新型コロナウイルス感染症による後遺症を診療

新型コロナウイルス感染症による後遺症を診療

総合内科は、内科全般にわたって外来診療から入院診療まで広く受け入れています。
近年医学の分野は 専門領域としての細分化が進んでいますが、人間の身体はひとつしかありません。
当科では専門分野の橋渡しをし、全人的 (ぜんじんてき)に診療を行うことを大きな目的としています。

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NCNP病院 総合内科診療部

総合内科の強みとは

髙尾昌樹 部長ポートレート
総合内科診療部・臨床検査部/髙尾昌樹 部長

 「総合内科」という診療科名については、からだの臓器名がついた専門の診療科にくらべて、漠然とした印象を受けるのではないでしょうか。広く浅い診療をしていると思われるかもしれません。当診療部の医師はそれぞれ自分の専門分野を持ちながら、そのうえで広く内科診療にあたっています。ですので実際には「広く、一部は深く」といったほうが正しいかと思います。診療にあたるメンバーの専門分野は、循環器内科、消化器内科、心療内科、脳神経内科、脳卒中内科と多岐にわたっており、メンバーが一緒に協力して診療にあたっています。
 また総合内科には、神経病理 (顕微鏡で中枢神経や筋肉などの観察・研究をする) 分野で脳の病理を担当している医師もおり、当センターの研究所と連携して治療・研究に取り組んでいます。当センターの病院各科、研究所には精神・神経疾患に特化した専門家が多くおり、連携して治療・研究に取り組んでいます。近年医学の分野は専門領域としての細分化が進んでいますが、人間の身体はひとつしかありません。専門分野の橋渡しを行い、「全人的」に診療を行うことが当診療部の使命のひとつです。

COVID-19の
遷延する症状
(後遺症)

 当院の総合内科外来では、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の罹患後の症状 (後遺症)についての診療も行っています。いくつかの研究によれば、COVID-19に感染してから6カ月を経過しても、何らかの不調の自覚を訴える患者さんが50%いるといわれています。後遺症としてみられる症状は、倦怠感、息切れ、臭いがしない、味覚が低下する、動悸、立ちくらみ、頭がはっきりしない、記憶力低下、不眠、手足のしびれ、脱毛、など様々です。いくつもの症状が同時に出現することもあります。こういった体調不良は、なかなか周囲に理解してもらえないこともあり、患者さんは大変つらい思いをされています。コロナ後遺症については、まだ原因も治療方法も確立していませんが、今できる治療を、丁寧に提供しています。私たちは可能な限り科学的にアプローチすることを心がけています。中には、コロナ後遺症だと思っていた不調に隠れて、違う病気が発症していた、という例もあります。私たちは多くの症例の診療から得られる知見を、コロナ後遺症の解明に繋げていきたいと考えています。

コロナ後遺症の症状の一覧図

図:コロナ後遺症のさまざまな症状


リファレンス

  1. 大平 雅之, 高尾 昌樹, 佐野 輝典, 瀬川 和彦, 富田 吉敏, 佐藤 和貴郎, 水澤 英洋.「SARS-CoV-2の神経病原性と関連する神経疾患」COVID-19後神経症候群. NEUROINFECTION (2022) May 27巻1号 Page85-89(1348-2718)
  2. Mizutani M, Nakayama Y, Saitoh Y, Ariga H, Enokida T, Ishihara T, Sano T, Hirata Y, Katano H, Suzuki T, Takao M. Pathologic and Neuropathologic Study of a Case of COVID-19. JMA J. (2022) Jan 17;5(1):157-160.
  3. Takao M, Ohira M. Neurological post-acute sequelae of SARS-CoV-2 infection. Psychiatry Clin Neurosci. (2022) Sep 23:10.1111/pcn.13481.

研究部紹介

総合内科診療部

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総合内科診療部のメンバー

【診療部ホームページリンク】
NCNP病院 総合内科
https://www.ncnp.go.jp/hospital/guide/sd/total_internal_medicine.html

▼NCNP内連携組織リンク


記事初出
「Annual Report 2021-2022」(2022年12月発行)
>広報誌