平成22年11月17日「PTSDの病態生理に関する新しい洞察」

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「PTSDの病態生理に関する新しい洞察」

<日 時> 平成22年11月17日(水)16:00 ~17:00
<場 所> 研究所本館1階 第1・2会議室
<演 者> イスラエル・リバーゾン教授(ミシガン大学医学部精神科)
<内容紹介>
感情の神経科情の神経科学的研究は、情動反応に関与する神経回路の我々の理解を大きく前進させた。動物実験により、恐怖や報酬に関連した行動における、扁桃体、海馬、側坐核など皮質下の領域が果たす役割が明らかになり、脳機能画像研究により、人間の複雑な情動における皮質領域の役割が明らかになってきた。また、情動反応の異常を認めるPTSDでは、これらの脳領域の機能異常を示すことも報告されてきた。同時に、何十年にもおよぶストレス研究により、主なストレス反応システムである視床下部-下垂体-副腎皮質系(HPA系)の機能の概要が明らかにされてきている。興味深いことに、HPA系の機能異常もまた、PTSDにおいてしばしば認められる所見である。しかし、情動とストレス反応との正確な相互関係は最近までほとんど明らかにされていなかった。近年の機能的MRIと神経内分泌学的手法を組み合わせた研究により、島皮質、内側前頭前野、そして前帯状回が情動とストレス反応を結びつけており、ストレス関連性精神疾患を理解する上で鍵となる脳領域であることがわかってきた。最後に、遺伝子解析と脳画像解析を組み合わせた最近の研究により、情動やストレス反応と関連した脳機能異常を示す中間表現型と、遺伝的特徴との関連が明らかになりつつあり、このような中間表現型は、ストレス関連性精神疾患発症の危険因子として認識されている。本講演では、PTSDの病態における内側前頭前野の役割や、コルチゾールが脳活動に与える影響などについての我々の最新の研究結果を示すとともに、PTSDの病態生理について新しい視点から洞察する。

担当・連絡先:
成人精神保健研究部 金 吉晴(内線6241)