睡眠時無呼吸診療について

睡眠時無呼吸診療について

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はじめに

2021/2/4

文責:都留 あゆみ

当院の睡眠障害外来(睡眠専門外来)では、持続陽圧呼吸(Continuous positive airway pressure; CPAP)療法を含む、睡眠時無呼吸の診療を行っています。
今回は、閉塞性睡眠時無呼吸という病気に関するお話と、当院で行っている睡眠時無呼吸の診療について、初診から検査、治療までの流れをお話します。

※「睡眠関連呼吸障害」については、睡眠・覚醒障害研究部のページもご参照ください。

このコラムの内容

このコラムの内容

1.閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)ってどんな病気?

2.OSAの治療について
 2.1.マウスピースによる治療について
 2.2.CPAPによる治療について

3.どんな場合に予約できるの?

4.CPAPと睡眠検査について

5.当院のCPAP診療について

1.閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)ってどんな病気?

「いびきがひどいと家族から文句を言われる」
「寝ているときに、息が止まるらしい」
「夜中に何度も目が覚める」
「長時間寝ても、翌朝すっきり感がない」
「昼間に居眠りを繰り返してしまう」
「最近、血圧が上がってきた」

こんな症状がある方は、要注意です。
寝ているときに、息をしようとしているのに空気の通り道がふさがって、呼吸が止まったり(無呼吸)、呼吸が浅くなったり(低呼吸)する「閉塞性睡眠時無呼吸(Obstructive Sleep Apnea; OSA)」かもしれません。
肥満気味の方に多いOSAですが、日本人などのアジア人は、欧米人に比べて肥満ではない方にも多いと言われています。
もちろん、肥満はOSAの大きな要因になりますが、体型だけではなく骨格や年齢、性別なども関係します。
いびきや息苦しさで目が覚めるなどの症状があれば分かりやすいですが、自覚症状に乏しい場合は気づくまでに時間がかかります。

OSAでは空気の通り道がふさがっています。

重症のOSAを放置すると、心筋梗塞などの心血管疾患、脳梗塞などの脳血管疾患、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病にかかりやすくなり、致死的なイベントを発症する危険性が年々高まることが分かっています。 治療抵抗性の高血圧症患者のうち、64%にOSAが認められたという報告もあります(図1)。 また、OSAはうつ病などの精神疾患がある方では病状の悪化のもとになりますし、日中の眠気や居眠りを伴うことで重大な交通事故や産業事故のリスクも高まります。

当院では、CPAP療法やマウスピース(口腔内装具 Oral Appliance; OA)など、空気の通り道を拡げる治療を行っています。 重度のOSAは、適切に治療をすることで、生活習慣病、心血管疾患、脳血管疾患、精神疾患の悪化のリスクや死亡率を下げることができます。 家族にいびきや無呼吸を指摘された、健康診断で無呼吸が疑われた、検査が必要が相談したいなどありましたら、睡眠障害外来へご相談ください。

図1 治療抵抗性高血圧症の副次的原因

2.OSAの治療について

現時点ではOSAに対して有効性の確立した薬物療法はありません(Gaislら, 2019, Sleep Med Rev.)。しかし、CPAPやOAなどの機器を用いた治療の有効性は極めて高く、適切に使用できれば改善が期待できます。


2.1.口腔内装具(OA)による治療について

OAは下顎を前方に固定するための治療装具(マウスピース)で、寝るときに装着することで空気の通り道を拡げ、OSAによる症状を軽減することができるものです。
この治療を行う場合は、当院の歯科または作製経験があるかかりつけ歯科医院でOAを作製していただきます。
齲歯(虫歯)や総入れ歯の場合など、口腔内の状態や骨格の問題からOAが作製できないケースがあります。

OAでの治療を開始し、一定期間が経過した後で、治療の効果判定のため改めて精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査; PSG検査)を行う必要があります。

