人と社会をつなぎ、ともに考える対話を通じた倫理支援を

人と社会をつなぎ、ともに考える対話を通じた倫理支援を

トランスレーショナル・メディカルセンター 臨床研究支援部 倫理相談・教育研修室では、研究倫理に関する相談支援(コンサルテーション)を行うとともに、研究倫理、研究公正の教育・研修を行っています。また、医療倫理、研究倫理について生命倫理の観点から研究を行っています。

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TMC(トランスレーショナル・メディカルセンター)臨床研究支援部

生命倫理の
専門的立場で
倫理支援を行う

研究倫理コンサルテーションの様子の写真
研究倫理コンサルテーションの様子

 生命倫理とは、生命科学と医療の領域における倫理的諸問題を学際的・体系的に研究する学問及び実践です。医療倫理、研究倫理は生命倫理の分野に含まれます。倫理相談・教育研修室では、生命倫理の研究・教育経験を積んだ者による倫理相談(コンサルテーション)や倫理教育などの支援を行っています。
 精神・神経疾患医療の領域では、患者さんの自己決定が困難であったり、患者さんが社会的に弱い立場にあり、自律性の確保が困難になることが多くあります。また、個人情報の保護、研究や医療の透明性の確保、社会の理解など、より慎重な倫理的配慮が求められるため、患者さんやご家族の権利擁護と社会との対話を基本として活動しています。
 私たちは、NCNP内のあらゆる部門からの依頼に応じて、協力や助言を行い、研究者や倫理審査委員、事務局を対象とした研究倫理及び研究公正に関する教育や研修を企画・実施しています。

生命倫理に関する
研究とコミュニケーション

国際神経倫理サミットの写真
国際神経倫理サミットで、日本のブレインバンクについて発表

 研究倫理支援活動を通して、研究倫理と研究公正に関する研究を行っています。研究公正に関しては、一般財団法人公正研究推進協会研究不正調査標準化会議のメンバーとして、研究不正審査考慮事項をまとめた共同研究論文を国内外に公表しました。
 生命倫理の諸問題である早期診断(発症前診断等)・早期治療や、脳科学研究におけるヒト試料や情報の利活用、脳神経倫理(Neuroethics)に関する倫理的・法的・社会的問題の研究を行っており、昨年は、国際サミットにおいて我が国の脳バンクの実態と課題について発表し、海外の研究者と意見交換を行いました。
 医科学研究の発展のためには、技術の進展に伴う社会の価値観の変化への対応や、社会とのコミュニケーションも重要となります。専門家と一般市民が情報共有しつつ双方向に議論し、信頼関係を構築し協働していくことが大事であると考え、市民講座や交流集会等、様々なアウトリーチ・インリーチ活動を行っています。

研究倫理支援体制の強化と地域社会への貢献

セミナーの風景写真
研究倫理について気軽に学ぶことができるランチョンセミナーを定期的に開催

 研究倫理支援体制を強化するため、機関内ルールの見直しや、講習会等を開催しています。
 患者さんから提供された血液などの試料や情報を、厳重に取り扱うなど、適正に研究を遂行するためには、研究者は、ルールを知るだけでなく研究者の責務を自覚する必要があります。そこでNCNPでは「研究倫理月間」を設け、研究者の意識向上を図り、ランチョンセミナーや “よろず倫理相談”を実施しており、現在では、研究者からの相談も増えてきています。
 国全体で見ますと、未だ研究倫理支援体制が整っていない機関も多く、専門家などの人的資源も乏しい状況にあり、全国的な支援を充実させる必要があります。そのため、私たちは支援のネットワークづくりをしながら、機関がお互いに協力・支援し合う活動に励んでいます。当室は、他機関の依頼を受け、倫理審査委員会などの委員研修や研究倫理教育を実施し、さらに、他機関の委員を担って体制構築のための助言や援助を行うなど、地域社会貢献にも努めています。


リファレンス

  1. TMC (トランスレーショナル・メディカルセンター)講習会・セミナー:https://www.ncnp.go.jp/tmc/study.html
  2. .Global Neuroethics Summit, https://globalneuroethicssummit.com/gns-2019/

研究部紹介