第3回  てんかんと新型コロナウイルス②

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てんかんがあっても新型コロナウイルスワクチンを打って大丈夫?

小児神経科の馬場信平です。

前回に引き続き、新型コロナウイルスに関連した話題をお伝えします。
てんかんがある人が新型コロナウイルスワクチンを打って大丈夫か?という患者さんからの質問には、次の二つの「心配」の意味が込められていると感じます。

ワクチンを打ったら、てんかんがあるがために、強いワクチンの副反応が出るんじゃないかという「心配」

ワクチンを打ったら、発作がたくさん出たり、大きい発作が出たりするのではという「心配」

今回はこの2つの「心配」についてお答えしていきます。

①ワクチンを打ったら、てんかんがあるがために、強いワクチンの副反応が出る?

新型コロナウイルスワクチンの副反応に関する研究は少しずつ増えています。
てんかんのある人がワクチンを打った場合、副反応のほとんどは筋肉痛・倦怠感・発熱などで、現れる副反応の中身も、重さも、現れる確率も、てんかんがない人と同じくらいだったようです。
読者の皆さんの身近の方が、あるいはご自身が、ワクチンを打った後に発熱、筋肉痛といった副反応を経験されたかもしれませんが、「てんかんがあっても副反応はだいたい同じ」と思ってよさそうです。

②ワクチンを打ったら、てんかんが悪くなる?

てんかんのある人が新型コロナウイルスのワクチン接種を受けた場合、研究によりますが10〜20人に1人くらいの割合で、接種の後にてんかん発作が現れたり、そのために薬の調整が必要になった人がいるようです。
ただし、これらの研究では、ワクチンを打った後に「たまたま」悪くなったのか、ワクチンを打った「せいで」悪くなったのかは分かりません。

え!じゃあ、新型コロナウイルスの予防接種を受けたら危ないんじゃないか、って??

いやいや、ちょっとお待ちください。
てんかんのある人が何かの予防接種を打った後、久しぶりにてんかん発作が出た、そのために薬の調整が必要となった、ということは、実は新型コロナウイルスワクチンに限らず、他の様々な予防接種でもありえることなのです。
予防接種の問診票には必ず、「けいれんしたことがありますか」「主治医から予防接種を受けてよいと言われていますか」という項目がありますね。
でも、ほとんどの医師は、てんかんがあっても予防接種を受けてよい、と患者さんにお伝えしていると思います。その根拠は、次のようにまとめられます。

①予防接種を打たずにその病気にかかった場合にてんかんが悪くなる人は、予防接種を打った後にてんかんが悪くなる人より、ずっと多い。
②日本脳炎、インフルエンザ菌による髄膜炎、おたふくかぜによる難聴や不妊症、といった「ワクチンさえ打っていれば防ぐことができた病気」になる方が大変。
 *新型コロナウイルスにかかったときに重症になる人の多さは、前回の私のコラムでお伝えした通りです
③予防接種の後にてんかんが悪くなったとしても、ほとんどの場合一時的で、それが後々まで尾を引くことはとても稀。

つまるところ、
「新型コロナウイルスの予防接種で、絶対にてんかんが悪くならないとはいえないけど、打たないでコロナにかかってしまうよりはよっぽど良いだろう」というのが私の回答になります。

日本ではこれから3回目の新型コロナウイルスワクチンの接種の案内が始まりそうです。
今回のコラムが、てんかんがあるために予防接種を打つべきか迷っている人のお役に立つことがあれば、とても嬉しく思います。

*ほとんどのてんかんの人にとっては上に書いた通りなのですが、てんかんの原因によっては、予防接種を打たない方がよい人もいます。
ワクチン接種に不安がある場合は、ご自身だけで判断されず、主治医の先生によく確認されてください。

(小児神経科 馬場信平)