精神疾患の克服とその障害支援への挑戦

精神疾患の克服とその障害支援への挑戦

NCNP精神保健研究所精神疾患病態研究部では、
現在の治療で効果が出る患者さんと効果が出ない患者さんの医学的な違いについての研究を行っています。
前者については原因/病態解明研究を、後者については精神科治療技法の社会実装研究をNCNP病院と連携して行っています。
これらの研究により、精神医療の世界を変えることを目指しています。

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精神保健研究所/精神疾患病態研究部橋本 亮太部長

オールジャパンの生物学的精神医学の多施設共同研究体制を牽引

説明図
ヒトの脳MRI画像にて淡蒼球を示しています。

認知社会機能、脳神経画像、神経生理機能などの中間表現型、ゲノムなどの生体試料情報に基づいて統合失調症、気分障害、発達障害などの幅広い精神疾患を横断的に検討しています。この研究は私たちが、大阪大学をはじめ日本全国39の精神疾患関連研究機関の共同研究体制であるCOCORO(Cognitive Genetics Collaborative Research Organization:認知ゲノム共同研究機構)を運営して行っています。11施設の統合失調症と健常者合わせて2564例の脳画像を用いて大脳基底核体積のメタアナリシスを行い、左優位の淡蒼球の増加を示すという成果もあげてきました。
日本の精神医学領域では、多数の研究機関が協力した多数例の研究は少なく、その先駆けとなるものです。この研究を通して、精神疾患の病態を解明し、新たな診断法・治療法の開発を目指しています。

統合失調症の認知社会機能の臨床現場における評価法を確立

説明図

統合失調症をはじめとする精神疾患では認知機能が病前と比較して低下することが知られていますが、個々の患者さんで低下の程度を測定する方法はありませんでした。そこで私たちは、統合失調症の認知機能障害の測定法を開発し、臨床現場で実際に使用するために15分で測定できるよう簡略化しました。この認知機能障害指標は、統合失調症患者の最も重要な社会機能である労働時間の推定にも役立つことが分かりましたので、臨床現場で実施するための講習を行っています。また、統合失調症の眼球運動異常に着目した補助診断法を開発し、その眼球運動異常が認知機能や労働時間に関連する成果を得ました。眼球運動が臨床で有用な指標になることを示唆しています。これらの研究はCOCOROの成果ですが、精神医学領域の臨床研究の成果を臨床現場にて応用するものであり、目の前の患者さんに役立つものとなっています。

精神科治療ガイドラインの普及・教育・検証活動

EGUIDEの講習の様子
EGUIDEの講習を皆で楽しく受講

私たちは精神科治療ガイドラインの普及・教育・検証活動であるEGUIDEプロジェクトを牽引し、精神科医療の普及と均てん化を行っています。EGUIDEプロジェクトは、精神科医に対してガイドラインの教育の講習を行い、ガイドラインの効果を検証する社会実証研究です。EGUIDEプロジェクトでは2016年に22医療機関で始めましたが、現在は43大学132医療機関が参加する巨大なプロジェクトになりました。
統合失調症とうつ病のガイドライン講習を全国で1500名以上が受講し、その理解度が向上することを示しました。ガイドラインは患者さん・家族・支援者・医師が共同意思決定を行うための参考となる資料です。
私たちは日本神経精神薬理学会などでガイドラインの作成を行うだけでなく、患者さん用の簡単なガイドを患者さんと一緒に作成し普及活動を行っています。このように医師と患者さんの双方の理解を向上することで、よりよい医療が行われるようになる社会実装研究を行っています。


リファレンス

統合失調症の大脳皮質下領域の特徴を発見淡蒼球の体積に左右差がある
https://byoutai.ncnp.go.jp/imagesWP/pdf/press-release20160115.pdf

統合失調症の労働状態の推定法の開発 ― 病前からの認知機能低下の推定値による確率モデルの有用性 ―
https://byoutai.ncnp.go.jp/imagesWP/pdf/press-release20180622.pdf

精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究を開始 ~ 精神科医への教育を行い、よりよい医療の実践に大きく前進 ~
https://byoutai.ncnp.go.jp/imagesWP/pdf/press-release20160526.pdf

研究部紹介

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