ちょっとしたことで落ち込んだ時の、気持ちを楽にするヒント

ちょっとしたことで落ち込んだ時の、気持ちを楽にするヒント

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はじめに

「ちょっとした出来事で気分が落ち込みやすい…」「ちょっとしたことなのに、頭の中で長い時間ぐるぐると考えてしまう…」「落ち込みやイライラをなかなか切り替えられない」なんてことはありませんか? また、落ち込んだ気持ちを長く引きずると、「落ち込んでしまう自分はだめだ」と自分を責める考えも出てきて、どんどん深みにはまっていってしまうなんてこともあるかもしれません。今回は、そんなちょっとした出来事で落ち込んだ時に、気持ちを楽にするヒントについてお伝えします。

例えばこんな時…

あなたはこんな時、頭を切り替えるために、どんな風に考えますか?一緒に考えてみてください。

Aさんが、朝出勤のために駅に行くと電車が止まっていました。運転再開時間は未定ですが、駅のアナウンスをきいていると、再開までしばらく時間がかかりそうな雰囲気です。実は今日、Aさんは朝一番にやらなければいけない仕事があるのですが、このままでは朝一番の仕事に間に合いません。他の路線に乗り換えて職場に向かうこともできますが、その場合、到着までにはいつもより数十分ほど多く時間がかかってしまいます。


Aさんは、「このまま待っているよりは、他の路線を使った方が早く到着できるかもしれない…そうすれば朝イチの仕事にも間に合うかも! でも待っていた方が早く到着できるかもしれないよなあ…、でも…」と迷い、結局は他の路線を使って職場に向かうことにしました。ところが、止まっていた電車はAさんが乗り換えをした後、間もなく運転再開したことが分かりました。結局、乗り換えをしない方が職場に早く到着できたようです。Aさんは思わず「あ~、自分が迷って選んだ方っていつもうまくいかない…」と思い、落ち込みました。


その後Aさんは職場に電話をかけて遅れることを伝え、Aさんが朝一番にやらなければいけなかった仕事は別の人に頼みました。電話をかけ終わり、電車に乗ったAさんは、「やっぱり乗り換えなきゃよかった…」「やっぱり自分が選んだ方はうまくいかなかった、あの時もそうだし、あの時もそうだった…」「自分が遅刻したせいでみんなに迷惑をかけてしまう…」「自分はダメだなあ」なんてモヤモヤ、うつうつ、ぐるぐる考え始めました。するとなんだか体まで重くなってきました。電車の遅延は仕方がないことでもありますが、モヤモヤ、うつうつ、落ち込みの気持ちでいっぱいになり、頭の中も「自分はダメだ」という考えでいっぱいになってきました…

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…さあ、いかがでしょうか。あなたならこんな時、どんな風に考えて頭を切り替えますか?

ちなみに、私が所属する心理室ではこんな考えが出ました。
・もう遅れることは変わらないから、空いた時間を有効に使うために、電車の中では何して過ごそうかな~。
・朝一番の仕事は他のスタッフに任せたから安心だ。
・誰かの責任でもないし、自分の責任でもないから、しょうがないことだ。

様々な考え方がありますね! みなさんにとってしっくりくるものや、これは考えたことがなかった、というものはありましたか?

やれることはやった、という視点を持つ

上記以外にも「その時、その状況で、やれるだけのことはやった」、という視点をもってみるのはいかがでしょうか。あとから振り返れば「こうすればよかった」といくらでも客観的に考えることはできますが、その時の自分が、その状況で、1回きりで考えて判断して行動したと考えると、その時できる最善を尽くしたとも考えられることはありませんか?

今回の場合、運転が再開して落ち着いた後に考えれば「やっぱり乗り換えなくてよかったのに…」なんて思うかもしれませんが、乗り換えようと判断した時の状況は、運転再開がいつになるか分からず、乗り換えた方がいいのか、待っていた方がいいのかという見通しが持てなかったうえ、急いで判断しなければいけないというものでした。そんな状況の中、Aさんは「乗り換えよう」と考え、判断して、行動して、この時にできる最善を尽くしました。世の中、全てを自分の力でコントロールしようというのは無理で、自分の力だけではどうしようもできないこともたくさんありますよね。こういった時には「自分はダメだ」という視点だけに絞られず、「あの時の自分が、あの状況の中で、やれるだけのことはやったな、仕方なかったな」という視点も持つと少し楽になるかもしれません。

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認知再構成

心理療法のひとつである認知行動療法(CBT)では、出来事に対する考えを見直したり、考えの幅を広げたりすることで気分を楽にすることを「認知再構成」と呼びます。私たちはストレスにさらされると、本当は悪いことばかりではないのに「あれもこれもダメだ」とマイナスの情報ばかりに気を取られて、プラスの情報を見逃しやすいといわれています。認知再構成では、こうしたひとつに絞られてしまった見方からバランスを取り戻すために、様々な側面に目を向けて状況を十分に見直していき、バランスのとれた考えを導き出していきます。様々な側面に目を向ける方法として、例えば以下のような問いかけをしてみることもあります。モヤモヤする時にはぜひ以下の質問を自分に問いかけてみてください。これまで気づかなかった側面に目を向けやすくなるかもしれません。

・友達が同じ状況だったらなんて声をかけるだろうか?
・起こってしまったことは変えられないから、そうすると今の自分には何ができるかな?
・過去の経験から言えることはないか?
・あいまいな証拠できめつけていないか?

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また、認知行動療法(CBT)では、気晴らしのために散歩に行く、掃除をする、ゆっくりお風呂につかる、友達に話してみるなど、頭の中で考えるだけでなく、実際に行動して対処するといった方法もあります(詳しくはこちら)。また、ストレス対処についてはこちらの記事もぜひご覧ください。

おわりに

いかがでしたか? 今回は、ちょっとした出来事で落ち込んだ時に気持ちを切り替えるヒントについてお伝えしました。なお、今回の記事の内容は、臨床心理部オンラインメンタルウェルネスサービス部門で実施している「ストレスとうまく付き合うためのプログラム」のワークブックから一部抜粋しました。こちらは、認知行動療法の考え方を取り入れた、オンラインのカウンセリング・プログラムです。

このプログラムでは、臨床心理士・公認心理師と一緒に、自分は何にストレスを感じやすいのかを分析したり、どんなストレス対処が自分に合っているかを考えて、実際に試してみたりします。またオンライン実施のため、来院する必要はなく、ご自宅などから気軽に参加することができますよ。
今回お伝えした、気持ちを切り替えるヒントも、実際ひとりで考える時には難しい場面もあると思います。そんな時にもぜひこのプログラムで相談してみてください。

詳しい情報は下記リンクをご覧ください。