NCNP市民公開講座Webセミナー「新しい生活様式と睡眠・リズム」視聴者アンケート調査結果

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はじめに

2021/8/27

文責:河村 葵

 去る2021年2月21日に開催した睡眠障害センター主催の市民公開講座Webセミナー「新しい生活様式と睡眠・リズム」では、ご参加くださいました皆様にセミナー師長後のアンケートへのご協力をお願いしておりました。今回は、そのアンケート調査の結果についてご紹介いたします。

このコラムの内容

1.アンケート調査の目的
2.アンケート回答者プロフィール
3.アンケート結果からみえる新しい生活様式における睡眠・リズムの変化と健康
4.おわりに

1.アンケート調査の目的

 この度のアンケート調査は、睡眠障害センターにおいて、皆様の睡眠や健康に関する困りごとを把握し、より皆様の要望に応じた情報発信につなげることを目的に実施しました。


2.アンケート回答者プロフィール

 この度の市民公開講座は、100名を超える多くの皆様にご応募いただき、90名近くの方にWebセミナーをご視聴いただきました。また、72名の方がアンケートにご協力くださいました(回答率62.6%)。また、アンケート集計結果から、性別を限らず、40歳代・50歳代を中心に20歳代~70歳代の幅広い年齢層にご視聴いただけたことが伺えました。また、コロナ禍にも関わらず、遠方の方にも多数ご参加いただけたことは、物理的な制約にとらわれないWebセミナーでの開催が寄与したところが大きいと思われます。


3.アンケート結果からみえる新しい生活様式における睡眠・リズムの変化と健康

 コロナ禍を乗り切るために、私たちの生活に大きな変化が求められるようになりました。今回のアンケート調査では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行前後での皆様の生活における変化(睡眠習慣や気晴らし行動の変化)と皆様が感じておられる健康感についてもご回答いただきました。

 COVID-19流行前後で、床上時間(寝床に入っている時間)、睡眠時間(実際に眠ったと感じている時間)、入床時刻(寝るために寝床に入る時刻)、起床時刻(起きて寝床から出る時刻)の4項目いずれかが変化した回答者は33名(45.8%)でした。また、回答者全体として、これらの変化の方向については、床上時間と睡眠時間は長く、入床時刻と起床時刻は遅くなる傾向が伺えました。

 気晴らし行動については、回答者全体として、「携帯、テレビ、パソコンの使用」は増える傾向にあり、「運動」は減る傾向が伺えました。

 回答者がアンケート回答時に感じておられた健康感(自覚的健康感)について、ご自身の健康状態を否定的に捉えている方は全体の32%でした。

 これらの回答結果について、どのような習慣の変化が、自覚的健康感とどのように関連しているのかを検討しました。COVID-19流行前後の起床時刻の変化と自覚的健康感についての関連を調べたところ、起床時刻が変化するほど、現在の健康感は悪化する結果となりました*1。また、COVID-19流行下で「気晴らし行動としての携帯、テレビ、パソコンが増えた人」ほど、起床時刻の変化が大きくなる結果となりました*1。さらに、「気晴らし行動としての携帯、テレビ、パソコンが増えた人」ほど、起床時刻の変化を助長することで健康感が悪化する可能性が示唆されました*2

*1 一般化線形モデルを用いた検討  *2 PROCESSモデルを用いた検討


4.おわりに

 今回は、コロナ禍での皆様の睡眠や健康に関する困りごとについてのアンケート調査結果を中心にご報告しました。本アンケート調査結果から、コロナ禍における生活の変化と健康について、起床時刻の変化と自覚的健康感が有意に関連することが明らかとなりました。今回のようなアンケート調査では、因果関係まで調べることはできませんが、コロナ禍での新たな生活様式において、皆様の健康感の低下を防ぐ上で、睡眠・覚醒リズムの維持が重要である可能性は示唆されます。今回の報告が、健康維持における睡眠・覚醒リズムの重要性を知っていただく一助となれば幸いです。