
脳神経小児科
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診療内容・特色
当院の脳小児神経科では、小児の中枢神経、脊髄、末梢神経、筋疾患といった神経疾患および発達障害を主として診療し、高度な専門的医療を提供しています。詳細な病歴聴取に始まり、精密な神経学的診察、必要な検査を行い、正確な診断を確定します。正確な診断にもとづき、一人一人に対応した最新医療を提供しております。
てんかんでは、初発の方から難治の方まで、最新かつ豊富な経験により、薬物治療や、手術治療の適応を判断します。小児でのてんかん治療、てんかん手術症例は国内随一です。筋ジストロフィー、筋炎、脊髄性筋萎縮症や末梢神経障害では、筋生検や電気生理検査から診断を行い、免疫療法を含む治療、治験を広く行っています。希少な遺伝性神経疾患では遺伝子診断を行い、最新知見を提供しています。
小児神経科の全領域において最新の臨床研究を行い、また常に国際的な最新情報にも目を向けて診療を行い、日本トップレベルの診療を行っております。
また、小児期に発症したてんかんや神経・筋疾患、神経難病の患者さんが、適切な成人期の医療を受けられるように移行期医療にも力を入れています。
スタッフ紹介
佐々木 征行
役職
脳神経小児科診療部長
経歴
新潟大医 昭和58年卒
専門分野・資格
小児科学会専門医
小児神経学会専門医
身体障害者福祉法指定医
重症心身障害学会理事
東北大学客員教授

中川 栄二
役職
特命副院長
外来部長
てんかん診療部長
総合てんかんセンター長
経歴
筑波大医 平成元年卒
専門分野・資格
小児科学会専門医
小児神経学会専門医
てんかん学会専門医・指導医
臨床遺伝専門医
小児精神神経学会認定医
こどもの心相談医
臨床薬理学会指導医
身体障害者福祉法指定医
(肢体不自由・呼吸機能・ぼうこう又は直腸障害)
ICT(infection control doctor)小児神経学会理事
てんかん学会理事
重症心身障害学会理事
ADHD学会理事
日本てんかん協会理事

小牧 宏文
役職
TMC(トランスレーショナル・メディカルセンター)センター長
病院臨床研究・教育研修部門長
筋疾患センター長
経歴
熊本大学医学部 平成2年卒
専門分野・資格
小児科学会専門医
小児神経学会専門医
臨床薬理学会指導医
身体障害者福祉法指定医
小児神経学会評議員

齋藤 貴志
役職
脳神経小児科医長
経歴
筑波大医 平成11年卒
専門分野・資格
小児科学会専門医
小児神経学会専門医
てんかん学会専門医
身体障害者福祉法指定医
小児神経学会評議員
てんかん学会評議員

本橋 裕子
役職
脳神経小児科医長
経歴
横浜市大医 平成12年卒
専門分野・資格
小児科学会専門医
小児神経学会専門医
てんかん学会専門医
身体障害者福祉法指定医
小児神経学会評議員
てんかん学会評議員

竹下 絵里
役職
脳神経小児科医長
経歴
獨協医大 平成15年卒
専門分野・資格
小児科学会専門医
小児神経学会専門医
臨床遺伝専門医・指導医
身体障害者福祉法指定医
小児神経学会評議員

住友 典子
役職
脳神経小児科医師
経歴
神戸大医 平成19年卒
専門分野・資格
小児科学会専門医
小児神経学会専門医
てんかん学会専門医
身体障害者福祉法指定医

馬場 信平
役職
脳神経小児科医師
経歴
東京医科歯科大医 平成19年卒
専門分野・資格
小児科学会専門医
小児神経専門医
てんかん学会専門医
身体障害者福祉法指定医
小児神経学会評議員
てんかん学会評議員

