CPAPのトラブルシューティング

CPAPのトラブルシューティング

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はじめに

文責:三好 智佳子
2021/3/1

前回のコラムでは、睡眠時無呼吸の診療についてお話しました。
今回は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の治療のひとつである持続陽圧呼吸(CPAP)療法を始めた方が経験することの多い問題とその解決策についてお話します。

前回のコラムはこちら

CPAPを装着することに関する悩み

Q. CPAPをつけると苦しくてなかなか眠れません。
 どうしたら使えるようになりますか?

A. はじめはCPAP圧やマスクの違和感に慣れるまでに時間がかかる方もいらっしゃいます。OSAの方は鼻呼吸に慣れていない場合もありますので、まずはマスクをつけて鼻呼吸の練習をしてみましょう。それに慣れてから、日中に10分程度CPAPを装着することを繰り返し、慣れてから夜間に使用してみるという方法もあります。慣れるためなので、練習でもできるだけ毎日行う方が良いです。
また、慣れないからと1~2か月であきらめず、じっくり取り組んでいきましょう。CPAPに慣れるまでの期間は個人差がありますが、3~6か月ほどかかることもあります。

Q. CPAPをつける前に寝落ちしてしまいます。
 何か良い方法はありますか?

A. 布団に入る前の準備にCPAPも入れましょう。寝衣に着替える、歯磨きをする、など普段布団に入る前にしている習慣行動にCPAPのマスク装着も入れてしまいましょう。
就寝準備の前に寝落ちした場合、お手洗いなどで途中に目が覚めた時からでも良いので、就寝準備とCPAPの装着をしてまた眠りましょう。
どうしてもCPAPをつけ忘れたまま朝まで寝てしまうことが多い場合は、マスク装着が習慣化するまで、目覚まし(アラーム)を習慣的に寝落ちする後の時刻に設定して目を覚ますようにし、途中からでもCPAPを使用する日を増やしましょう。
途中で目覚めてからCPAPを使用しても、毎日4時間以上使えると、心血管疾患や脳血管疾患、生活習慣病等の予防効果があると言われています。

Q. 元々寝つきが悪いのに、CPAPのせいで余計に寝つけません。
 どうしたら良いでしょうか?

元々寝つきにくいのに、慣れないCPAPの圧やマスクの違和感でさらに寝つきにくくなってしまいますよね。寝つけない時間が長くならないよう、眠気が出てからCPAPを装着して布団に入るようにしましょう。
CPAP使用開始から20~30分経っても寝つけない日が続く場合は、主治医へ相談してみてください。
CPAPに慣れるまでCPAP圧を低くするなどの対処が可能な場合があります。

Q. CPAPの効果が感じられません。
 装着する意味はあるのでしょうか?

A. CPAP療法の目的は、自覚症状の改善だけではなく、心血管疾患や脳血管疾患、生活習慣病等の予防という点も重要です。
日中の眠気や起床時のだるさなどの自覚症状がCPAPによって改善したと感じられる方は、CPAPの使用日数が多く、一晩当たりの使用時間が4時間以上であることが多いと言われています。
また、自覚症状の改善が感じられるまでに時間がかかる場合もあります。
できるだけ毎日、眠っている時間はCPAPを使えるようになることを目指しましょう。
それでも上記のような自覚症状が改善しない場合は、主治医に相談してください。

Q. CPAPを使ったらOSAは治りますか?

A. CPAPは対症療法で、根本治療ではありません。CPAPをやめると、多くの方はOSAが再燃します。
アデノイドや扁桃肥大など、気道閉塞の原因が明らかな場合では、それらの切除によってOSAが改善する場合がありますが、耳鼻咽喉科での手術が必要になります。また、肥満傾向のある方では、減量が有効となる場合がありますが、数㎏程度の減量ではOSAの根本的な改善が得られないことも少なくありません。
多くの方は、長期にわたってCPAPを継続していく必要があります。

CPAPの装着により生じうる問題

Q. CPAPを使うとのどが渇いてしまいます/鼻が痛くなります。
 良い対処方法はありますか?

A. のどの渇きの原因として、CPAP使用中に口を大きく開けて呼吸している可能性があります。鼻マスクの場合、CPAP使用中に開口してしまうと治療効果が減弱してしまいます。この場合は、口唇にテープを貼ることで開口を制限し、口を閉じて鼻呼吸で眠る習慣づけをします。テープが貼れない、はがれてしまうといった場合は、口と鼻を覆うマスクに変更することも可能です。マスクの変更については、主治医に相談してください。

開口を制限する方法として、サージカルテープやいびき対策用のテープがあります。ドラッグストアなどで購入できます。

口と鼻を覆うタイプのマスクの一例です。

また、湿度が低い季節は開口していなくてものどの渇きや鼻の痛みは起こりやすくなります。この場合、寝室の加湿を行うことで改善する場合があります。加湿器をお持ちの方は就寝中も利用し、お持ちでない場合は洗濯物の夜干しやタオルを一枚濡らして寝室に干すことでも効果が期待できます。
CPAP機器に加湿器を装着する方法もありますが、清潔保持のため毎日の洗浄が必要になります。

Q. マスクから出てくる風が冷たいです/チューブの中が結露し水滴が噴出してCPAPが快適に使えません。
 良い対処方法はありますか?

A. CPAPは部屋の空気を取り込んでマスクから気道へ空気を送ります。そのため室温が低いとマスクから出てくる空気も冷たく感じます。また、チューブ内の結露はチューブ内(吐いた息:温かい)とチューブ外(室温:冷たい)の気温差によって生じます。
どちらの場合も、部屋の室温を上げるために暖房器具を使用したり、チューブを布団の中に入れたり、チューブ自体が温まる加温チューブを使用したりすることで、チューブ内外の温度差が少なくなり、不快感が軽減できます。
加温チューブの使用については、CPAP業者のコールセンターに相談してみてください。

Q. CPAPを使うと鼻炎症状(鼻水や鼻づまり)が起こります/花粉症の時期はCPAPが使えません。
 良い対処方法はありますか?

A. CPAPの刺激で鼻炎症状が生じる方が時々いらっしゃいます。鼻炎も花粉症も、薬剤等による治療で症状が軽減すればCPAPを使用しやすくなるので、耳鼻科医もしくは主治医に相談してください。
また、花粉症の場合はCPAP本体に通常設置してあるフィルターではなく、花粉等の取り込みを防いでくれる器具が使える場合があります。CPAP業者のコールセンターへ相談してみてください。
鼻炎症状が強い期間は、CPAPの送気によって鼻水が気道の奥に逆流して不快感が生じますので、CPAPは一時お休みしていただく場合もあります。

おわりに

今回は、CPAP療法でよくある問題とその解決策についてお話しました。
CPAP療法は長期にわたることが多いため、できるだけ快適にCPAPを使用したいですよね。本コラムのQ&Aを参考にしていただき、少しでも不快感が改善できれば幸いです。
また、当院の呼吸器看護外来では患者さんの困りごとをお聞きして、お一人おひとりの生活スタイルに合った対処方法をアドバイスしています。利用を希望される方は、当院の主治医にご相談ください。

次回は、2021年2月20日(土)に開催した睡眠障害センター主催の市民公開講座「新しい生活様式と睡眠・リズム」をテーマにお話する予定です。