不眠で困ったときは

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はじめに

2021/1/21

文責:羽澄 恵

夜、眠りたいのになかなか眠れなくて困っていませんか?
真夜中に寝床で眠気がやってくるのをじっと待つのは、とても心細くつらい体験と思います。
今回は、このような不眠症状が続いていて困ったときのセルフケアを紹介します。

※「不眠症」については、睡眠・覚醒障害研究部のページもご参照ください。

このコラムの内容

このコラムの内容

1.不眠症ってどんな病気?

2.不眠症状と心の意外な関係

3.夜の睡眠のとり方のコツ

4.なかなか寝つけないときの対応

5.就床・起床時刻で守ってほしいこと

6.眠れなかった翌日のすごし方

7.不眠症の認知行動療法(非薬物療法)


1.不眠症ってどんな病気?

不眠症の症状には、寝つくのに時間がかかる(入眠困難)、いちど眠りについても目が覚めてしまって再び寝つくのに苦労する(中途覚醒)、予定している時間よりも早くに目覚めてしまう(早朝覚醒)といったものがあります。
一時的にこうした症状がみられたり、週1,2回程度こういう夜があったりするのは、誰にでも起こりうることです。
また、不眠症状があったとしても日中の不調や生活への支障がなければ、心配し過ぎる必要はありません。
一方、長期間不眠症状に加えて日中の不調などが週3回以上見られることが続く場合は、不眠症の可能性があるため、注意が必要です。


2.不眠症状と心の意外な関係

自分の不眠症状は心理的ストレスが無くならないかぎり改善できないと思っていませんか?
心理的ストレスのせいで眠れないと思われがちですが、寝床で眠れずじっとしていると考えごとが浮かびやすくなったり、不眠症状があることで心理的ストレスを感じやすくなったりと、不眠症状のせいで心理的ストレスが感じやすくなっている場合もあります。
また、心理的ストレスがあったとしても、生活習慣を工夫することで不眠症状を改善することができます。


3.夜の睡眠のとり方のコツ

人間が一晩に眠れる時間の長さは限られます(図1参照)。
そのため、寝床の中で横になっている時間が実際に眠れる時間よりも長いと、かえって眠りづらくなります。
そこで、夜に寝床ですごす時間は、 ❝実際に眠れる時間の平均+30分❞ にとどめることをおすすめします。
慣れないと初めは辛く感じるかもしれませんが、まずは2週間を目標に続けてみてください。

以下のグラフは、年齢ごとに平均的な ❝実際に眠れる時間❞ を示しています。
睡眠時間には個人差がありますが、一般的には加齢により減少することが知られています。
たとえば、25歳の時は8時間近く眠れていても、65歳ごろには6時間程度に減るのが正常変化であると考えられています。
ご自身の眠れる時間が分からない方は、参考にしてみてください。

図1.年齢ごとの平均睡眠時間の違い

必要な睡眠時間は個人差がありますが、年齢によって眠れる時間も睡眠の質も変化します。


4.なかなか寝つけないときの対応

20分以上眠れなかったら、思い切って寝床からいったん出てしまいましょう。
寝床から出たら、眠れない悩みから距離をおけるよう、あなたが取り組みたい活動に時間を当ててみましょう。
頭や身体をアクティブに使う活動ではなく、リラックス状態を維持しやすい低強度の活動を選ぶのがコツです。
また、明るい光は目覚めやすくなるため、このとき部屋の照明を暗めにすることも大切です。
自分に合った過ごし方を具体的に相談したくなった場合は、当院の睡眠障害外来へ一度お越しください。

軽いストレッチや下記のようなリラックス法をやってみるのもおすすめです。

当センター内の認知行動療法センターが「眠気を引き出すリラックス法(漸進的筋弛緩法)」の動画を用意していますので、よかったら参考にしてください。


5.就床・起床時刻で守ってほしいこと

寝床で過ごす時間の長さが同じでも、就床・起床時刻が日によって異なると、思うように眠れないばかりでなく、体調不良が見られやすくなります。
休日は寝だめしたくなったり、なかなか寝つけなかった翌朝は遅くまで横になりたくなったりしますが、その日の予定や昨晩の睡眠状態にかかわらず、毎日同じ時刻に起床しましょう。
就床時刻については、早く寝床に入りたい気持ちをぐっとこらえ、眠気が来てから寝床に入るように心がけましょう。


6.眠れなかった翌日のすごし方

夜に十分眠れないと、日中も横になったり活動を控えたりしがちになります。
しかし、横になったり活動量を減らしたりすることは、一時的に楽になっても、長期的には不眠症状が続いてしまう原因になります。
あまり眠れなかった翌日も、できる範囲で普段通りに過ごしましょう。
仮眠をとりたい場合は、お昼過ぎから午後3時までの間に15分~30分程度に留めることをおすすめします。


7.不眠症の認知行動療法(非薬物療法)

今回ご紹介したセルフケアは、不眠症の認知行動療法(非薬物的心理療法)がもとになっています。
頭では分かってはいるけれどできない、自分ひとりでやるのは難しい、そんな時は専門家と二人三脚で取り組むのがおすすめです。
まずは当院の睡眠障害外来へご相談ください。
診察と各種検査の結果、専門の医師により不眠の認知行動療法の適応が認められた場合、治療が導入されます。

当院で提供する不眠症の認知行動療法では、心理士と1対1で、1回50分程度のカウンセリングを合計4回、約2週間ごとに行います。
また、より気軽に参加できるプログラムとして、当院のデイケアで行っている「睡眠力アッププログラム」もありますので、ご興味のある方は担当医へご相談ください。

不眠の状態や生活スタイルをもとに、一人ひとりの特徴にあった生活習慣を計画し、前向きに実行できるよう工夫していきます。


おわりに

今回は、薬を使わない不眠症状への対処法について紹介しました。
みなさまの不眠の悩みが少しでも減り、快適に過ごせるようになれば幸いです。

次回は「睡眠時無呼吸診療について」をテーマに、初診から検査、診療に至るまでの流れについてお話する予定です。