処方薬の睡眠・覚醒への影響

処方薬の睡眠・覚醒への影響

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はじめに

2021/12/24

文責:伊豆原 宗人

 

 不眠や過剰な眠気などの睡眠・覚醒の問題は、体の病気の治療に伴って現れることがあります。今回のコラムでは、主に精神科以外で処方される薬によって引き起こされる可能性のある睡眠・覚醒障害について、お話をしていきたいと思います。

☆お願い☆
 睡眠・覚醒の問題が処方薬によるものか、処方の対象となった病気によるものか、判断が難しい場合が多く、病気そのものの治療によって眠気や不眠が改善されることもあります。また、病気の治療のために薬の作用で軽度の不眠や眠気が生じても、服用を続ける必要性が高い場合も無いとは言えません。眠気や不眠でお困りの際は、自己判断で服薬中断するのではなく、必ず主治医にご相談ください。

このコラムの内容

このコラムの内容

1.処方薬の成分と睡眠・覚醒への影響

2.睡眠障害を引き起こす代表的な薬剤

3.おわりに

1.処方薬の成分と睡眠・覚醒への影響

1-1 覚醒の増強・減弱作用

 覚醒を促す成分として、ヒスタミン、ノルアドレナリンなどがあります。抗ヒスタミン薬は、この成分の働きを弱めることで眠気を生じます。ステロイドは、この成分の働きを強め、不眠の原因となる場合があります。

1-2 睡眠の減弱作用

 睡眠を促す成分としてはアデノシンなどがあります。カフェイン、気管支拡張薬(テオフィリン)などは、この作用を弱めることで不眠の原因となる場合があります。


2.不眠や眠気を引き起こす代表的な薬剤

 上記のような成分が含まれる処方薬には、以下のような薬があります。

☆一部にはなりますが、商品名ではなく一般名(処方薬の成分名)で記載します。

分類 一般名 症状
抗アレルギー薬 ジフェンヒドラミンなどの抗ヒスタミン薬 眠気
副腎皮質ステロイド プレドニゾロンなど 不眠
気管支拡張薬 テオフィリン 不眠
抗てんかん薬 バルビツールなどのGABA受容体作動薬、バルプロ酸、カルバマゼピン、ラモトリギン、レベチラセタム など 眠気
パーキンソン病治療薬 レボドパ、プラミペキソール(ドパミン受容体刺激薬)など 眠気、不眠

参考文献
1) 坂根直樹,薬剤と睡眠障害,成人病と生活習慣病48巻8号936-940
2) Van Gastel A. Drug-Induced Insomnia and Excessive Sleepiness. Sleep Med Clin. 2018 Jun;13(2):147-159. doi: 10.1016/j.jsmc.2018.02.001. Epub 2018 Mar 28. PMID: 29759266.


3.おわりに

 本コラムで紹介したもの以外にも、様々な処方薬によって夜間の不眠や日中の眠気は生じますが、その処方がなされる元になった身体疾患によっても不眠や眠気は生じる場合があります。薬剤の追加や変更後に不眠や眠気等が生じた場合は、主治医と相談してみるとよいでしょう(自己判断での減薬・中断はせず、必ず主治医と相談しましょう)。それでも改善しないという場合は、他の睡眠障害が隠れている可能性もありますので、ぜひ一度当院の睡眠障害外来へご相談ください。