精神疾患早期支援予防研究室
精神疾患の社会機能を予測する簡便な評価方法の開発を、多職種共同で目指す
当研究室では、統合失調症をはじめとする種々の精神疾患に付随する認知機能(記憶、注意、問題解決能力)の障害に関連した研究を複数進めています。
統合失調症では、中核症状の一つである認知機能障害によって、日常生活の活動や持続的な就労といった社会機能や主観的幸福感の低下が報告されています。患者の社会機能を予測する上で認知機能評価は重要な指標ですが、その時の状態(睡眠不足、不安が強いなど)に影響を受ける側面もあるため、より客観的な指標の開発が望まれています。当研究室では、統合失調症患者の社会機能を予測する指標として、脳波の一種である事象関連電位が妥当かを調べています。この研究では、事象関連電位の1つであるミスマッチ陰性電位を測定しています。ミスマッチ陰性電位の計測は簡便さが大きな特徴で、聴覚オッドボール課題という出現頻度の高い音と頻度の低い音をランダムに短い刺激間隔で提示するのみで測定可能です。ミスマッチ陰性電位は、統合失調症の病態解明(早期発見、診断の根拠)に関連することが既に報告されており、患者の社会機能をより客観的に反映する可能性が高く、支援や治療の一助となることが期待されます。
さらに、精神疾患と診断された方のみならず、将来アルコール依存症になる可能性が高い“生活習慣病リスクの高い飲酒量を摂取する方”に向けた飲酒量低減の一助となる研究もおこなっています。こちらの研究では節酒支援面接を実施しており、面接後の飲酒量や飲酒関連問題の低減が、面接前の事象関連電位および神経心理学的指標と関連する可能性を検討しています。
以上より、当研究室では機能的転帰を予測する指標として、簡便に測定可能な神経生理学・心理学的指標を用いた研究を、NCNP 病院の専門疾病センターである統合失調症早期診断・治療センターや気分障害センターのスタッフと協働して進めています。