第12回てんかんと新型コロナウイルス③

第12回
てんかんと新型コロナウイルス③

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今回は新型コロナウイルスの治療薬と抗てんかん薬についてのお話です。
抗新型コロナウイルス薬(抗ウイルス薬)として2022年7月17日現在は1つの点滴の薬と2つの内服薬があります。どのお薬も細胞内に侵入したウイルスの増殖を阻害するためのもので、感染の早期に重症化を抑えるために投与します。
*現段階では下記の対象患者さんに加えて、重症化のリスクがある患者さんにも投与されます。

てんかんの患者さんで注意すべきは、パキロビッドにおける併用禁忌です。

お薬一般の話になりますが、多くの薬は体から排泄される時に「酵素」の働きによって代謝(体から出やすい変化すること)されて、尿や便から出ていきます。薬によってはその酵素の働きを強くさせたり、弱くさせたりするため、他の薬の血中濃度を下げたり、上げたりしてしまいます。そのため、薬をいくつか一緒に飲むときには注意が必要なことがあります。

パキロビッドの代謝についてはCYP3A4という代謝酵素の働きが関係します。
① 抗てんかん薬がパキロビッドに与える影響
カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタールなどの薬は酵素(CYP3A4)を強めてしまい、パキロビッドの血中濃度を下げてしまう可能性があります(効果がうすくなってしまう)。
② パキロビッドが抗てんかん薬に与える影響
逆にパキロビッドが酵素を阻害することで抗てんかん薬(カルバマゼピン、ジアゼパム、ミダゾラム、バルプロ酸、ラモトリギン)の濃度が上がってしまうことがあります。

併用禁忌:カルバマゼピン、フェニトイン、フォスフェニトインナトリウム水和物、フェノバルビタール、ジアゼパム、ミダゾラム
併用注意:バルプロ酸、ラモトリギン、エベロリムス

抗てんかん薬を飲んでいる方が新型コロナウイルスの薬を使用する場合には、少し注意をして薬を選ぶ必要がありますので、新型コロナに罹って受診をする場合には、飲んでいる薬をしっかり伝えましょう。

参考:日本てんかん学会HP
新型コロナウイルス感染症経口治療薬と抗てんかん発作薬に関する情報(外部サイト)
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00069661.pdf

文責:住友典子(脳神経小児科)