OAは歯ぎしり用のマウスピースよりも大きめです。

OAで下顎を前に引き出して固定することで、空気の通り道を拡げます。


2.2.CPAPによる治療について

CPAPは、鼻や口から空気を送り込むことで空気の通り道がふさがらないようにし、睡眠中の無呼吸・低呼吸の出現を予防する治療法です。OAに比べてCPAPの有効性は高く、重症度の高いOSAではCPAPでの治療が優先されます。

検査の結果、CPAP療法の適応が認められた場合、CPAP療法を開始することができます。CPAPの機器を当院から貸し出し、自宅に持ち帰って毎晩使用していただきます。
その後は定期的に受診していただき、治療効果を確認させていただきます。
1か月あたりの診療費(機器レンタル料を含む)は、保険診療(3割負担)で約5,000円/月です。

CPAPを導入する場合は、医師による検査結果・治療方針の説明後に、専門の看護師よりCPAPの使い方、手入れの仕方などの説明をさせていただきます。
次回以降の外来受診時に、適切に使用できているか専門の看護師が確認し、医師の指示に応じて適切に使用、継続できるようになるまで療養指導を行います。療養指導の費用は、保険診療(3割負担)で1回約500円です。

鼻を覆うタイプのマスクの一例です。

CPAPで空気を送り込み、空気の通り道を拡げます。

CPAP機器一式は、専用のバッグに入れてお渡しします。


3.どんな場合に予約できるの?

受診を検討している方は、下記のような状況があると思います。

①OSAを疑う症状があり、検査を含め相談したい
②健康診断等で無呼吸の疑いがあると言われ、精密検査を受けるよう勧められた
③OSAの簡易検査の結果、CPAP療法を開始したが、うまく使えないので相談したい
④すでにCPAPを使用しているが、転居等の事情で通院先を変更したい

基本的には、前回のコラム「睡眠障害外来の流れ」をご参照の上、通常の睡眠障害と同様に初診の予約をとってください。
いずれの場合も、当院の外来で対応可能です。

②~④の場合は、簡易検査または精密検査(PSG検査)の結果や最新のCPAP療法のデータを持参してください。
③の場合、診察上必要性が認められた場合、精密検査(PSG検査)を受けていただくことがあります。詳しくは、担当医とご相談ください。
また、当院で対応していない機器をご使用中の場合、機器の変更をお願いすることがありますのでご了承ください。


4.CPAPと睡眠検査について

当院では、「CPAP療法を続けOSAが良くなっているため、CPAPを中止できるのではないか」というご相談を受けた場合、①CPAPを使用しない状態でPSG検査 を行い、治療継続の要否判断を行います。その場合は、通常のPSG検査の流れと同様になります。
また、簡易検査の結果CPAP療法を開始したものの、「日中の眠気が改善されない」、「夜中に何度も目が覚めてしまう」など、改善効果が十分自覚できない場合、他の睡眠障害が合併していないか②CPAPを使用した状態でのPSG検査 を行うこともあります。
AutoモードでCPAPを使用している方など、「圧が上がりすぎてしまって苦しい」、「自分に最適な圧が知りたい」という場合は、適正圧を探るための③タイトレーションPSG検査 を行うこともできます。この場合は、検査ができる日程が限定されますので、担当医にご相談ください。

②、③の場合は、検査時に普段使用されているご自身のマスクおよび接続ホースをご持参ください。


おわりに

今回は閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と、NCNPの睡眠障害外来における診療の流れについてご説明しました。
OSAは生活習慣病等の発症や悪化に関与するだけでなく、自覚のない眠気を引き起こし、ご自身のみならず周りの人も巻き込む重大な事故の原因になりうる疾患です。
ぜひ、疑わしい症状がある方は一度検査を受け、必要であれば早期に治療を開始することをお勧めします。

次回は、「CPAPのトラブルシューティング」をテーマに、CPAPでよくあるトラブルや素朴な疑問など、Q&A方式でお送りする予定です。