デジタル/人工知能技術を用いて きめ細やかな精神のケアを目指す

デジタル/人工知能技術を用いて きめ細やかな精神のケアを目指す

認知行動療法センターは、認知行動療法の普及と国民の心身の健康増進への寄与、
医療現場で働く方の臨床支援に取り組んでいます。
研究開発部では、うつ、不安、トラウマに関連した認知行動療法の有効性検証、
社会実装、病態解明のための研究を進めています。

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認知行動療法センター研究開発部

心理療法をデジタルデータ化して活用する

 心理療法は薬物療法と並ぶ精神疾患の代表的な治療法です。心理療法では、心理学や精神医学の専門知識を有し、適切な訓練を積んだセラピストが、対話を通して相談者と、心の困りごとに向き合っていきます。膨大な研究の積み重ねによって、心理療法の有効性が立証されてきました。しかし、すべての人に効果があるわけではなく、心理療法の何がどのように作用するのかについては多くが未解明です。また、セラピストの訓練には時間と労力がかかるため、心の苦しみを抱えている多くの人々に、治療が行き届かない状況が続いています。そこで、心理療法で交わされる言葉、音声、話の文脈やセラピストの技などを高精細なデータとして捉え、人工知能(AI)などのデジタル技術を活用して解析し、人の精神的な状態を識別したり、心理療法の効果を予測したりできないかと考えました。これが実現できれば、人の手にのみ大きく依存していた精神のケアにデジタル技術による支援が加わり、必要とする人に、必要な時に、必要なケアを届けることができると期待しています。このような基礎技術を育むために、私たちは「精神の超高精細ケア」という学術領域を切り開くための研究を進めています。

研究の模式図

図1:研究の模式図

実績ある臨床試験データの蓄積を生かして

 私たちは10年以上かけて、『感情症に対する診断を超えた治療のための統一プロトコル (UP)』という、うつや不安などの様々なメンタルヘルスの問題に適用できる認知行動療法の有効性を実証するための臨床試験を行ってきました。この試験から得られた臨床データを用いて、4つの研究を進めています。1つめは、心理療法の中で話される “言葉”を解析し、その人がどんな状態でどうなっていくかを予測するという研究です。2つめは、声の大きさや高さ、音色など様々な音響の特徴に着目し、それらの特徴から心理状態を理解し、予測する研究です。3つめ、どのような時にどう話すかというようなセラピストの技も、実は紐解いていくと、ロジックがあります。それらを整理して、熟練のセラピストと、初学者をつなぐ架け橋となるような、知識を見える化するAIを作ろうとしています。4つめは「ネットワーク理論」です。不安であれ、うつであれ、最適な治し方は人によって違うはずです。その人特有の心を「ネットワーク」という目に見える形で整理して治療に役立てるための研究です。こうした研究を通して、個々の人の心の状態をより細やかに汲み取った心理療法を実現できるようになることが期待されます。


リファレンス

  1. Ito M, Horikoshi M, Kato N, Oe Y, Fujisato H, Yamaguchi K, Nakajima S, Miyamae M, Toyota A, Okumura Y, Takebayashi Y (2022) Efficacy of the unified protocol for transdiagnostic cognitive-behavioral treatmentfor depressive and anxiety disorders: a randomized controlled trial. Psychological Medicine, 10 January 2022, 1-12
  2. .伊藤正哉、西村拓一、竹林由武、樫原潤、村中誠司、古徳純一、菅原大地、国里愛彦、重枝裕子、大井瞳、豊田彩花、杉田創、 矢部魁一、辻拓真、押山千秋、青木俊太郎、二瓶正登、西村悟史、中島俊 (2022) デジタル-人間融合による精神の超高精細ケア: 人工知能技術による心理療法の革新へ. 医療の広場 62(6), 6-10
PCの前で研究する伊藤正哉部長の写真

研究の様子。(研究開発部・伊藤正哉部長)
PC画面は可視化した音声データ

研究部紹介

認知行動療法センター

【ホームページリンク】
認知行動療法センター
https://www.ncnp.go.jp/cbt/

▼NCNP内連携組織リンク


記事初出
「Annual Report 2022-2023」(2023年12月発行)
広報誌

※職員の所属情報は2023年9月1日現在のものです