良 潤一教授より推薦を受け、日本難病医療ネットワーク学会の評議員を拝命しました。今後の難病医療の発展に貢献していけるよう努力していきたいと思います。

【教育講演】

寄本恵輔 神経難病の最強の呼吸ケア-多専門職種の連携と新しい呼吸理学療法-

【ハンズオンセミナー】

寄本恵輔 神経筋疾患の気道クリアランスハンズオンセミナー


2019年11月19日

第37回日本神経治療学会 参加・発表報告
2019年11月5日~7日に開催された第37回日本神経治療学会学術集会のメディカルスタッフポスターにおいて、当科加藤太郎理学療法士が優秀演題賞を受賞し、11月6日の受賞式で表彰されました。
■受賞演題
脊髄小脳変性症患者の運動失調に対する短期集中リハビリテーション治療の効果検証
加藤理学療法士コメント
「この度は、映えある賞を受賞させていただき、大変光栄です。これからも臨床と研究共にさらに進められるように、努力して参ります」
加藤理学療法士、おめでとうございます。

2020年1月17日

医局勉強会〜痙縮のリハビリテーション治療〜

医局勉強会にて、水野部長(身体リハビリテーション部)が痙縮の病態と治療について勉強会を開かれ、多くの医師や身体リハビリテーション科スタッフが参加しました。

勉強会では、針筋電図を用いたターゲット筋の同定から 薬剤のinjection手技、装具療法、リハビリテーション治療 に至るまで、分かりやすくお話頂きました。その中でも、治療の適応と限界を踏まえて、患者とShared decision-makingする事が重要であると教えて頂きました。また、理学療法、作業療法との併用の必要性についても言及して頂きました。我々、リハビリテーションスタッフも期待に沿えるよう頑張らなければと感じました。


2020年1月31日

ニューイヤーコンサート(身体リハビリテーション部主催)
毎年恒例のリハビリテーション部コンサートが開催されました.
リハビリテーション部には多芸なスタッフが多く,部内で音楽ユニットが組めてしまいます!
今年も.病棟からたくさんの患者様にお越し頂きました.
アンコールも頂き,大変盛り上がりました.
これからもよろしくお願いします.

2020年2月10日

ネパールスタッフの見学

公益財団法人 国際医療技術財団(JIMTEF)依頼で、ネパール医師2名が呼吸リハビリテーションを学びに1日見学に来ました。見学の感想より、COPDと異なる神経難病の呼吸ケアを学ぶことで理解が深まり、ネパールの呼吸リハビリセンター開院に向け、大変充実した勉強ができたとのことです。少ない時間でしたが、お昼休みにネパールカレーを食べながら異文化交流も行いました。

本プロジェクトは外務省日本NGO連携無償資金協力事業【ネパール バクタプール地域に根ざした肺の健康プロジェクト・COPD対策~包括的呼吸リハビリテーションの普及~】で行っており、身体リハビリ部のスタッフが参加してます。


2020年3月10日

誘発筋電図勉強会
水野部長の主催で,誘発筋電図検査の実技講習が行われました.
今回は,H波,M波,F波の導出方法と神経伝導速度の測定手法について学びました.
教科書だけでは理解できなかった波形の意味や測定方法を実際の演習にて,深く学ぶ機会となりました.電気生理手法に強いリハビリテーション部を目指して,これからも勉強に励んでいきたいと思います.

2020年3月10日

論文が掲載されました!

中山慧悟言語聴覚士が投稿した論文が掲載されました。

ご参照いただければ幸いです。

http://downloads.hindawi.com/journals/rerp/2020/6585264.pdf

【背景と目的】

 Lee Silverman Voice Treatment® (以下LSVT®) LOUDは,米国で考案された,パーキンソン病(PD)に対する,声質を保ちながら正常な声の大きさを目指す訓練法であり,複数のランダム化比較試験を経て高いエビデンスレベルを習得している.また訓練の質と効果を保証する目的で商標登録されており,LSVT®の実施には資格習得が必要とされている.米国ではLSVT®訓練2年後まで声量増大効果が継続すると報告されているが,日本では即時効果についての報告しかない.本研究では日本語話者においても長期的な効果がみられるかについて検討した.

【結果】

 訓練前に比して,訓練1年後まで声量が有意に増加した.発話明瞭度においては訓練直後には改善がみられたが,訓練1年後には有意なレベルに至らなかった.

【まとめと社会的意義】

 日本語話者においてもLSVT®LOUDを実施することで,少なくとも訓練1年後までは声が大きくなることが示唆された.声が小さいことを主訴とするPD患者に対してLSVT®を実施することで,声量増大効果が長期的に期待できると考えられた.


2020年3月30日

春は出会いと別れの季節です

本年度で退職するスタッフ

研究生として指導してくださった望月教授

私たち、身体リハビリテーション部に6年もの間、臨床・研究の指導をしてくださった文京学院大学(保健医療技術学部理学療法学科)教授である望月 久先生も今年度で研修終了となりました。望月先生は、誰もが知っている「パーキンソン病」「バランス障害」の第一人者です。
私たちは、たくさんのことを望月先生から教わりました。感謝の意を表し、みんなでプレゼントと御礼をさせていただきました。

また、4月から異動となったセラピストもいます。彼らにも感謝でいっぱいです。NCNP スピリットを忘れずに新天地でのご活躍を祈念致します。

世間は今、色々と大変な状況ではありますが、私たちは神経筋疾患のリハビリテーションの臨床・研究を今後も推進していきます。次年度もよろしくお願いいたします。