国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部

研究概要

遺伝子疾患治療研究部では、ヒト患者および疾患モデル細胞・動物(イヌ、マイクロミニブタ、マウス)を対象とし、シングルセル解析やマルチオミクス解析などの最先端技術を駆使して、神経・筋難病を克服するための病態解明と新規治療法の研究を進めています。 神経・筋難病とは脳・脊髄・末梢神経などの神経系の異常(神経原性)、もしくは筋の異常(筋原性)により運動機能が障害される疾患です。 その中でも当部では、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)や筋強直性ジストロフィー(DM1)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を対象とした研究に取り組んでいます。

神経・筋難病の病態・治療研究

DMD、DM1、ALSに対する治療法開発には、薬物治療(低分子化合物など)、遺伝子治療(RNA医薬品やウイルスベクターなど)、幹細胞移植など、様々な戦略が研究されています。 当部では、2020年に日本発のエクソン・スキップ薬「ビルテプソ(一般名:ビルトラルセン)」の開発に成功しており、その研究開発基盤を活かして、神経・筋難病の病態発症機序を解明するとともに、それぞれの治療法の有用性と課題を明らかにし、より効果的な治療法の開発を目指しています。

神経・筋難病患者由来のヒト尿幹細胞(UDC)研究

UDCは、採尿という身体的負担の少ない(非侵襲的な)方法で採取可能な幹細胞であり、ダイレクト・リプログラミング法により、患者の加齢や疾患情報を保持したまま骨格筋細胞や神経細胞へ分化誘導できます。 当部では、DMDやALSなどさまざまな神経・筋難病患者由来のUDCを樹立し、疾患細胞モデルバンクの構築を進めています。 このモデルを用いて、患者さん一人ひとりに最適な治療を検討する個別医療(Precision medicine)への応用を目指しています。

脳オルガノイド研究

ヒトDMDの中枢神経症状のモデルとして、DMD患者由来UDCから誘導した人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた脳オルガノイドの作製法を、共同研究者と共に確立しました。 脳オルガノイドでは、複雑な神経細胞とグリア細胞の相互作用により、自己組織化された大脳皮質様の構造が形成されます。 当部ではDMD患者由来脳オルガノイドを用いて、自閉スペクトラム症などの脳神経症状が引き起こされるメカニズムの解明を進めています。