そもそも認知行動療法(CBT)ってなに?

そもそも認知行動療法(CBT)ってなに?

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はじめに

みなさんは“認知行動療法”という言葉を聞いたことがありますか?
なんとなく名前だけは…という方もいれば、一度も聞いたことがない! という方もいるでしょう。また、どんなものかは知らないけどなんだか難しそう…と感じられた方もいるかもしれません。
今回はそんな“認知行動療法”について、そもそもどんなものなのか? というお話をしていきたいと思います。

まずは概要から

認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy)はCBTとも呼ばれ、ストレスなどで固まって狭くなってしまった考えや行動を、ご自身の力で柔らかくときほぐし、自由に考えたり行動したりするのをお手伝いする心理療法です。
もともとはアメリカのAaron T Beckという人が、うつ病に対する精神療法として開発したものですが、うつ病以外にも、不安症や強迫症など多岐にわたる疾患に治療効果と再発予防効果があると言われています。
また、現在では、精神科の治療としてだけではなく、法律、教育、ビジネス、スポーツなど、あらゆる領域で認知行動療法の考え方が取り入れられているようです。

4つの側面に注目!

認知行動療法では、ストレスを感じた具体的な出来事を取り上げて、その出来事が起きた時に「頭の中に浮かぶ考え(認知)」、「感じる気持ち(感情)」、「体の反応(身体)」、「振る舞い(行動)」、という4つの側面に注目します。

例として、“すれ違った友人に目をそらされた”という出来事を経験したAさんの場合を考えてみましょう。Aさんの頭の中には「嫌われているのかもしれない…」という悲観的な考えが浮かび(認知)、悲しくて不安な気持ちになりました(感情)。心臓がドキドキしたりお腹が痛くなったり…と体にも反応が出て(身体)、人目を避けて足早に家に帰り、布団に潜り込んで寝てしまいました(行動)。 …と、たとえばこのような形で4つの側面を整理します。

このように、ストレスフルな出来事によって生じる反応を「ストレス反応」と呼びます。
ストレス反応の4つの側面は互いに影響を及ぼし合っていて、悪循環を生み出すことが多いものです。そのため、上記のように整理して、自分のストレス反応のパターンに気づき、さらなる悪循環に陥らないように調整していくことを目指します。

「認知」と「行動」にアプローチ

突然ですが、ここで皆さんに質問です。
先ほど整理したストレス反応の4つの側面(「認知」、「感情」、「身体」、「行動」)のうち、自分の意志でコントロールしやすいものはどれでしょう?
ぜひ、少し時間をとって考えてみてください。

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いかがですか?
一般的には、「認知」と「行動」が自分の意志でコントロールしやすいものと言われています。
その反対に、「感情」や「身体」は自分の意志でコントロールすることは難しいと言われています。

たとえば、あなたがとても悲しい気持ちの時、「今すぐ悲しむのをやめてください!」と言われたらどうでしょう? 悲しい気持ちを自分で意識して変えることができるでしょうか? また、お腹が痛い時に「腹痛をとめてください!」と言われたら…? おそらく、どちらも非常に難しいかと思います。
もちろん、「認知」や「行動」も簡単に変えられるというわけではなく、はじめは難しく感じるかと思います。しかし、「今はこういう風に考えているけど、他の考え方はないかな?」、「そんな気分じゃないけど、とりあえず起き上がって顔を洗ってみよう!」など、意識的に変えようと試みることは可能です。

そこで認知行動療法では、この「認知」や「行動」の幅を広げたり、変えていったりすることで、気分や身体を楽にして、ストレスとうまく付き合っていけるようになることを目指します。
このように、「認知」と「行動」にアプローチする心理療法であるため、“認知行動療法”という名前がついているわけです。

具体的にはどんなことをしていくの?

「認知」と「行動」にアプローチって、具体的にどんなことをしていくのでしょう?
認知行動療法における行動面へのアプローチとしては、生活リズムを整えたり、喜びや達成感がある活動を増やしたりして、物事への回避や先延ばしを減らす「行動活性化」の技法が使われています。
また、認知面へのアプローチとしては、出来事に対する考えを見直したり、考えの幅を広げたりすることで気分を楽にする「認知再構成」という技法が使われています。
それぞれの具体的な説明は、今後のコラムの中でお話しできればと思います。
また、「行動活性化」に関しては、こちらの記事でも紹介しておりますので、ぜひご覧ください。

おわりに

今回は、認知行動療法とはそもそもどんなものか? というテーマについてお話ししました。
“認知行動療法”という言葉だけを聞くと、なんだか難しい印象を受けるかもしれませんが、内容を踏まえて考えるととても分かりやすいネーミングですよね。
当院の臨床心理部で実施している個別の心理面接や、集団の心理療法、リワークデイケアなどの中には、この認知行動療法の考え方に基づいて実施されているものがあります。今回の記事を読んで認知行動療法に興味を持っていただけた方は、ぜひ臨床心理部のホームページもご覧ください。

また、今回の記事の内容は、当院臨床心理部オンラインメンタルウェルネスサービス部門で実施している「ストレスとうまく付き合うためのプログラム」のワークブックから一部抜粋しています。こちらは、認知行動療法の考え方を取り入れた、オンラインのカウンセリング・プログラムです。現在精神科や診療内科には通院していないけれどこころの疲れを感じていたり、ストレスとうまく付き合う方法を考えてみたい、という方が対象になります。詳細は下記のボタンからご覧ください。