精神疾患病態研究部 松本純弥室長が第42回日本生物学的精神医学会年会にて日本生物学的精神医学会若手研究者育成プログラム奨励賞を受賞しました

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2020年10月21日
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)

 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP、東京都小平市、理事長:水澤英洋)精神保健研究所(所長:金 吉晴)精神疾患病態研究部(部長:橋本亮太)の松本純弥(まつもと じゅんや)室長が、第42回日本生物学的精神医学会年会(2020年8月21日~23日 ONLINEにて開催)において若手研究者育成プログラム 奨励賞を受賞しました。

受賞演題
「統合失調症患者と健常被験者における拡散テンソル画像を用いた大脳白質微細構造と認知機能、認知機能障害、労働時間との関連」

研究概要
 統合失調症は陽性症状と陰性症状に加えて認知機能障害が中核的な症状と言われています。認知機能障害は特定のドメインではなく幅広く低下するため大脳の特定の部位の障害よりは大脳全体の障害が予想されます。統合失調症患者さんの脳構造に関する報告は大脳皮質全体の全般的な異常が報告されてきましたが病態解明、治療に結びつく結論は出ていません。そのため、大脳白質微細構造とIQ、認知機能障害及び社会的予後に直結した労働時間との相関を検討しました。6施設7コホートでリクルートされた健常被験者620例及び統合失調症患者217例の合計837例の被験者にて、大脳白質微細構造の解析に拡散テンソルイメージング(DTI)を実施し関心領域(ROI) のFractional Anisotropy (FA)値を算出しました。さらに、主成分分析により19のROIからglobal FA(gFA)値と、6つの連合線維からlong association tracts gFA(LA-gFA)値を算出しました。認知機能はウェクスラー式成人認知機能検査第3版の全検査IQ(FSIQ)と、推定IQ(EIQ)及び病前推定IQと現在のIQ(FSIQ/EIQ)との差による認知機能障害スコアを用いました。各コホートで標準化回帰係数βを算出し、メタ解析(mega analysis)を実施しました。EIQ、認知機能障害、FSIQ、労働時間それぞれで解析した結果、健常群、統合失調症群でともに有意な相関は認めませんでした。gFA値及びLA-gFA値は、ともに現在の認知機能及び認知機能障害、労働時間を説明するとは言えませんでした。症例数及び施設数を増やした解析が今後望まれます。認知機能障害と労働時間については、統合失調症患者で認知機能障害があると労働時間が短いことが報告されていることから、引き続き脳全体の異常との関連を探索的に研究することが重要と考えられました。

リンク:JSBP 日本生物学的精神医学会ホームページ・若手研究者育成プログラム奨励賞
http://www.jsbp.org/young/02_young1.html