筋ジストロフィーへの対応

筋ジストロフィーへの対応

リハビリテーションとして、筋肉が固くならないようなケア、運動不足にならないような適度な運動、過度に筋肉痛を引き起こさないような注意点について紹介していきます

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ストレッチング

日常的にできるケアとして、代表的なものは筋肉のストレッチングです。

介助者から受けるストレッチングについて動画で紹介しております。

各部位につき30秒を目安に、「イタ気持ちいい」感覚が得られる強さで、行ってください。

筋ジストロフィーの方が特に硬くなりやすい筋肉についてストレッチングの方法を説明します。

筋肉は単独ではなく他の筋肉との繋がりを持って働いています。満遍なく行っていただく事をお勧めいたします


仰向けで行うストレッチング

仰向けで行うストレッチング

① ふくらはぎ(下腿三頭筋)

目的:足首を固くさせないためです。

固くなるとつま先歩きになりやすく、立ち上がりや歩く際に疲れやすくなったり、長い距離を歩けなくなったりします。

また、椅子や車椅子に座る際に踏ん張りを利かせやすくし、ガニ股や猫背など姿勢を悪くさせないようにするためです。

1) 踵を持ち、足の裏と介助者の腕を密着させます

2) 膝が曲がらないように上から押さえます

3) 身体を傾ける力を使って足首を反らせます

足首が反らなくても、筋肉が伸びている感覚が得られれば十分です。

② 太もも裏(ハムストリングス)

目的:膝を伸ばしやすくするためです。

固くなると膝が伸びにくくなり、立った姿勢を保ったり歩いたりする際に太もも前面の筋力に余計な負担がかかり、長く立ったり歩いたりすることが大変になります。

1) 踵から足首を持ち、ゆっくりと上げていきます

2) 膝が曲がらないように上から押さえます

3) 反対の足が持ち上がらないように脚などで上から押さえます

反対の足が持ち上がると力が逃げて十分に伸ばされませんので注意が必要です。膝が伸びきらない場合でも必要なストレッチングです


うつ伏せで行うストレッチング

うつ伏せで行うストレッチング

③ 太もも前(大腿四頭筋)

目的:脚を曲げやすくするためです

固くなると膝が90°以上曲がりにくくなります。いざる、ハイハイ、立つ、歩くといった移動に重要な筋肉です。

1) 足首から足の甲を持ちゆっくりと膝を曲げていきます

2) お尻が浮かないようにお尻を上からしっかりと押さえます

④ 脚の付け根(腸腰筋)

目的:立ち、または歩きの良い姿勢を維持するためです

固くなると、へっぴり腰になり、腰や胸を過度に反らした姿勢になりやすいです。

1) 膝を曲げて膝から太ももをゆっくりと持ち上げます

2) 腰が一緒についてこないようにお尻を上から押さえます

※元々大きく動く方向ではないのでゆっくりと動かし、伸び感があるかどうか確認しながら行います

⑤ 太ももの横(大腿筋膜張筋)

目的:脚を閉じやすくし、横向きで寝る姿勢や椅子に座った姿勢をよくするためです

固くなるとガニ股のように脚が開き、逆に閉じることが大変になります。猫背姿勢にもつながります

1) 膝を曲げて膝から太ももを持ち上げます

2) 上げたまま内側へ、脚を閉じるようにします

3) 腰がついてこないように押さえます


指と腕のストレッチ

①指(浅指屈筋、深指屈筋)

目的:指や手首を固くさせないためです。
固くなると、指が伸ばしにくくなります。手首をそらしたときに、指先の関節が曲がってしまって伸ばせないようであれば、固くなり始めていると考えられます。
食事の動作や電動車いすの操作、パソコンの操作に影響します。

