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「アルツハイマー病疾患修飾薬全国臨床レジストリ」研究に関する解説論文を発表
報告
神経研究所
高齢者認知症の主因となるアルツハイマー病の解明が進み、病気の引き金となる「アミロイドβタンパク質」に対する抗体薬の実用が、本邦でも2023年末より開始されました。病気のメカニズムを直接の標的とする治療薬は「疾患修飾薬」と呼ばれることがありますが、このような新しい治療法の安全性と有効性を評価し、副作用なく認知症の発症を遅らせることにより患者さんの生活の質を高め、さらに医療経済的な効果を向上させてゆくためには、治療を受けた患者さんの臨床データをできるだけ多く、長期にわたって収集、蓄積し、分析してゆくことが求められます。
私たち国立精神・神経医療研究センター(NCNP)では、2024年度から日本医療研究開発機構(AMED)認知症研究開発事業「アルツハイマー病疾患修飾薬全国臨床レジストリの構築と解析」を受託し、データを登録するシステムである「レジストリ」の構築と、抗アミロイド抗体薬の安全性の評価に重要な「APOE遺伝子検査」などの準備を進め、2025年初頭から本格的にデータ登録を開始しました。現在までに全国数百カ所の専門治療施設で研究参加の準備が整い、数十施設から400名を越える患者さんが参加され、さらに研究の規模を急速に広げつつあります。
今回、本研究の代表者を務める岩坪 威(NCNP研究担当理事・神経研究所長)が、老化・認知症学などの専門誌「Nature Aging」に、本レジストリ研究が開始された背景、レジストリ研究の内容、将来期待される効果などを解説した論文を発表いたしました。
本レジストリ研究に参加される患者さん・医療施設がさらに拡大することにより、アルツハイマー病をはじめとする認知症性疾患に対する安全で有効な治療がわが国でさらに普及し、健やかで活力のある共生社会の実現につながるものと期待されます。
<論文情報>
・著 者:Iwatsubo T.
・タイトル:A Japanese registry for optimizing the safe use of anti-amyloid therapies for Alzheimer's disease in Japan. (アルツハイマー病抗アミロイド療法の安全な使用を最適化するための日本における患者レジストリ)
・掲載誌:Nature Aging
・DOI: 10.1038/s43587-025-00980-5.(2025年9月 26日オンライン掲載)
・https://www.nature.com/articles/s43587-025-00980-5