第9回てんかんと美容脱毛

第9回
てんかんと美容脱毛

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近年は、脱毛する方が男女問わず増えています。美容はQOL向上にも通じ、これはてんかんで通院中の患者さんも同様です。

しかし、てんかんを理由に脱毛の施術を断られる事が少なくないようです。

断る理由として、以下の3点が挙げられるようです。
・施術中に発作が起きると対応ができない
・光でてんかん発作が誘発されるリスクがある
・薬剤内服中は光線過敏症を引き起こす恐れがある(=薬剤性光線過敏症)
が理由のようです。

てんかん患者さんの約7割は薬物療法で発作は抑制されています。てんかんのない方と同様に日常生活を送ってい流患者さんにとって、脱毛の施術が発作を誘発しやすいということはありません。

確かに一部のてんかんには、強い光の刺激によって発作が誘発される光過敏性てんかんと呼ばれる例があります。脱毛施術は強い光を発することが多いため、てんかんの病名で断られることがあるようです。しかし光過敏性てんかんは4000人に1人と少ないです。(てんかんの患者さんは100人に1人です)この光過敏性とは「光が目に入り、脳に刺激として伝わることで発作が誘発される」ことを指しますので、手足や背中などに光を当てることは発作の直接の誘因になりません。顔面の脱毛など目に光が入りやすい箇所の施術時は、アイマスクを使用して視野に光が入らないように工夫すれば、発作を防ぐ事ができます。また、抗てんかん薬の治療自体で光過敏性は軽減します。

3つ目の薬剤性光線過敏症とは、内服開始後、日光に含まれる紫外線が原因となって、赤みや発疹を生じる副作用です。これも、脱毛に用いるのは紫外線とは異なる波長の光(多くは可視光線や赤外線)なので、施術による光線過敏症リスクは低いとされています。なお抗てんかん薬のうち、添付文書で光線過敏症の副作用が挙げられているのはカルバマゼピンのみとなっています。

2020年にてんかん学会からも「ほとんどの患者さんは美容脱毛を受けることに問題ない」との声明が出されました。医療者のいない脱毛や美容サロンに比べ、医師が行う医療脱毛は柔軟な対応が可能なところも増えているようですので、そちらを選択してみてはどうでしょうか? 施術中の発作が心配な方は問診で医師とよく相談し、必要に応じて発作症状・発作時対応を記載した診断書を持参するといいでしょう。

文責:てんかん診療科 宮川 希