国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部

インタビュー

柴﨑 浩之
文部科学省研究振興局ライフサイエンス課
遺伝子疾患治療研究部客員研究員
日本希少疾患コンソーシアム
日本筋ジストロフィー協会ベッカー型筋ジストロフィー分科会(2024年5月現在)
研究テーマ難治性希少神経筋疾患における研究への患者・市民参画(PPI)の意義・方法に関する研究

自己紹介

私は 2017年~2019年の3年間、東京理科大学大学院薬学研究科から研究生として、遺伝子疾患治療研究部で研究をさせていただき、その研究成果により学位(薬科学博士)を取得することができました。
現在は文部科学省研究振興局ライフサイエンス課において、大学等の研究機関における生命科学分野の研究基盤(バイオリソース、データベース、動物実験等)を整備する担当をしており、学術研究を支える行政官として勤務しています。
また、研究者×患者×行政官の立場で、難治性希少神経筋疾患の研究への患者・市民参画(PPI: Patient and Public Involvement)や産患学官民による治療研究開発・創薬を推進する活動をしています。

研究テーマ概要

博士後期課程(研究生)のときは、筋ジストロフィーモデル動物を用いてmicroRNA に着目したバイオマーカー研究を行い、筋分化に関与する microRNA を見つけることができました [Shibasaki et al., PLoS One. 2019]。 現在は客員研究員として、筋ジストロフィーをはじめとする難治性希少神経筋疾患の基礎研究や臨床研究におけるの意義や有効な取組について研究しています。

遺伝子疾患治療研究部を選んだ理由

私自身はベッカー型筋ジストロフィー(BMD)患者ですが、幼少期から BMD 患者として通院する中で、より重篤なデュシェンヌ型筋ジストロフィー、福山型先天性筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症等の神経筋疾患で呼吸器をつけている子供を目にすることが多く、このような疾患を根本的に治したい、自分も何かしたい、という思いで育ってきました。
私が高校生(~2010年)の頃は、遺伝子治療や核酸医薬に関する基礎研究の成果が国際的に出てきた時期で、そういったモダリティーを駆使し、筋ジストロフィーの根本治療を目指す研究者になりたいと思い、薬学部の研究課程に進学しました。
大学生になり、NCNP の市民公開講座で武田伸一先生(当時研究部長)の講演や筋ジストロフィー研究班会議の研究発表を聞いたり、Remudy 登録など自身も研究へ患者参画したりする中で、 学術研究、疾患モデル動物、モダリティー、臨床連携の研究基盤が備わっている当研究部において、筋ジストロフィーを科学的に理解し、根本的治療のための研究をしたいと考え、遺伝子疾患治療研究部の門をたたき、青木吉嗣先生(現研究部長)のアテンドのもと、2017年から仲間に入れていただくことになりました。

神経筋疾患の研究者を目指す後輩へのメッセージ

神経筋疾患は重篤かつ進行性である病型が多く、患者さんに一日でも早く新規治療薬を届けなければなりません。本当に過酷な疾患です。 将来を見据えて科学的好奇心や使命感のもと、もどかしくも日々実験データや論文と向き合い突き進んでいくことが研究だと考えます。 日本では、歴史ある優れた骨格筋研究により、ノーベル賞級の研究成果も出してきた中で、それを土台にして筋ジストロフィーの病態研究や治療研究が発展し、現在では当研究部発の核酸医薬が患者のもとに届くなりました。 神経筋疾患の研究は、患者に治療薬を届けるという重要な目標に向かいながら、基礎研究から骨格筋・神経の面白さに向き合える分野です。ぜひ同じ目標をもつ仲間として一緒に研究しましょう!

大越 一輝
遺伝子疾患治療研究部研究生
東京医科歯科大学修士課程2年(2023年11月現在)
研究テーマ尿由来細胞を用いた神経・筋接合部の作製法の確立

遺伝子疾患治療研究部を選んだ理由(いつ、どのように決めたのか)

大学3年生のころ研究補助員をやりたくラボ見学をさせていただき、そこで気持ちを伝えたところ補助員ではなく研究生としてお誘いをいただけたことがきっかけです。難病についての研究がしたかったため、まさか自分がここで研究ができるとは思いませんでした。

研究生活について(大変なところ、楽しいところ)

大変なこと
・頑張って時間と労力を費やして行った実験の結果がイマイチということが普通にあること。
・アルバイトもやっているため時間が足らず忙しくなってしまうこと。

楽しいこと
・何かに没頭して考えているときや、他人と一緒に考えているとき。
・大変な中でも興味深い良い結果が得られたとき。
・過去を振り返ったときに自分の成長を感じたとき。

研究者を目指す後輩へのメッセージ

私もそうですが、先の見えない不安があると思います。ですがどこに行っても何某かの不安があるのは同じなのではないでしょうか。なので、やってみるのもいいと思います。