世界初、
うつ病患者に対する
VRの地平を開拓
精神疾患が個人と社会に及ぼす損失は甚大で、世界保健機関の発表では、あらゆる疾病のうち、うつ病は人類に疾病負荷を与える疾患の1位とされています。わが国の5大疾病のうち、精神疾患の患者数は約420万人と最も多い現状です。うつ病は127万人と最も多く、1年間の社会経済コストは年間3兆900億円に上ることが報告されております。
認知行動療法では、セラピストとともに物事の考え方や、行動の仕方を工夫するスキルを身につけていくことで、苦しいこころの状態を改善します。うつ病治療において、認知行動療法は第一治療選択のひとつとされており、薬物治療を望まない方にとって重要な治療法の一つとされています。2010年にうつ病に対する認知行動療法が保険診療の対象となりましたが、必要とする方すべてにこの療法を届ける状態は達成できていないと考えられます。
VRによる
ポジティブ感情を
認知行動療法に活用
今回、産学連携の試みとして、ヴァーチャルリアリティ(以下VR)の様々なサービスを開発している会社からの受託研究を行っています。この研究では、認知行動療法にVR技術を活用する可能性を検討します。従来の研究では、ネガティブな感情体験を引き起こす状況に身を置く練習をヴァーチャルに体験する(例:飛行機恐怖の人が、ヴァーチャル空間で飛行機に乗る)という、恐怖症や不安症についての研究がほとんどでした。これに対し、今回の研究ではポジティブ感情に注目して、VRの臨場感や没入感の特徴を生かします。
具体的には、抑うつ状態にある人が、ポジティブ感情に焦点を当てた最先端の認知行動療法を受けながら、同時にポジティブ感情を引き起こしやすいVRコンテンツを体験します。この体験が、落ち込んで意欲が出ない気分状態の中でどのようにポジティブな刺激に注意を向けて、味わい、ポジティブ感情を生活の向上に活用することができるかという練習になると考え、取り組んでいます。
新たな技術を
取り入れ
治療の可能性を
広げる
VR技術には、さまざまな可能性が期待できます。例えば、認知行動療法の一部をVR体験に置き換えて、ヴァーチャルセラピストによる直感的でわかりやすい治療要素の説明ができるようになるかもしれません。あるいは、ヘッドセットゴーグルによるVR体験では、視点の記録なども可能です。他の様々なデータと組み合わせて、ヴァーチャル体験時の視点などのデータを収集することによって、どのような状態にある人には、どのようなVRコンテンツが適切かなど、様々な有用な知見が得られるかもしれません。
私たちはこの新しい技術を精神疾患の治療に生かすため研究を進めていきます。
VRで体験できる映像例
職業体験/書店の接客体験
観光体験/別府温泉の名勝「海地獄」
(写真提供/株式会社ジョリーグッド)
リファレンス
【関連プレスリリース】
株式会社ジョリーグッド2020年3月30日うつ病VRの共同研究を開始!国内最大の認知行動療法研究機関と~
https://jollygood.co.jp/news/2249