
ルポルタージュ San Servolo Advanced Epilepsy Course 2024
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2024.12.04
ルポルタージュ San Servolo Advanced Epilepsy Course 2024
2002年から毎年夏にヴェネツィアのSan Servolo島で開催されている、ILAE (国際抗てんかん連盟) 主催のてんかん診療の教育コース (San Servolo Advanced Epilepsy Course) に、日本てんかん学会 UCB賞の助成を受けて参加しました。
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このコースは2024年7月21日から8月4日までの11日間、San Servolo島に閉じこもって朝から夜までレクチャーを受けたり、グループワークを行ったりして、てんかんに関する知識を深めるというものです。初日はてんかん外科全般、2日目と3日目は術前評価、4日目は画像と病理、5日目は頭蓋内脳波、6日目は手術の術式、7日目と8日目は小児の手術といったテーマでレクチャーが行われました。世界各国の著名な講師によるレクチャーは大変感銘深く、勉強になりました。合間には学生たちによるケースプレゼンテーションがあり、参加者みんなでディスカッションを行いました。
レクチャーに加えてグループワークも実施されました。講師もさることながら、受講生も世界各国から集まった優秀な医師たちです。約40人の受講生が7つのグループに分かれ、てんかんに関する研究プロジェクトを立案し、10日間で一つのプロジェクト計画を完成させ、最終日にプレゼンテーションを行います。このグループワークも、とても有意義なものでした。僕のグループには米国のマサチューセッツGeneral Hospitalの小児神経科医、ブラジルの小児神経科医、イタリアの神経内科医、エジプトの脳外科医、フィンランドのバイオインフォマティシャン(生物情報学者)がいました。僕たちのグループの研究プロジェクトのテーマは、Epileptogenecity index (EI:てんかん原性指数) の有用性を検証するためのrandomized controlled trial(無作為比較試験)を計画するというものでした。このグループワークを通じて世界各国の仲間たちとの絆を築き深めることができました。
朝食と昼食は参加者全員で島内の同じレストランで食べるのですが、著名な先生と一緒にランチをしながら雑談をする機会がありました。学会やレクチャーで聞けない裏話を聞くことができたり、その先生の個人的な信条のようなものが垣間見えたりし、とても刺激的で面白かったです。
このコースはSan Servolo島内にある宿泊施設に全員が宿泊するのですが、一人部屋と二人部屋を選ぶことができました。僕は予算の関係でリーズナブルな2人部屋を選んで、11日間、エドウィンという名前のキューバ人の脳外科医とルームメイトでした。エドウィンとは兄弟のように仲良くなり、サルサというダンスを教わりました。僕も日本の文化を教えました。キューバ人の多くは家族をとても大切にする文化で、How are you? の後に必ずHow is your family? と聞いてきて、よく互いの家族のことを教え合ったり、写真を見せ合ったりしました。でも、彼は「ヨーロッパでは家族のことを聞くとプライバシーの侵害とされてしまうのでHow is your family? とは聞かないようにしている」と言っていました。
コースの内容とは直接関係のない旅行に関する出来事では、夕食で何度かヴェネツィアに行き、食事をしました。パスタやピザ、ジェラート、魚介類など全てが美味しかったです。また、イタリアはエスプレッソというコーヒーが有名で、エスプレッソに泡立てたミルクを入れて飲むラテマキアートというドリンクがとても気に入りました。マキアートはイタリア語で「染み」という意味で、エスプレッソの中にミルクが染みのように見えることに由来します。コースのマネージメントをしてくれたイタリア人によると、イタリアではカプチーノは朝専用の飲み物で、昼以降は注文してはいけないそうです。Cappuccinoのcapは頭という意味で、cappuccinoはエスプレッソの上に乗るミルクが頭巾のように見えることに由来するそうです。お土産にはヴェネツィアングラスというきれいなガラスでできたコップなどを購入しました。
今回、San Servolo Advanced Epilepsy Courseに参加できたことは自分の医師人生の中でトップクラスに有意義なものでした。ここで学んだことを、今後の診療に活かし、医療の質の向上に貢献していきたいと思います。
脳神経外科診療部医師 飯島圭哉
※写真の掲載に関してはコースに許可を得ています。