2022/10/31

普段の生活でよく遭遇する眠りと目覚めに関する疑問やお困りごとに、睡眠の専門家がお答えします。

A1.（回答者　福水道郎）

①まず、適切な睡眠衛生（以下i）〜iii)でお示しします）^{1, 2}を構築してみてください。
※適切な睡眠衛生とは、質の良い睡眠を得るために推奨される行動・環境の調整技法を指します。

i)早寝早起きなど、規則正しい生活リズムにしましょう

　日中、特に午前中の屋外での活動により、太陽光をよく浴び、体内時計を調整します。早い時間に昼寝をとらせ（できれば15時より前には起こしましょう）、夜は早く寝かせます。

ii)適切な睡眠習慣をつくり、寝室の睡眠環境を整えましょう

　夜になったら照明は明るくしないようにしましょう。また、入眠直前は興奮させるような活動はさけましょう。入眠直前の食事も避けます。静かで楽しい活動を入れた、継続できる就床前の睡眠習慣（ベッドタイム・ルーティン：寝る前の行う一連の行動を定式化させること）を構築します。絵本の読み聞かせなども良いでしょう。ベッドタイム・ルーティンは子どもの寝室で、子どもが起きているうちに行います。子どもが寝てからベッドに連れて行くのは避けましょう。布団に入る前から眠るまでの手順を含め、朝目覚めて布団から出るまで同じ睡眠環境にします。

iii) 移行対象を利用しましょう

　移行期と呼ばれる1～3歳頃に、特に不安が高まったときなどに抱きしめたり握り締めたりする愛着対象（ぬいぐるみや毛布、タオルなど）を「移行対象」と呼びます。毎日のベッドタイム・ルーティンの一部として、子どもと一緒に「移行対象」をあやしたり、ぬいぐるみの場合であれば「そろそろくまちゃんと一緒に寝ようか」と声掛けをして寝室へ連れて行かせたりするのも良いでしょう。「移行対象」が無い場合は、子どもと一緒にぬいぐるみをお世話したり、よしよししたりすると、愛着を作りやすくなります。

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②　i)〜iii)の構築で改善しない場合に下記のことを考えてください³。

　寝つきの問題は「眠る場所に行くこと」と「眠りにつくこと」の両方の問題を含んでいます。幼児は基本的には「そろそろ寝る時間だね」と寝床に連れていくことや、添い寝や本の読み聞かせなどの親の援助が必要となる事が多いです。さらに、乳児期後期（特に9ヶ月頃）以降、それ以前から親が行ってきた援助方法を変更すると、もっと親と一緒にいたいと思ったり、遊びたいという気持ちが強まったりして、「眠る場所に行くこと」と「眠りにつくこと」の両方の問題が起きやすくなります。また、昼寝、夜の睡眠のいずれにおいても、親が一貫性のない、不適切な就眠時刻を設定することが寝付きの問題の原因となります。

　「眠りにつくこと」を改善するのに最も大事なことは自分自身の力で眠りにつくことを本人が体得することです³。自分で目が醒めた状態からスムーズに寝に入る能力と、年齢に適した睡眠の長さ分、夜に寝入ってから朝完全に目が醒めるまでぐっすり眠る能力を獲得していくよう促します^{3, 4}。起きているうちに寝かせ、夜間ぐずってもすぐには抱き上げるなどしないようにしましょう。そうすれば、夜中に自然に目が醒めたときにも自分で眠りにつこうとする習慣がつき、親の援助が次第に必要にならなくなってきます。生まれたばかりのお子さんをお持ちのご両親でしたら、後になって寝かしつけが大変にならないよう、生後3~6カ月頃の早期から少しずつ始めていきましょう。

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参考文献
1. Owens JA; Andreason P; Babcock D et al. The use of pharmacotherapy in the treatment of pediatric insomnia in primary care; rational approaches. A consensus meeting summary. J Clin Sleep Med 2005;1:49-59
2. Winnicott DW.　Transitional objects and transitional phenomena; a study of the first not-me possession.　Int J Psychoanal. 1953;34(2):89-97.
3. Sadeh A, Anders TF. Infant Sleep Problems: Origins, Assessment, Interventions .Infant Mental Health Journal　14 : 17–34, 1993
4. Henderson JMT, Blampied NM, France KG. Longitudinal Study of Infant Sleep Development: Early Predictors of Sleep Regulation Across the First Year.
Nat Sci Sleep. 2020;12:949-957.