論文紹介

Muscle afferent excitability testing in spinal root-intact rats: Dissociating peripheral afferent and efferent volleys generated by intraspinal microstimulation.
  • 著者
    Saeka Tomatsu*, Geehee Kim*, Joachim Confais, Kazuhiko Seki
  • 掲載誌
    Journal of Neurophysiology Published 14 December 2016 Vol.36 no.50 ,
  • DOI
    10.1152/jn.00874.2016

*同等の貢献度

末梢の感覚情報は求心性繊維を通じて脊髄に入力する.感覚繊維の末端は脊髄内でシナプスを形成して感覚情報を伝えるが,文脈に応じたシナプス前抑制が,情報の伝達を遮断することが知られている.感覚神経末端でのシナプス前抑制の研究には,脊髄内微小電気刺激によって引き起こされる感覚神経上の電位変化を観察することが有用で,皮膚感覚入力が随意運動中のシナプス前抑制によって低下することが,この技術を用いてすでに明らかにされている(Seki et al. 2003).ところが,求心性繊維のみが束になっている皮膚神経とは異なり,筋神経は筋の状態を伝える求心性繊維と,筋を収縮させる指令を送る運動ニューロンの軸索(遠心性繊維)が束になっているため,脊髄内電気刺激による電位変化がどちらの繊維由来であるかを判別する方法が求められていた.

本研究では求心性繊維もしくは遠心性繊維を選択的に切断した実験系(図A)において,脊髄内電気刺激を2発続けて行ない,刺激間隔が2 msのときに経路による反応の違いが大きいことを見いだした(図A,B).具体的には,求心性繊維由来の反応の場合は,2発目の振幅がやや大きくなり,遠心性繊維由来の反応の場合は2発目の振幅が小さくなる.これは,遠心性繊維由来の反応には運動ニューロンの興奮が介在するため,刺激間隔が短いと不応期があらわれることによると考えられる.さらに神経切断をしない実験において,2発目の振幅が1発目の振幅の95.3%より大きいときに求心性繊維由来,小さいときに遠心性繊維由来と分けると,シナプス前抑制の有無と関連が深いことがわかった(図C).

この基準を用いると,神経切断をせずに筋神経に対するシナプス前抑制の研究を行なうことができる.今後の研究により,我々動物が自然な随意運動を行なうとき,どのように筋感覚入力を利用するのかに関して新たな知見を得ることができると期待される.

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