山本 薫
役職
脳神経小児科医師
経歴
大分大学医 平成26年卒業
専門分野・資格
小児科学会専門医
併任 後藤雄一 MGC(メディカル・ゲノムセンター)長
非常勤 埜中征哉名誉院長、須貝研司医師、福水道郎医師
学会研修施設:小児神経学会研修施設、てんかん学会研修施設、臨床遺伝専門医研修施設、臨床神経生理学会認定施設
診療実績
2021 | 2020 | 2019 | |
---|---|---|---|
入院患者数 | 1455 | 1,410 | 1,361 |
レスパイト入院数 (上記に含まない) | 349 | 333 | 443 |
外来での初診のお子さんは年間700名前後で、小児神経を専門とするスタッフが外来診療にあたっています。そのなかで、より詳しく調べた方がよいと判断したお子さんに対しては、入院での検査、治療も行っています。小児神経科の7名のスタッフと10名以上のレジデントとともに、年間1500名前後のお子さんの診療を入院で行っております(レスパイト入院を除く)。
診療疾患について
脳神経小児科では下記のような疾患の方の診療を主に行っております。
てんかん症候群の診断、薬物治療、てんかん外科の手術適応評価、術後管理
【対象疾患】
West(ウエスト)症候群、大田原症候群、早期ミオクロニー脳症、結節性硬化症、Sturge-Weber(スタージー・ウェーバー)症候群、Rasmussen(ラスムッセン)症候群、大脳皮質形成異常、視床下部過誤腫、片側巨脳症、グルコーストランスポーター1欠損症、進行性ミオクローヌスてんかん、Lennox-Gastaut(レノックス・ガストー)症候群、Doose(ドゥーゼ)症候群、Dravet(ドラベ)症候群、小児・若年欠神てんかん、若年ミオクロニーてんかん、など全ての小児てんかん
てんかんは小児神経疾患中で最も多い病気であり、正確な診断と適切な薬物治療が大切です。脳神経小児科では、長時間脳波記録、ビデオ脳波同時記録、種々の画像診断(MRI、SPECT、PET)、MEG等による的確な診断を行います。検査結果をもとに、発作型とてんかん症候群の正確な診断を行い、抗けいれん剤の臨床薬理に基づいた治療方針を立てます。とくに、けいれん発作が難治で複数種の抗てんかん薬の治療にも関わらず、けいれん発作が止まらないお子さんに対して、あらためて評価をしなおし、外来や、時には入院での薬剤調整も行っています。また薬物治療だけでなく、脳神経外科と連携して外科治療にも積極的に対応しており、難治なてんかんに対する手術療法を実施し、発作症状が劇的に改善する方もおられます。乳幼児期、小児期の手術治療に際しては、小児神経科医が多い特徴を生かし、きめ細かな術前術後管理を行っております。
神経筋疾患の診断、治療
【対象疾患】
筋ジストロフィー、先天性ミオパチー、ミトコンドリア病、代謝性筋疾患(糖原病)、皮膚筋炎、免疫介在性壊死性ミオパチー、重症筋無力症、先天性筋無力症、脊髄性筋萎縮症、シャルコーマリートゥース病、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)、ギランバレー症候群(GBS)、周期性四肢麻痺、など
筋疾患は比較的まれな病気ではありますが、私たちは専門施設として筋疾患の新規の患者さんの診察を年間100名以上お受けしており、筋生検も年間40例ほど行っています。まずは正確な診断を行うことが重要かつ最初のステップとなります。十分に説明させていただいたうえで遺伝子診断や筋生検といった確定診断につながる検査を行っています。診断後のケアにも力を入れています。筋疾患の多くはゆっくりと進行し、現在でも根本的な治療法のない難しい病気ではあります。しかし、理学療法、呼吸リハビリテーション、非侵襲的換気療法(鼻マスク人工呼吸)、デュシェンヌ型などの場合のステロイド療法などの支持療法は少しずつ確実に進歩しています。疾患の存在を早く前向きにとらえ、遺伝子治療や再生医療が実現可能な時代に備えた、先を見越した診療、ケアを受けることは非常に重要です。そのような援助も私たちの使命と考えています。
