認知症予防レジストリ IROOP®の進展

認知症予防レジストリ IROOP®の進展

脳病態統合イメージングセンター (IBIC)臨床脳画像研究部では精神・神経疾患に関する画像の臨床研究や治験を実施しています。
磁気共鳴画像(MRI)、ポジトロン断層像(PET)、単一光子放射断層撮影(SPECT)などの脳イメージングを組み合わせることにより脳の機能と構造を明らかにし脳の病態の解明に迫ります。

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脳病態統合イメージングセンター/臨床脳画像研究部

IROOP®構築の 目的と登録状況

IROOP®の概念図
IROOP®の概念図

WHOによると世界人口の急速な高齢化に伴い認知症人口も増えています。特にアルツハイマー病に対する対策が急がれていますが根本的治療薬の開発には至っていません。薬の開発には治験が必要で、効率性の高い被験者さんのリクルート法の確立が求められています。わが国では新オレンジプラン施策の一環として認知機能健常成人・前臨床期・臨床期を 対象としたレジストリが構築されつ つあります。そこでNCNPでは円滑な参加者登録を目指すため認知機能が健康な成人を対象とした大規模なインターネットを介したレジストリIROOP®を構築し運営しています。 IROOP®は2016年7月から運用を開始し約 3年が経過しました。現在では登録者数は5,300人を超えています。IROOP®は半年毎にアンケートとあたまの健康チェック**を実施しており、自身の酪知機能の変化を確認できます。(2019年4月現在)

*レジストリ:医学の前向き研究の進め方の一つです。多施設において疾患の情報をデータベースに登録し、症例を積み重ねていき、疾患の さまざまな原因や経過などについて統計的に検討する方法です。
**あたまの健康チェック:米国食品医薬品局でも新薬治験で採用され、国内の地方自治体でも使用されている簡易認知機能検査である10単語記憶検査日本版を電話対応により行います。半年こ‘とに行い、記憶力の変化を数値で見ることができます。

インターネットレジストリの活用

私たちはIROOP®を大きく分けて以下の2点で活用しています。
(1)危険因子の探索:根本的な治療薬の開 発が待たれる現在では将来、認知症に移行する危険因子の探索が急がれています。そこで、登録されたデータを解析し認知症の危険因子の探索を行っています。 現在までに2編の論文が出版され、 キーワードとして 「睡眼時間」 「気分」などが抽出されました。今後も蓄積されていくデータを解析し検討を重ねていきます。
(2)データの活用:IROOP®戸登録データの活用が進んでいます。臨床研究や薬の治験で参加者募集を行いたい研究機関や企業がIROOP®戸事務局へ申請を行い、承認後IROOP®事務局から対象者にご案内しています。

一次予防と二次予防

2019年4月現在の全国のIROOP®登録状況
2019年4月現在の全国のIROOP®登録状況

アルツハイマー病に代表される認知症では薬の開発が待たれる現在、予防の視点が重要となります。認知症は複数の因子が関係しているため、一つの生活様式に焦点を当てて予防を行うのではなく複数の視点での予防が必要となります。lROOP®に登録し、アンケートに回答し、あたまの健康チェックを受けることで自身の認知機能の変化を確 認できます。一次予防として認知症危険因子を示し、修正することで疾患の発症を抑え、二次予防として早期発見につがるよう今後も継続したlROOP®の運用を行って いきます。

lROOP®のホームページ上で認知症予防に関する情報を提供しています。また、希望される登録者の方に新しい臨床研究や治験のこ案内をしています。


リファレンス

OgawaM、et al (2018) Analysis of risk factors for mild cognitive impairment based on word list memory test results and questionnaire responses in healthy Japanese individuals registered in an on line database. PLoS ONE 13 (5) :eOl 97466、2018. httpsJ/doi.org/10.1371/journal.pone.0197466
Ogawa M, et al (2019) Longitudinal analysis of risk factors for dementia based on Mild Cognitive Impairment Screen results and questionnaire responses from healthy」apanese individuals registered in an on line database Alzheimer's & Dementia 5(2019) 34 7-353 https:// doi.org/10.1016/j.trci.2019.06.003

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