国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部

部長挨拶

遺伝子疾患治療研究部長 青木 吉嗣

遺伝子疾患治療研究部は、筋学研究で得られた基礎研究成果を出発点として,遺伝性の神経・筋難病を対象に、疾患細胞・動物モデルを用いた遺伝子発現制御および幹細胞の基礎研究と治療法開発に取り組んでいます。中でも、デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、ジストロフィン遺伝子の変異によって生じる難病ですが、当研究部での基礎研究成果を踏まえ、国内製薬企業と共同で、国産初の核酸医薬品であるエクソン・スキップ薬(ビルトラルセン)の開発に成功しました(2020年3月製造販売承認)。私達は、心筋や中枢神経系への送達能を高めた次世代アンチセンス核酸やsiRNA、ゲノム編集治療など、最先端治療戦略の応用を目指した研究を通じて、難病の克服に挑戦し続けます。さらには、世界的にも貴重な筋ジストロフィー犬を使用して、遺伝学・病態研究成果を踏まえた治療研究を推進しています。筋ジストロフィーの複雑な分子メカニズムを解明するために、ジストロフィン関連タンパク質の分子機能や細胞内カルシウム制御機構の解明にも取り組んでいます。

神経研究所遺伝子疾患治療研究部は、機能研究部(1978年~、部長 小澤鍈二郎、現名誉所長)でのジストロフィン研究の流れをくみ、2000年以降は遺伝子疾患治療研究部(部長 武田伸一、現名誉所長)として、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの遺伝子・細胞治療研究で大きな発展を遂げました。当研究部の筋学研究の伝統と実績に恥じぬ様、国内外のトップラボとの共同研究を推進し、ユニークで画期的な研究成果を世界に発信し、筋ジストロフィーを中心とした難病の克服のため全力を尽くします。

当研究部の特徴は、遺伝子・分子・機能までを網羅した基礎研究に加えて、トランスレーショナル研究(TR)とリバースTRを含む、多角的な研究アプローチです。方法論として、分子生物学、実験動物学・行動科学、細胞生物学、生化学、薬理学、電気生理学、遺伝学、オミックス解析、シングルセル解析を駆使し、病態・治療研究成果を有機的に統合する総合的かつ戦略的な研究を展開しています。

もう一つの特徴は、アルバータ大、オックスフォード大、カロリンスカ研究所、メルボルン大などとの国際共同研究を積極的に推進している点です。理学・生物学・薬学系・医学系や化学系の研究者を含め、幅広いバックグランドからの研究員の参加を歓迎し、世界レベルの研究者育成を目指します。意欲的な方であれば、連携大学院のシステム(東京医科歯科大学、東京農工大学、早稲田大学等)を活用して、博士号の取得を支援します。

遺伝子疾患治療研究部 部長 青木 吉嗣