眠りと目覚めのQ&A②:お昼寝と生活リズム

眠りと目覚めのQ&A②:お昼寝と生活リズム

  1. TOP
  2. NCNP病院について
  3. 眠りと目覚めのコラム
  4. 眠りと目覚めのQ&A②:お昼寝と生活リズム

2022/11/25

普段の生活でよく遭遇する眠りと目覚めに関する疑問やお困りごとに、睡眠の専門家がお答えします。

Q2.

4歳の子どもについて相談です。保育園ではお昼寝をしていますが、家ではお昼寝をしないことも多く、もう少しでお昼寝を卒業できそうな気がします。寝つきはもともと悪いのですが、保育園がある日はさらに夜寝るのが遅くなってしまい、朝はなかなか起きてくれません。どうしたらよいでしょうか?

A2.(回答者 福水道郎)

 イギリスでの調査ではありますが、4歳でのお昼寝の平均時間は15分未満1(図)という報告もあります。寝つきが悪いのであれば、もうお昼寝は卒業してよい可能性があります1。保育園でのお昼寝の時間は無理に寝かせず、眠らなくても静かに過ごすことが許容されるよう、保育士さんにお願いしてみても良いのかもしれません。お昼寝を卒業することで、さらに夜の寝つきはよくなり、夜間の睡眠の質は上がり、夜間の睡眠時間も十分確保され、朝の寝起きも良くなる可能性があります2。さらに、このお子さんでもQ1の回答を参考にされるとよいと思います。

 ただし、生後早くから早寝ができない場合には考えなくてはならないことがあります。特に乳幼児では母親のクロノタイプ(朝型もしくは夜型:ある個人が1日の中でどの時間帯に最も活動的になるかを示した時間帯特性)の影響を強く受けることがわかっています。母親が朝型だと、子どもも朝型になりやすく寝つきが良い一方で、母親が夜型だと子どもは夜型になり、寝つきが悪く、自分で起きられないことが多いことから3、養育者・親、特にお母さんの生活リズムやしつけがお子さんの睡眠・覚醒リズムに大きな影響があると考えられています4。このお子さんの場合も、お母さんの生活リズムに影響され、子ども自身が本来持っているクロノタイプとの乖離が睡眠の質の低下、寝つきと寝起きの悪さを引き起こしているのかもしれません。また、当初は些細な睡眠の問題と考えられても、それがきっかけとなり、もっと大きくなってから対応が困難な問題に発展する可能性が指摘されています。

 もしもご家族、ご両親、特にお母さんが夜型の生活をされているとすれば、お子さんも夜型の生活になる可能性は高まります。お子さんだけの生活リズムや睡眠を改善させようと思うのではなく、ご自身やご家族の生活習慣・食行動・生活リズムを見直してみるよい機会かもしれません。


参考文献
1. Blair PS, Humphreys JS, Gringras P, Taheri S, Scott N, Emond A, Henderson J, Fleming PJ. Childhood sleep duration and associated demographic characteristics in an English cohort. Sleep. 2012 Mar 1;35(3):353-60. doi: 10.5665/sleep.1694.
2. Ward TM, Gay C, Anders TF, Alkon A, Lee KA. Sleep and napping patterns in 3-to-5-year old children attending full-day childcare centers. J Pediatr Psychol. 2008 Jul;33(6):666-72. doi: 10.1093/jpepsy/jsm102.
3. Morales-Muñoz I, Partonen T, Saarenpää-Heikkilä O, Kylliäinen A, Pölkki P, Porkka-Heiskanen T, Paunio T, Paavonen EJ. The role of parental circadian preference in the onset of sleep difficulties in early childhood. Sleep Med. 2019 Feb;54:223-230. doi: 10.1016/j.sleep.2018.10.039
4. 服部 伸一, 足立 正 幼児の就寝時刻と両親の帰宅時刻並びに降園後のテレビ・ビデオ視聴時間との関連性 小児保健研究 2006: 65(3):507-512