
パーキンソン病への対応
パーキンソン病の患者さんが、ご自宅で出来る効果的なストレッチやトレーニング方法を紹介しております。一つの動画が約5分~10分程度になっていますので、一緒に行ってみましょう。
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はじめに
パーキンソン病とはアルツハイマー病に次いで2番目に多い神経変性疾患で、60歳以上になると約100人に1人がこの病気になると言われています。脳のドーパミンが不足することで前傾姿勢になりやすく、振戦(ふるえ)、筋強剛(筋肉が硬くなる)無動(動きが小さく遅くなる)、姿勢保持障害(転びやすくなる)といった症状が出現します。
そして、多くの方が廃用症候群を合併しています。
廃用症候群とは、別名生活不活発病とも呼び、身体を動かす機会が減ることで様々な症状が出現することを言います。関節が固くなる、筋力低下、骨萎縮、床ずれなどが代表的ですが、心肺機能の低下や食欲不振、便秘、脱水、といった内臓の症状や自律神経機能の低下や気持ちの落ち込み(うつ)などの症状も出現すると言われています。そのため、身体を動かすことが重要な対応になります。
動画では、パーキンソン病の患者さんが、ご自宅で出来る効果的なストレッチやトレーニング方法を紹介しております。
運動動画は約5分~10分程度の長さになっていますので、一緒に行ってみましょう!
姿勢について
姿勢をよくする!!~背筋を伸ばして、大きくひねる~
姿勢をチェック
背筋を伸ばす!!
体をひねる 左右10回づつ
うつ伏せで股関節のストレッチ!!
※ご家族のお手伝いが必要です。
最後に姿勢の確認!!
ストレッチの強さは「イタ気持ちいい」を目安に行ってください。高齢のかたや骨粗鬆症をお持ちの方、背骨など関節に変形があると指摘を受けた方は特に注意しながら実施してください。
①姿勢をチェック
ご家族にお願いして写真を撮影
②背筋を伸ばす!!
1)布団やベッドに仰向けになりバンザイ姿勢をとって脱力する。60秒
2)腰の下に枕を入れてバンザイ姿勢 60秒
3)背中の下に枕を入れてバンザイ姿勢 60秒
③体をひねる 左右10回づつ
1)右横向きになり左の股関節と膝関節を90度に曲げ、肘をのばして両手を合わせる
2)左腕を伸ばしたまま反対にひねり上半身を天井に向けていく
3)左横向きになり左の股関節と膝関節を90度に曲げ、肘をのばして両手を合わせる
4)右腕を伸ばしたまま反対にひねり上半身を天井に向けていく
④うつ伏せで股関節のストレッチ!! ※ご家族のお手伝いが必要です。
1)うつぶせになる
2)膝を床から浮かせるようにストレッチ 30~60秒
3)膝を曲げるようにストレッチ 30~60秒
⑤最後に姿勢の確認!!
ご家族にチェックしてもらうか、もう一度写真を撮って姿勢がどうなったのか確認してみましょう。
立ち上がり動作
立ち上がりをスムーズに!!~重心の移動を意識して~
立ち上がり
椅子からの起立・着座動作のコツとトレーニングを紹介します。椅子からの立ち上がろうとしても椅子からお尻が動ない、一度立ってもすぐに尻もちをつくように戻ってしまうという経験ありませんか。起立・着座動作にもコツがあります。①起立する前の座っている姿勢、②体を曲げる相(重心の前方移動)、③体を伸ばす相の3つのポイントを意識してトレーニングをしてみましょう。
①スタートの座位姿勢を作る
1)浅く座る
2)足を引く
3)体の横の椅子に手を置く
②重心の前方移動 ※スキーのジャンプを意識したように前方へ体を傾ける
1)手で座面を押して、胸と膝を前下方に倒す
2)座面からお尻が浮いて、足の裏に体重を移動させる
3)完全に座面からお尻が離れたら、膝と身体を伸ばして立位になる
③起立訓練×10回
10回連続して、キレイな立ち上がり方が出来たら合格です!!余裕がある方は10回と言わず、回数を増やして行ってください!!
歩行について
大きく足を出し、後ろの足でしっかり蹴りましょう!!
パーキンソン病の特徴的な歩行の共通点とは
姿勢を正して「大きく足を出し、後ろの足でしっかり蹴りましょう!!」
ご自宅での歩く練習
パーキンソン病の歩行では、小刻み歩行や加速歩行、すくみ足といった歩行が有名です。これらの歩行は転倒につながるため、対策をとっておきたい、とても重要な課題です。
いくつか共通する特徴があります。まず、これらの異常歩行にみられる特徴を理解して、すくまない、加速しない歩き方を身につけましょう。
①パーキンソン病の特徴的な歩行の共通点とは
■前かがみの姿勢
■前足部荷重(爪先に体重がかかる)
■歩幅が狭くなる点です。
歩行中に、このような様子が出てこないように、注意して歩いてみましょう。
②姿勢を正して「大きく足を出し、後ろの足でしっかり蹴りましょう!!」
そして振り出した足は踵から地面に着けるようにして下さい。
③ご自宅での歩く練習
ベッドからリビングなど、普段から移動する場所でスタートとゴールを設定して、大股で歩いてみましょう。1回目に歩いた歩幅を覚えておいて、2回目は少ない歩数で到達でき両に、さらに大きく歩いてみましょう。
良い歩きが出来た時の歩数を覚えておくと、ご自身が小股になっていないか?もしくはトレーニングの効果が出てきているのかどうかなどの確認もできます。
すくみ足について
生活環境の調整
パーキンソン病の代表的な歩行障害に「すくみ足」があります。すくみ足は転倒の引き金になるだけでなく、歩くことに不安を感じさせ、生活の質を低下させる原因となります。
生活環境設定の方針には大きく2つの考え方があります。
それは、「すくみ足の出現を少なくする設定」と、「すくみ足が出たとしても転倒しない設定」です。言葉は似ていますが、どちらの設定を優先するかで、まったく別の生活環境設定になる事があります。この項目では、「すくみ足の出現を少なくする設定」ついてご紹介させて頂きます。
すくみ足の対策について
すくみ足が出現しやすい場所や動作など条件には特徴があります。皆さんそれぞれの特徴を理解して、「すくみポイント」を減らして歩きやすい環境を作りましょう。
出やすくなる条件 | 出にくくなる条件 |
・歩きはじめ ・方向を変えるとき ・狭い所を歩くとき ・目的の場所に近づいたとき ・歩くことから注意がそれた時 ・焦っているとき ・困ったり迷ったりしているとき ・転倒の不安を感じているとき ・オフの体調で動きにくいとき |
・横歩き ・大股で歩けているとき ・踵から床に足をつけて歩けているとき ・広いスペース ・歩きに集中できているとき ・時間に余裕があるとき ・目印やなどの印があるとき ・自信があるとき ・オンで体調がよいとき |
まず床に物が落ちている物を片付けたり、家具を移動して狭い場所を減らしたりすることから始めてみましょう。
具体的な対応例
①椅子の検討

肘置きのある椅子では方向転換しないと座れないため 肘置きのない椅子に変更する事で、横から座ったり立ったりできるように工夫します
②引き戸の工夫

難しいステップを行わずに済む位置に印をつけ、ドアの開閉時の迷いを減らす設定です。
③方向転換が必要な狭い場所の工夫の一例

ステップの印をつけることで、足を出す事に集中しやすくなります。
④動き始めの工夫

歩き出す足や、つかまる場所を決める事で迷いが減り、すくみ足の解消につながります。