コミュニケーションのコツ:上手な自己主張について

コミュニケーションのコツ:上手な自己主張について

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突然ですが…

 突然ですが皆さんは、次のような場面でどのように返答しますか?

『あなたはフルタイムで働く正社員です。そろそろ仕事が終わる時間で、疲れもたまっていたので早く帰ろうと業務の片づけを始めようとしたところ、上司から残業をお願いされました。先月も残業続きで体調を崩したばかりなので、できれば残業はしたくありません。上司は、明日か明後日には終わらせたいから、なるべく今日残業をしてくれると嬉しい、と言っています。』

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できれば断りたいけど…

 こういう場面、困りますよね。職場に限らず学校やアルバイトなどでも、同じような経験をした方は多いのではないでしょうか?「こういう場面を切り抜けるくらいのコミュ力があれば…」と思う方も多くいらっしゃると思います。

 断らずにそのまま残業をすれば丸く収まりますが、一人で仕事を抱え込んでしまうことになり、疲れやストレスが溜まってしまうかもしれません。一方で断ろうにも上司にお断りの旨を伝えるのは、少し気が引けますね。上司に怒られるのではないかと不安に感じる方もいれば、普段あまり言葉を選ばずに断るからよく怒られてしまう、という方もいらっしゃるかと思います。

 もし、「なるべく相手も自分も大切にした上で断りたい気持ちを伝える」としたら、上司に何と伝えますか?

 心理室で行っているいくつかのプログラムでは、上記のようなちょっと困ったコミュニケーション場面で「主張する」ときのポイントをお伝えしていきます。今回はその一例をご紹介します。

ポイント1:表情

 まず相手に主張する前に、自分がどんな表情なのかをチェックしましょう。気を張っているときは、自然と表情も固くなっているものです。表情が固くなっていると、「ぶっきらぼうな態度だな」と思われたりして、相手と溝ができやすくなってしまいます。


 申し訳ない気持ちを伝えるために表情は少し恐縮そうに、また自分の伝えたいことを伝えるために、相手と視線を合わせることを意識しましょう。

ポイント2:声

 相手に何かを伝えたいときは、しっかり伝えようと思って早口になってしまったり、話が長くなってしまったり、主張することのプレッシャーで声が小さくなってしまったりするかもしれません。ゆっくりとはっきり話せているかを確認しましょう。

※恥ずかしいかもしれませんが、自分の普段のコミュニケーションの様子を録画してみると、平常時の声色や話し方がよくわかります。

ポイント3:主語は「私」に

 「私は~」を冒頭に入れると、相手を批判したりするようなニュアンスにならず、自分の状況を説明しやすくなります。例えば「すみませんが、私としては今日は早めに帰って休養に充てたいのですが~」、「できれば明日に回していただけると私としては大変助かるのですが~」といった形です。これを「I(アイ)メッセージ」といいます。

ポイント4:代替案

 断る際は代替案を提案するとより良い印象を与えますし、相手も助かるかもしれません。上記の「できれば明日に回していただけると私としては大変助かるのですが~」のほか、「今日の~時まででしたら頑張れます」といった形で、お互いの落としどころをすり合わせるのもいいかもしれません。

おわりに

 今回は少し困ったコミュニケーション場面でどのように自分の伝えたいことを伝えるかについて、例をとって説明してみました。大事なことを伝えるときほど余裕がなくなって、自分の表情や話している内容は把握しづらくなっていくものです。そんな時こそ上記のポイントをお役立ていただけたらと思います。


 また今回のコラムは、心理室で行っている集団プログラム「P-STAR」と、「リワークデイケア」で行っているプログラムの一部から抜粋しました。


 「P-STAR」は、感情や状況を読むことやコミュニケーションが苦手といった、対人関係にお困りの方を対象にした集団プログラムです。「感情について知る」、「表情を読む」といった基本的なところから上記のような応用編まで、人とのやりとりについて参加者の方と一緒に考えていきます。

 「リワークデイケア」は休職中の方を対象にした、定期的な通所をしながら職場復帰へのリハビリを行う場所です。今回の例のような場面をどのように切り抜けるか、といったことについて、ロールプレイを交えて考えていくプログラムや、ほか認知行動療法をベースにしたプログラムを行っております。(認知行動療法の詳細ついては、こちらのコラムをご覧ください。)

 どちらのプログラムも問い合わせが多く、参加をお待ちいただく可能性があります。詳細は、当院HPや上記URLをご確認ください。