脊髄性筋萎縮症

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脊髄性筋萎縮症とは

脊髄前角にある運動神経細胞の変性がおこり、進行性に筋力低下、筋萎縮を呈する運動神経疾患です。運動症状の程度は乳児期早期に発症する重症型から、健康な方とほぼ同様の生活をおくられる型まで、程度は多岐にわたります。一般に、認知機能への影響はありません。
病型にもよりますが、これまでの治療は、筋力症状に対するリハビリテーション、呼吸合併症に対する呼吸管理、栄養学的合併症に対する咀嚼、嚥下の補助、経管栄養といった対症療法が主な治療でした。しかし近年では、遺伝子に対する新しい治療薬も出てきており、病型や症例によっては、劇的な改善を認める例もあります。少しでも疑いがあった場合には、早めに専門機関に相談することがすすめられる疾患となっています。

脊髄性筋萎縮症の症状

体幹、四肢の近位優位の筋力低下、筋萎縮を示す運動神経疾患で、一般には知的な異常は伴いません。症状の重症度により下記のように4つのタイプに分類されます。

I型:重症型、ウェルドニッヒ-ホフマン(Werdnig-Hoffmann)病
生後数週間で、急激に運動機能の低下を認めます。通常、生後6カ月までに発症してきます。呼吸筋の筋力低下のため呼吸不全を呈し、人工的な呼吸補助療法が必要となります。また嚥下障害も認め、胃瘻、経管栄養も必要となります。

II型:中間型、デュボビッツ(Dubowitz)病
運動発達のなかで、お座りは可能ですが、支えなしでの起立、歩行はできないタイプです。通常、1歳6カ月までに発症します。より重症な症例では感冒に伴い呼吸不全を呈してくることがあります。また側彎などを含む関節拘縮も認めます。

III型:軽症型、クーゲルベルグ-ウェランダー(Kugelberg-Welander)病
歩行はできるようになりますが、次第に転びやすい、歩けない、立てないといった運動症状が出てくるタイプです。発症は1歳6カ月以降に発症することが多いですが、運動症状には個人差が大きいです。

Ⅳ型:成人期以降発症

成人期以降に発症してくるタイプです。軽度の筋力低下が主たる症状で、認知機能、呼吸器症状や消化器症状は認めません。III型と同様に症状に個人差が大きく、臨床的な重症度は多様です。

脊髄性筋萎縮症の診断

運動発達の遅れ、筋力低下から疑います。診断にあたっては、神経学的な診察のほか、採血、神経伝導検査、筋電図検査、筋MRI検査などが行われます。これらで脊髄性筋萎縮症がより疑わしいと判断した際に、遺伝学的検査を行います。遺伝学的検査は、運動神経の働きに不可欠なSMN (survival motor neuron) タンパク質に対する遺伝子であるSMN1の欠失を確認します。

脊髄性筋萎縮症の治療

病型により症状は多様です。一人一人の疾患経過にあった治療介入が必要となります。これまでは、筋力低下の症状に対するリハビリテーション、呼吸合併症に対する呼吸管理、栄養学的合併症に対する咀嚼、嚥下の補助、経管栄養といった対症療法が主な治療でした。近年では、脊髄性筋萎縮症治療薬としてヌシネルセンナトリウム髄注が承認され、投薬されるようになり、劇的な改善を認める例もあります。

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