平成23年10月24日「記憶の強化と睡眠」

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ポスター

「記憶の強化と睡眠」

<日 時> 平成23年10月24日(月)16:00~18:15

<場 所> 研究所3号館 1階セミナールーム

<演題 1> 手続き記憶の固定と睡眠
<演者 1> 佐々木 由香 先生
<講演要旨>
睡眠に記憶を固定および改善させる機能があることが示されているが、その神経機構は完全に理解されていない。我々は、MRIとMEGの利点を合体させた技法を用い、フィンガータッピング手続き課題の睡眠固定に関与する活動を空間的時間的に詳細に検討した。その結果、デルタ、シータ、シグマ帯域を含む広範な周波数帯域が、課題実行領域とは別の領域で有意に増大し、かつ、課題成績向上と有意に相関することがわかった。以上のことから少なくともフィンガータッピング手続き課題における睡眠固定は、単なる覚醒中の神経活動のリプレイではなく、睡眠中に特異的な様態で生じるものである可能性が示唆された。

<演題 2> 宣言的記憶の固定と睡眠
<演者 2> 高島 敦子 先生
<講演要旨>
経験を通して学んだことは記憶として脳に記録される。この積み重なった記憶を利用することによって我々は対面している問題に対し的確な判断を下すことができるようになる。しかし我々はすべてのことを覚えているわけではなく、一部は忘却してしまう。記憶を脳内に残すための過程を記憶の固定という。この記憶の固定に睡眠が大きく影響することが近年の研究で明らかにされつつある。睡眠を介して記憶が固定される際、記憶回路にどのような脳内変化が認められるのか。睡眠中に脳を刺激することによっての記憶の固定の促進効果、またそれに関連する脳内ネットワークの活動を、宣言的記憶を中心に報告する。

<演題3> 気分障害における睡眠構造と睡眠依存性記憶
<演者3> 西多 昌規 先生
<講演要旨>
うつ病、双極性障害を含む気分患者においては、不眠や思考・注意力の減退といった抑うつ症状が少なくない。こういった症状は、患者の社会復帰や、認知行動療法などの大きな障害となっている。本シンポジウムでは、気分障害と睡眠依存性記憶の先行研究を紹介し、われわれが行った服薬中の気分障害患者の睡眠構造、睡眠前後での手続き記憶の定着について実験結果を紹介したい。健常人と比較したところ気分障害患者では、睡眠依存性の記憶固定が減弱していることがわかった。睡眠紡錘波との関係性にも、言及したい。気分障害の治療とリハビリテーションの観点からも、睡眠依存性記憶についての臨床的応用を狙った研究が期待される。

担当・連絡先:
成人精神保健研究部 栗山

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