第21回銀杏中毒にご用心

第21回
銀杏中毒にご用心

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2023.11.02
銀杏中毒にご用心

「てんかん発作かもしれない」と紹介された外来の患者さんを、銀杏中毒と診断したことがあります。
問診で、どうもてんかん発作らしくない病歴だなぁと思い、まずは「最近、いつもと違うものを食べたりしてませんか?」と聞いたのですが、「特に変なものは食べていないです。」とのお答え。「例えば銀杏とか食べてませんか?」と聞いたら、患者さんの表情が「え?」となって、「結構食べてますけど、何か関係あるんですか?」とびっくりされていました。知人から送られた銀杏を、酒のつまみに1日に10個くらいずつ食べていたとのこと。

銀杏中毒の原因は銀杏に含まれる4-O-methylpyridoxine(4-O-メチルピリドキシン)という化合物です。これがビタミンB6に似た形をしているため、ビタミンB6の働きを邪魔してしまいます。ビタミンB6はGABAという抑制性の神経伝達物質を作る際に必要な酵素です。この働きが阻害されると脳内でGABAを合成することが出来なくなり、てんかん発作に似た痙攣発作を起こします。
銀杏中毒は大人よりも小児で起こしやすいとされています。記録では5個食べただけで中毒を起こした例もあるようです。大人ではアルコール依存症の方はビタミンB群の欠乏状態のことがあるので、銀杏中毒を起こしやすくなります。

銀杏中毒は、ピンポイントで銀杏を食べているかどうかを医師が問診しなければ診断できないので、初診で何かちょっとてんかんとは違うなぁと感じた時に聞くように心がけています。


(脳神経外科・飯島 医師)

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