自分で行う方法
1) ベッドに座ります。または椅子に座って、同じ高さの椅子を横に並べます。
2) 手を開いて腰の横に手をつきます。
3) 指の関節と肘をしっかり伸ばします。(肘の関節が伸びきらない方は、伸びる範囲で構いません)
4) 余裕があれば指先を外側に向けます。さらに余裕があれば、指先を後ろに向けます。さらに余裕があれば、手の位置を前にずらします。
5) 最初の、指先を前に向けた向きでもきつければ、指先を前に向けたまま手の位置を前にずらします。
6) 上記のストレッチで浅指屈筋と深指屈筋の両方が伸びますが、肘を少し曲げた状態でストレッチを行うと深指屈筋がより伸ばせます。できる方は、同様の方法で少し肘を曲げてやってみてください。
*指が曲がらないように気を付けましょう。
30秒を目安にゆっくり伸ばしてください。

介助で行う方法
1. あおむけで寝ます。てのひらを上に向けた状態で腕を横に伸ばして、枕または介助者の太ももの上に腕を乗せます。
2. 肘と手首を伸ばした状態で、介助者は人差し指から小指を握り、指先を反らせるように伸ばします。
3. 介助者の反対の手で親指を伸ばします。
4. さらに、肘を少し曲げた状態で上記のストレッチを行うと、指の違う筋肉が伸ばせますので、同様にやってみてください。
30秒を目安にゆっくり伸ばしてください。

②腕(回外筋)

目的:手のひらを上に向ける動きを維持するためです。
普段の生活で机に手をのせて作業するときには、手のひらを下に向けていることが多いと思います。字を書いたり、パソコンをしたりするときには、手のひらが下に向いています。ゲームをするときは手のひらが横に向いているかもしれません。手のひらを上に向けることができなくなると、食事の動作や洗顔の動作がやりづらくなります。

自分で行う方法
1. 椅子に座ってテーブルに腕を乗せます。
2. 反対の手で手首を握り、てのひらが上を向くようにねじります。
3. 余裕があったら、てのひらが外側に向くようにさらにねじります。
30秒を目安にゆっくり伸ばしてください。

介助で行う方法
1. あおむけで寝ます。
2. 介助者は肘と手首を持ち、肘を伸ばしながらてのひらを上に向けるようにねじります。
3. 余裕があったら、てのひらが外側に向くようにさらにねじります。
30秒を目安にゆっくり伸ばしてください。

運動の注意点

体の状態に合わせた適度な運動をすることで運動不足による体力や筋力低下を予防することができます。

特に長期休みでは運動不足になりやすいので意識的に運動することを心がけましょう。


・歩行可能な方

起きる、立つ、歩く、昇り降り、家事動作など日常生活の動きでも適度な運動量になります。

万歩計で歩数を確認しながら活動量を決めていくとより良いです。一日当たりの適切な運動量は年齢や状態によって異なりますので、運動終了時に「やや疲れる」疲労感が得られる程度で判断するようにしてください。過度な運動では翌日以降にに筋肉痛が生じます。

トランポリンの使用は控えましょう ゴムやバネの力を使い自分の筋力以上の負荷をかけると過度な筋肉痛を引き起こします。

・立ち上がりが難しい方(いざり移動が可能な方)

四つ這い移動(ハイハイ)や両手を使ってお尻をずって移動するいざり運動がよい運動です。

少し息が上がる程度に運動してみましょう。

・車椅子移動の方

程度によりますが、車椅子に乗って体を揺らすこと、例えば外出し小さな段差を上り下りすることや狭い通路で切り返すことなどでも全身運動になります。ただし、ヘッドレストが適切に設定されていないと脳や首の負担が強くなるので無理をしないようにしましょう。

基本的にはサポートしてくれる方にストレッチングをしてもらうなどして体をケアしましょう。

呼吸リハビリテーション

普段、無意識にしている呼吸も横隔膜などの筋肉による運動の一つです。そのため、筋力低下は呼吸運動にも影響が及びます。

ここでは、推奨されている呼吸リハビリテーションの方法について

1. 胸の関節運動

2. 肺を最大に膨らませる

3. 咳を補助する

の3つを中心に紹介します。


・胸の関節運動

呼吸は、酸素と二酸化炭素の交換を肺で行いますが、空気を出し入れするためには肺の容器である胸郭(背骨、肋骨、胸骨で構成される)を大きく動かす必要があります。

なるべく胸郭を固くさせないようにストレッチやマッサージをしましょう。

#胸郭伸展(順次動画・静止画追加します)

