眠りと目覚めのQ&A③:学校の授業で寝てばかり

眠りと目覚めのQ&A③:学校の授業で寝てばかり

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2022/12/26

普段の生活でよく遭遇する眠りと目覚めに関する疑問やお困りごとに、睡眠の専門家がお答えします。

Q3.

高校生の子供のことで相談です。学校の授業で寝てばかりいて、担任の先生から注意を受けてしまいます。夜の睡眠は十分にとっているつもりだというのですが、どうしても眠くなってしまうそうです。何かの病気でしょうか?

A3.(回答者 松井 健太郎)

①睡眠不足の可能性は?

 私の高校生時代を思い返しますと、授業中、ちょくちょく居眠りをしていたような気がします。自宅から高校までは電車で1時間20分くらいかかりましたので、6時半くらいには起きないと間に合いませんでした。かといって予備校に行った日などは自宅に帰るのは21時過ぎでした。夜はラジオを聴いたり本を読んだりしていましたので、夜の睡眠時間はしばしば短くなってしまったように記憶しています。
 それはもう20年以上前ですので、現代に生きる高校生の夜の過ごし方はだいぶ違うでしょう。スマホやタブレットを使えば友達と連絡したり、ドラマや映画を見たり、ゲームをしたり、とさまざまなことができます。いくらでも楽しく夜ふかし可能です。加えて部活をしている学生は朝練があるかもしれません。予備校に通う人もいれば、アルバイトをしている人もいるでしょう。これは昔も今も変わらないと思いますが、アクティブな高校生ほど、睡眠不足に陥りやすいのではないかと思います。

 米国National Sleep Foundation の推奨によれば、14-17歳の適切な睡眠時間は8-10時間、18-25歳の適切な睡眠時間は7-9時間とされています1)。少なくとも7-8時間の睡眠時間・・・確保できていますか?
睡眠不足のダメージは蓄積すると言われています。毎日6時間睡眠を10日ほど続けると、1晩徹夜したのと同じくらいパフォーマンスが低下します2)。借金のようにじわじわと蓄積していくことから、これを「睡眠負債(Sleep debt)」と呼びます。慢性的に睡眠不足となっている方だと、例えば数日間、12時間くらい寝たとしても、睡眠負債が解消されないので眠気が取り切れない、なんてこともしばしばあります。
 また、普段から十分に睡眠時間を確保していると思っていても、実際に記録をしてみると、そこまでたくさんは寝てないかもしれません(そんな患者さんをたくさん診てきました)。ご自身で睡眠日誌を記載してみるのも良いでしょう。当センターホームページよりダウンロード可能です(詳細はこちらのコラムをご参照ください)。
 習慣的な睡眠不足が背景にある場合、ふだんの睡眠時間を延長することで、日中の眠気が改善することが多いです。しかし、昼過ぎまで寝るような生活を続けていると、次第に寝付きの悪さ(夜なかなか寝付けない)が目立っていき、最終的には昼夜逆転してしまう可能性もあります。一度こうなってしまうと、なかなか自力での修正が難しいので、睡眠時間を増やす際には、起きる時間を遅らせるのではなく、なるべく早めに寝ることを心がけましょう。
 また、睡眠負債に起因する日中の眠気が改善するには、ある程度長期間、十分な睡眠時間を確保する必要があります。少なくとも1ヶ月以上、毎日8時間以上の睡眠時間を確保した上でご判断いただくのが良いでしょう。

②ナルコレプシーや特発性過眠症といった中枢性過眠症の可能性も

 毎日8時間以上の睡眠時間を確保しているのに、それでも日中の強い眠気が続く場合、ナルコレプシーや特発性過眠症といった中枢性過眠症の可能性を考えます。これら中枢性過眠症の治療を開始するにあたっては、睡眠障害を専門とする医療機関にて、確定診断のための検査を実施する必要があります。当センターの睡眠障害外来でも、もちろん精査が可能です。
 お近くの医療機関が見つからない場合、当センターオンラインセカンドオピニオン外来でご相談いただくことも可能ですので、ぜひご活用ください。


参考文献
1) Hirshkowitz M, Whiton K, Albert SM, Alessi C, Bruni O, DonCarlos L, Hazen N, Herman J, Katz ES, Kheirandish-Gozal L, Neubauer DN, O'Donnell AE, Ohayon M, Peever J, Rawding R, Sachdeva RC, Setters B, Vitiello MV, Ware JC, Adams Hillard PJ. National Sleep Foundation's sleep time duration recommendations: methodology and results summary. Sleep health. 2015 Mar;1(1):40-43. eng. Epub 2015/03/01. doi:10.1016/j.sleh.2014.12.010. Cited in: Pubmed; PMID 29073412.2) Van Dongen HP, Maislin G, Mullington JM, Dinges DF. The cumulative cost of additional wakefulness: dose-response effects on neurobehavioral functions and sleep physiology from chronic sleep restriction and total sleep deprivation. Sleep. 2003 Mar 15;26(2):117-26. eng. Epub 2003/04/10. doi:10.1093/sleep/26.2.117. Cited in: Pubmed; PMID 12683469.