末梢神経疾患は、脊髄や大脳といった中枢神経と筋肉をつなぐ末梢神経が侵される疾患です。症状は筋力低下がみられることが多く、感覚の異常が見られることもあります。いろいろな原因で生じますが、遺伝性ニューロパチーなどの先天的に末梢神経を作っているタンパク質の合成に問題がある疾患や、免疫が関係している多発神経炎といったものが代表的な疾患です。診断には末梢神経伝導検査や筋電図などの電気生理的検査や画像検査が有用ですが、特に電気生理的検査について習熟している小児科医は極めて少ないと思います。私たちは多数の患者さまの経験を生かして、複数の検査を組み合わせてできるだけ正確な診断ができるように最善をつくしています。必要があれば末梢神経生検(足の踝の部分の神経を見せていただきます)による病理診断を行っています。
当院ではチーム医療を心がけており、小児神経科・神経内科・外科・リハビリテーション科・神経研究所の間で連携をとりながら診療を行っています。遺伝に関するご相談もお受けしています。出生前診断に関しては当院にある遺伝カウンセリング外来で相談していただくことをおすすめしています。
ジストニア、ミオクローヌス、アテトーゼなど不随意運動症の診断、治療
【対象疾患】
瀬川病、小児交互性片麻痺、発作性運動誘発性舞踏アテトーゼ、など
ジストニア、ミオクローヌス、アテトーゼなど、自分自身の意思とは関係なく、勝手に運動動作が起こってしまう運動異常症を不随意運動と言います。このような運動異常をきたす疾患には、瀬川病などの遺伝性疾患の他に、周産期障害、脳血管障害、脳炎後遺症や変性疾患など多くの中枢神経疾患でも起こってきます。小児の運動異常症は成人と異なる病態があり、適切な診断を行うことが適切な治療に結びつきます。詳細な神経学的診察に加え、表面筋電図、事象関連電位といった解析を行い、病態の把握に努めています。そのうえで、薬物治療、ボツリヌス療法、リハビリテーションによる治療を行っています。
小児期発症稀少難病の診断、治療、包括的ケア
【対象疾患】
染色体異常症、Prade-Willi(プラダ・ヴィリ)症候群、Angelman(アンジェルマン)症候群、Miller-Dieker(ミラー・ディーカー)症候群、Sotos(ソトス)症候群、Kabuki(カブキ)症候群、RAS/MAPK症候群(Noonan症候群)、Rett(レット)症候群、Joubert(ジュベール)症候群および関連疾患、Dandy-Walker(ダンディー・ウォーカー)症候群、全前脳胞症、中隔視神経異形成、裂脳症、リソゾーム病(GM1ガングリオシドーシス、GM2ガングリオシドーシス、ムコ多糖症、など)、神経セロイドリポフスチノーシス、副腎白質ジストロフィー、大脳白質形成不全、脊髄小脳変性症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、Pelizaeus-Merzbacher(ペリツェウス・メルツバッハー)病、Cockayne(コケイン)病、など
運動・知的の発達に遅れのある疾患は多岐にわたり、その原因は、稀少難病とよばれる非常に稀な疾患であることもめずらしくありません。しかしながら、丁寧な診察を行い、血液検査、画像検査、生理学的検査での特徴的な所見から診断にいたる方がたくさんおられます。当科には、診断を行うために必要な多くの経験、知識が蓄積されています。診断が確定した方の中には、治療につながる疾患もありますので、正確な診断をすることはとても大事です。当科では神経研究所等の協力機関とともに、遺伝子診断にも取り組んでいます。また未診断希少疾患診断プログラム(IRUD)にも参加しています。
免疫性神経疾患の診断、治療
【対象疾患】