#胸郭回旋(順次動画・静止画追加します)

#呼吸介助(順次動画・静止画追加します)


肺を最大に膨らませる

呼吸筋の筋力低下により、深呼吸が難しくなり、肺のすみずみまで空気を入れて膨らますことができなくなる場合があります。
その場合は主にバッグバルブマスク(アンビュー社が有名なためアンビューバッグと呼ばれることが多い)を使用し、自分で吸える量(肺活量)以上の空気を押し込むことで肺を最大まで膨らませる方法があります。
この方法によって測定できる換気量を最大強制吸気量(Maximum Insufflation Capacity: MIC)と呼ぶことから、MIC練習と呼んでいます。

注意事項

MIC練習を始める前に必ず主治医に相談してください。体調により行ってはいけない場合があります。

#VC測定⇒MIC測定(順次動画・静止画追加します)

MIC練習は喉を使っての息こらえが必要です。喉をうまく使えなかったり、気管切開をされていることで息こらえができなかったりする場合は、LIC練習が有用な場合があります。
LIC(Lung Insufflation Capacity: LIC)とは、1方向弁を用いたMICのことで、1方向弁が喉の代わりをするため息こらえができない方でも肺を最大まで膨らませることが可能になります。LIC練習は当センターが開発に携わったLIC TRAINER®(紹介URL追加)でも行うことができます。
#LIC測定(順次動画・静止画追加します)

注意事項

LIC練習を始める前に必ず主治医に相談してください。体調により行ってはいけない場合があります。


咳を補助する

1. 咳を補助する

咳は大きく2種類あります。喉が食べ物や痰で刺激されたときに反射的に出る咳と、自分で吐き出したいと思ったとき(随意といいます)にする咳です。反射的な咳を補助することは難しいですが、随意の咳は介助により補助できます。

まず、咳の強さがどの程度あるか測定してみましょう。さまざまな測定器具がありますので、かかりつけの病院で測定できれば確認してみましょう

喘息(ぜんそく)の方によく使用するピークフローメーター(Peak flow meter)を用いることが一般的です。

咳をしたときの値、ピークフローが300L/min以上で「正常」、270L/minを下回ると咳が弱い、160L/minを下回るとかなり咳が弱いと評価され、排痰補助装置や吸引など道具の使用を検討します。

#CPF測定(順次動画・静止画追加します)

咳が弱かった場合、補助する方法を練習しましょう。

そもそも咳は、たくさん空気を吸えば吸うほど、強く息を吐けば吐くほど強くなります。そのため、吸う補助と吐く補助をそれぞれ練習します。

吸う補助は、2番で先ほど説明したMICです。自分の力で吸えるよりも多くの空気を肺に送り込んでから咳をすると強い咳ができます。

吐く補助は、咳のタイミングに合わせて胸郭を押すという方法があります。

注意事項

もともと胸が固いかた、成人の方はバッグを押す力加減に注意が必要ですので、主治医や理学療法士など医療専門職の指導のもと練習してください。

#MIC+咳(順次動画・静止画追加します)

#咳嗽介助(順次動画・静止画追加します)

これらの介助でもうまく咳の補助ができない場合、排痰補助装置(Mechanical In-Exsufflator: MI-E)が適応かどうか

主治医に相談しましょう。ただし、使用には制限がありますので注意が必要です。

#MI-Eの写真(順次動画・静止画追加します)

参考文献
日本リハビリテーション医学会.  神経筋疾患・脊髄損傷の呼吸リハビリテーションガイドライン策定委員会. 金原出版. 2014.

生活のQ&A集

当院リハビリテーション部には、幼児期から定期的に多くのデュシェンヌ型筋ジストロフィー(以下、DMD)の方が通院されています。現在、これまで蓄積してきた情報を、いくつかのテーマに分けてまとめる取り組みをしています。

ひとりひとり、身体状況、個性、環境が違いますが、ご活用いただければ幸いです。

今後も随時更新していく予定です。

小学校生活について.pdf

高校進学について.pdf

車椅子について.pdf

就労について.pdf