多発性硬化症、視神経脊髄炎、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、ギランバレー症候群(GBS)、重症筋無力症、ラスムッセン脳炎、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、など
細菌やウイルスなどの病原体から体を防御する働きのことを「免疫」と呼びます。本来免疫反応は体にとって有益なものですが、時にこれが誤って自分の体を攻撃してしまい(自己免疫)、激しい免疫応答の結果として神経障害を引き起こしてしまう場合があります。このようなメカニズムで起こる神経の病気を「免疫性神経疾患」と言います。小児では様々な免疫性神経疾患が知られています。上記の代表的な疾患の他、原因不明のてんかんや不随意運動などにも関係している場合もあります。このような病態で引き起こされる疾患では、免疫反応を調整する治療の有効性が確立されています。当院ではこれらの免疫性神経疾患に対し、MRIなどの画像診断や神経生理学的検査、さらに免疫学的検査などにより診断し、ステロイドパルス療法、ガンマグロブリン大量療法などの専門治療を行っています。
また、小児の急性脳炎・脳症は主に感染症に伴って意識レベルの低下やけいれんが起こる病気で、しばしば重大な脳の後遺症を残します。インフルエンザ脳症が有名ですが、免疫異常によって起こる場合もあることがわかってきています。症状としては意識障害やけいれんの他に、辺縁系脳炎というタイプでは精神症状、記憶障害、不随意運動、睡眠障害なども見られます。当院では急性脳炎・脳症後の患者さんの評価や、難治な脳炎・脳症後てんかんの治療にも取り組んでいます。さらに、原因不明の脳炎・脳症に関するセカンドオピニオン外来も設けております。
神経難病、てんかん、神経筋疾患の移行期医療
「移行期医療」とは、小児期発症疾患をもつ患者さんが成人期に向かうにあたり、小児期医療から個々の患者さんに最適な成人期医療へ移っていくことを指します。移行期の患者さんでは、保護者や小児科医のもとで行われてきた医療から、自己決定権を持って診療を受けるという本人と医療との関係性の変化、妊娠出産などへの対応、成人期特有の合併症に対する診療など医療へのニーズも変化していきます。
移行期医療に該当する患者さんに対しては、1完全に成人診療科へ移行する、2小児科と成人診療科の両方にかかる、3小児科に継続して受診する、といった選択肢があります。NCNP病院では、脳神経小児科が主体となり、神経難病のある患者さんのニーズに合わせた移行期医療を提供するとともに、医療的にはどの選択肢が最善かのアドバイスを行いながら,患者さんとご家族の自己決定の支援していきます。
睡眠障害の診断と治療
睡眠に関連した病態には、ナルコレプシー(過眠や情動脱力発作)、むずむず足症候群などがあります。睡眠ポリグラフ検査や脳波、頭部MRIなどで睡眠障害の原因を適切に評価し治療に結びつけます。
発達障害の診断、治療
【対象疾患】
自閉スペクトラム症、注意欠如多動症、(ただし学習症、学習障害は除きます)
自閉スペクトラム症、注意欠如多動症の神経発達症(発達障害)の患者さんに対しては、神経心理学的検査のほか、必要により神経生理学的検査、画像検査などの検査、診断を中心に診療を行っています。患者さんの状態によっては、中枢神経刺激薬(注意欠如多動症)など内科的の治療を行うことがあります。
重症心身障害児のレスパイト入院、包括的ケア
重症心身障害児(者)の生活の質(QOL)の向上を目指しています。入院中のお子様の療育だけでなく、在宅障害児の支援のために一時入所を行い、レスパイトケアにも積極的に取り組んでいます。また、原因診断、機能評価、合併症の評価と治療を積極的に進め、重症心身障害児の方がより心地よく過ごされるような診療を行っております。
周産期神経疾患の包括的ケア
胎児から新生児への時期に生じる周産期障害に対しては、ハイリスク児を早期に発見し、早くから発達促進のための治療を開始します。発達外来を行い、胎児期・周産期脳障害の治療を目指しています。